空の巣症候群は更年期のせい?それぞれの違いと乗り越える4つの方法

子どもが進学や就職で家を出てから、「理由もなく涙が出る」「何をしても気持ちが晴れない」という状態に悩んでいる方もいるでしょう。
このような状態が続くと「50代だし、これは更年期のせいだろうか」と考えてしまいますよね。
空の巣症候群が起こりやすい子どもの巣立ちの時期と、更年期にあたる年代は重なりやすいため、どちらの影響かは自分だけでは判断しにくい場合があります。
そのため、「空の巣症候群だから」「更年期だから」と決めつけず、今の心と体の状態に合わせて対処することが大切です。
この記事では、空の巣症候群と更年期の関係、なりやすい人の特徴、続く期間の目安、今日から始められる乗り越え方を解説します。
空の巣症候群と更年期の違いと関係性
空の巣症候群とは、子どもの進学や就職、結婚などによって子どもが家を離れたあと、親が感じる寂しさや喪失感、不安などの心の変化のことです。
ホルモンバランスの変化が影響する更年期とは、きっかけも原因も異なります。
| 空の巣症候群 | 更年期症状 | |
| きっかけ | 子どもの巣立ち1) | 加齢にともなう体の変化 |
| 原因 | 役割を失ったことによる喪失体験1) | 女性の場合はエストロゲン、男性の場合はテストステロンの分泌の変動 |
| 位置づけ | 正式な診断名ではない状態 | 更年期障害として診断される場合がある |
このように成り立ちは異なるものの、同じ時期に重なることで、心身のつらさが強まる可能性があります。
そのうえ、空の巣症候群であらわれやすい気分の落ち込みや涙もろさ、不眠などの症状は更年期症状とよく似ているため、「更年期症状の1つではないか」と考える方が多いのです2)。


空の巣症候群になりやすい人の特徴
子どもが巣立ったときの感じ方は人それぞれですが、これまでの生活や人間関係によっては、喪失感が大きくなることがあります。
ここでは、空の巣症候群の影響を受けやすいと考えられる3つの特徴を紹介します。

子育てが生活の中心だった人
これまで子育てに多くの時間やエネルギーを注いできた方は、子どもの巣立ちをきっかけに大きな喪失感を覚えることがあります。
毎日の予定や家族との会話、人付き合いまで子どもを中心に成り立っていた場合、巣立ちによって生活のリズムが一度に変わってしまうためです。
また、「母親」「父親」という役割を大切にしてきた方ほど、子育てが一段落したときに「これから何をしたらいいのだろう」「自分には何が残っているのだろう」と戸惑うこともあります。
まじめで人に頼るのが苦手な人
責任感が強く、つらいときも一人で抱え込みやすい方は、子どもの巣立ちによる寂しさや不安を表に出しにくい傾向があります。
「子どもが自立したのだから喜ばなければ」「周りに心配かけたくない」と考え、寂しさやつらさを自分の中に抱え込んでしまうためです。
しかし、子どもの巣立ちは生活を大きく変える出来事です。寂しい、心配だと感じること自体は、決しておかしいことではありません。
身近な人に気持ちを話す機会が少ない
普段から気持ちを話せる相手が少ない場合も、子どもの巣立ちによる変化を一人で抱え込みやすくなります。
夫や妻、パートナー、友人などに「家が静かになって寂しい」「まだ慣れない」と話すだけでも、自分の気持ちを整理するきっかけになります。
とくに、一人で子育てを担ってきた場合は、生活のなかで子どもが占める割合が大きく、巣立ったあとの変化を強く感じることもあるでしょう。
空の巣症候群はいつまで続く?
空の巣症候群がいつまで続くか、明確な期間は決まっていません。新しい生活に慣れ、子どもがいない生活のリズムや自分なりの時間の使い方が見つかるにつれて、少しずつ気持ちが落ち着いていくと考えられています。
ただし、回復までの期間には個人差があります。比較的早く慣れる方もいれば、誕生日や年末年始、帰省後などをきっかけに、再び寂しさを感じる方もいるでしょう。
「いつまでに立ち直らなければ」と期限を決めず、自分のペースで新しい生活に慣れていくことが大切です。
一方で、強い気分の落ち込みが2週間以上ほぼ毎日続く、眠れない・食べられない、家事や仕事ができないなど、日常生活に支障が出ている場合は注意が必要です。
空の巣症候群だと自己判断せず、医療機関へ相談しましょう。

空の巣症候群を乗り越える4つの方法
空の巣症候群を乗り越えるために、無理に新しい趣味を見つけたり、大きく生活を変えたりする必要はありません。
まずは、子どもに向いていた意識や時間を少しずつ自分自身にも向けながら、新しい生活のリズムをつくっていきましょう。

子どもへの連絡頻度を決める
子どものことが気になって何度も連絡してしまう場合は、あらかじめ連絡する頻度を決めておく方法があります。
返信が来ないたびに落ち込んだり、心配になって何度もスマートフォンを確認したりしていると、離れて暮らし始めても意識が子どもに向き続けてしまうためです。
たとえば、「日曜の夜に電話する」「週に1回LINEする」など、お互いが無理なく続けられる頻度を子どもと相談してみましょう。
連絡を我慢するためではなく、「この日に話せる」という安心できる機会をつくることで、離れて暮らす新しい親子関係にも少しずつ慣れていきやすくなります。
1日数分でも自分の時間をつくる
これまで子どものために使っていた時間の一部を、自分のために使ってみましょう。
とはいえ、いきなり「新しい趣味を見つけよう」と考えると、何をすればよいのか分からず負担になることもあります。まずは1日数分でも、自分のためだけに使う時間をつくることから始めてみてください。
一例として、次のようなことがあげられます。
- 好きな飲み物をゆっくり飲む
- 近所を10分ほど散歩する
- 後回しにしていた本を開く
何をするかよりも「自分のために時間を使う」ことが、もっとも大切です。
毎日の生活のなかで、自分が心地よいと感じられる過ごし方を少しずつ探していきましょう。
身近な人との時間を増やす
夫や妻、パートナー、友人など、身近な人と過ごす時間を意識的につくるのも方法の1つです。
子どもが巣立つと、これまで子どもを中心につながっていた家族の関係も変化します。夫婦やパートナー同士であれば、これからの2人の生活について考え直す時期ともいえるでしょう。
一緒に外食へ出かける、月に一度は友人と会うなど、小さな予定を先に入れておくと実行しやすくなります。
また、誰かと過ごすなかで「実は寂しくて」と話せれば、自分でも気づいていなかった気持ちを整理するきっかけになるかもしれません。
家族以外のつながりをつくる
家庭の外に自分の居場所を1つ増やすことも、空の巣症候群を乗り越える助けになります。
生活の中心が家庭だけにあると、家族の変化による影響を受けやすくなるためです。
たとえば、以下のような行動があげられます。
- パートを始める
- 以前から興味があったことを学ぶ
- 地域の活動に参加する
すぐに新しいことを始めるのが難しければ、気になる講座を調べる、地域のイベントに一度参加してみるといった小さな一歩でも十分です。
同じように子育てが一段落した同世代と出会い、「自分だけではなかった」と気づくことで、気持ちが軽くなることもあります。
【空の巣症候群か更年期か】つらいときの相談先
気分の落ち込みが続いていても、「空の巣症候群だからそのうち治る」「更年期だから仕方ない」と一人で我慢する必要はありません。
更年期症状の有無やつらさの程度によって、更年期の相談ができる診療科や心療内科・精神科、公的な相談窓口などを利用できます。
更年期の相談ができる診療科(婦人科・メンズヘルス外来など)
ほてりや発汗、動悸、頭痛など、更年期にみられる症状を伴う場合は、女性であれば婦人科、男性であれば泌尿器科やメンズヘルス外来に相談しましょう。
受診の際は、症状や体の状況などを確認し、必要に応じて検査をおこないます。更年期障害と診断された場合は、ホルモン補充療法(HRT/TRT)や漢方薬などが治療の選択肢です。
治療方法は症状や体質、既往歴によって異なるため、医師と相談しながら自分に合った方法を検討できます。
心療内科・精神科
気分の落ち込みや不眠が強く、家事や仕事など日常生活に支障が出ている場合は、心療内科や精神科への相談を検討しましょう。
子どもの巣立ちによる一時的な落ち込みだと思っていても、うつ病といった別の病気が隠れている可能性があります。症状に応じて、薬物療法や心理的な支援などを受けられます。
婦人科やメンズヘルス外来とどちらを受診すべきか迷う場合は、かかりつけ医に相談するのも1つの方法です。
公的な相談窓口
「医療機関を受診するほどなのか分からない」「まずは誰かに話を聞いてほしい」という場合は、公的な相談窓口も利用可能です。
自治体の相談窓口や厚生労働省の「こころの耳」など、電話やSNS、メールで相談できる窓口があります3)。
誰かに話すことで、自分が何につらさを感じているのか整理できることもあります。一人で抱え込まず、利用しやすい窓口を活用してみてください。
更年期と重なる空の巣症候群は、周りを頼りながら乗り越えよう

子どもの巣立ちで感じる寂しさは、それだけ真剣に向き合ってきた証拠です。
空の巣症候群と更年期は原因の異なるものですが、時期が重なることでつらさが強まる場合があります。
「早く元気にならなければ」と無理に気持ちを切り替える必要はありません。
一人で抱え込まず、身近な人や専門家を頼りながら、少しずつ自分のための時間を取り戻していきましょう。

参考






