更年期の腸の不調を改善するには?原因と今日からできるセルフケア

更年期に入り、便秘や下痢を繰り返すなどお腹の調子が落ち着かず、気分まで沈んでしまうことはありませんか。この記事では、更年期と腸の不調の関係や、改善に向けた食事・生活習慣の工夫、受診の目安を解説します。
更年期に便秘や下痢など腸の不調が起こるのはなぜ?

更年期の腸の不調には、主に以下のような要因が関わると考えられています。1
- ホルモンの変化
- ストレス
- 生活習慣
ただし、病気や薬の影響などでも起こるため、便秘や下痢をすべて更年期のせいと決めつけないことが大切です。それぞれの関係を見ていきましょう。
女性ホルモン(エストロゲン)の変化
更年期に起こる女性ホルモンの変化は、腸の動きや、お腹の痛みの感じ方に影響すると考えられています。エストロゲンなどの分泌が変動することで、便秘や下痢、お腹の張りにつながる場合があります。
また、閉経前後で腸内細菌の状態に違いがあることも報告されています。ある研究では、閉経後の女性は閉経前に比べ、腸内にすむ細菌の種類や構成の豊かさを示す「多様性」が低い傾向にありました。2
ただし、こうした違いが便通の乱れにどのようにつながるのかは、まだ十分に分かっていません。更年期と腸の不調の関係には、引き続き研究が必要な部分もあります。1)
ストレスによる腸への影響
ストレスは腸の動きや痛みの感じ方に影響し、腹痛や便通の乱れにつながる場合があります。
脳と腸は、神経やホルモンなどを介して情報をやり取りしています。この仕組みが「脳腸相関」です。腸の動きを調整する自律神経も関わっており、ストレスによる脳からの信号が、お腹の調子を左右することがあります。
反対に、腸から脳に伝わる不快な刺激が、不安や気分の落ち込みに関わることもあります。3
「外出先でお腹が痛くなったら」と心配になり、その緊張で症状が強まるなど、互いに影響し合う場合もあるでしょう。
腸の動きは自律神経によって調整されており、ストレスを受けやすい時期には腸のリズムも乱れやすくなります。4
お腹と気持ちの不調が重なるのは、本人の「気にしすぎ」や性格だけの問題ではありません。
食事や生活習慣などによる影響
食物繊維や水分の不足、運動不足など、日々の食事や生活習慣も便秘に関わります。5
野菜や豆類などを食べる機会が少ない、水分補給を忘れがち、座って過ごす時間が長いといった習慣が、便通に影響している場合もあるでしょう。
一方、食品によっては、体質や食べる量に応じて下痢やお腹の張りが出ることもあります。たとえば、牛乳に含まれる乳糖を十分に消化できない人は、飲んだ後にお腹がゆるくなる場合があります。また、シュガーレスのガムやあめなどに使われる一部の甘味料も、摂りすぎると下痢につながります。
更年期の腸の不調については、次の記事も参考にしてください。

更年期の腸の不調を改善するためのセルフケア

更年期の腸の不調を和らげるために、食事や日々の過ごし方で取り入れたい工夫を紹介します。
自分に合う方法は、症状によって異なります。その日の便の状態やお腹の張りに合わせて、食品の種類や量、活動量を調整しましょう。
食物繊維を含む食品を少しずつ取り入れる
便秘が気になるときは、食物繊維を含む食品を少しずつ取り入れましょう。便のかさを増やすほか、腸内細菌のえさとなり、お腹の調子を整える働きが期待できます。
食物繊維の理想的な摂取量は、成人で1日25g以上と考えられており、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人男性で20g以上、女性では1日18g以上の目標値が設置されています。6
食物繊維は、魚介類や肉類などの動物性食品にはほとんど含まれないため、穀類や豆類、野菜、果物などを組み合わせて摂ることが大切です。たとえば、次のような工夫から始めてみてください。
- ごはんに押し麦を少量混ぜる
- 食事に納豆や、ブロッコリーの小鉢を添える
- 塩分を控えめにした具だくさんのみそ汁を作る
- 間食にバナナやみかんなどの果物を選ぶ
ただし、急に増やすとガスやお腹の張りが強まる場合があります。一度に食事全体を変えず、まずは1品から試し、便の状態や不快感に合わせて量を調整しましょう。
乳酸菌を含む食品を取り入れる
乳酸菌を含む食品を、毎日の食事に無理のない範囲で取り入れてみましょう。身近な食品には、ヨーグルトや乳酸菌飲料、乳酸発酵した漬物などがあります。
たとえば「朝食にヨーグルトを小さなカップ1個添える」など、続けやすい方法を選んでみてください。漬物を取り入れる場合は、塩分の摂りすぎを避けるため、少量を添える程度にしましょう。
ただし、発酵食品の効果は一律ではなく、食べる人によっても異なります。下痢やお腹の張りが強まる場合は、無理に続けず、量を減らしたり別の食品に替えたりして調整することが大切です。7
乳製品でお腹がゆるくなる場合は乳糖の量を調整する
乳製品を摂った後にお腹がゆるくなる場合は、一度に食べる量を調整してみましょう。
牛乳などに含まれる糖分の一種「乳糖」を十分に消化できず、下痢やガス、腹痛などが出る状態を「乳糖不耐症」といいます。ただし、消化しにくい人でも必ず症状が出るわけではなく、ヨーグルトや硬いチーズなら食べられるなど、無理なく摂取できる量には個人差があります。
乳製品を一律に避ける必要はありません。量を減らす場合は、豆腐や骨ごと食べられる小魚なども取り入れ、カルシウムが不足しないようにしましょう。8
水分をこまめに補給する
便秘や下痢があるときは、水分が不足しないよう、こまめに補給しましょう。便秘の場合は、食物繊維とともに十分な水分を摂ることが、便をやわらかく保つためにも大切です。
起床後や食事中、家事・仕事の合間など、飲むタイミングを決めておくと習慣にしやすくなります。一度に大量に飲むより、少量ずつ分けて摂るとよいでしょう。
必要な量は、体格や活動量、汗のかき方などによって異なります。また、下痢では水分と一緒にナトリウムなどの電解質も失われるため、脱水時には経口補水液の利用も選択肢です。
持病などで水分や塩分の制限を受けている場合は、主治医の指示を優先しましょう。
歩く時間を少しずつ増やす
便秘が気になるときは、日常のなかで歩く時間を少しずつ増やしてみましょう。体を動かす習慣は、便通を整えるための取り組みの1つです。
厚生労働省の「身体活動・運動ガイド2023」では、成人に対し、歩行と同等以上の強度の身体活動を1日60分以上、歩数では約8,000歩相当行うことを推奨しています。9
普段あまり歩いていない人は、最初から目標を高く設定する必要はありません。「今より10分多く歩く」「近所への買い物は徒歩にする」など、取り入れやすい方法を選び、無理のない範囲で始めてみましょう。
ストレスを和らげる時間をつくる
腸の不調が気になるときは、食事や運動に加え、気持ちを落ち着ける時間もつくりましょう。脳と腸は互いに影響し合うため、ストレスへの対処も、お腹の症状と付き合ううえで大切です。
たとえば、ゆっくり呼吸する、好きな音楽を聴く、趣味を楽しむなど、自分が心地よいと感じる方法を取り入れてみてください。体調に合わせたヨガやストレッチ、呼吸や体の感覚に意識を向ける瞑想も選択肢です。
忙しい日は、家事や仕事の合間に短い休憩を入れるだけでもよいでしょう。「毎日きちんと続けなければ」と負担に感じないよう、その日の余裕に合わせて取り入れることが大切です。
こんな腸の不調には要注意!受診の目安
以下のような症状があるときは、更年期による不調と考えて様子を見ず、早めに医療機関へ相談しましょう。
- 血便や、タールのように黒い便が出る
- 強い腹痛や、持続する腹痛がある
- 便やガスが出ず、お腹の張りや嘔吐を伴う
- 便秘や下痢に発熱を伴う
- 嘔吐を繰り返し、水分を摂れない
- 尿が少ない、強い口の渇き、めまいなど、脱水が疑われる症状がある
こうした症状がなくても、便秘や下痢が続く、外出や仕事に支障がある場合は受診の目安です。腹痛と便通の乱れを繰り返す「過敏性腸症候群」なども含め、原因を確認することが大切です。
腸の症状は消化器内科や内科へ、ほてりや不眠など更年期のほかの症状もつらい場合は婦人科にも相談できます。受診時は、症状が始まった時期や便の状態、食事との関係、使用中の薬・サプリメントを伝えると、診察の参考になります。
更年期の腸の不調は自分に合うケアで和らげよう

更年期の腸の不調には、ホルモンの変化やストレス、食事・生活習慣などが関わります。無理のない範囲で日々のケアを取り入れましょう。
「腸に良い」とされる食品でも、自分の症状に合うとは限りません。便の状態やお腹の張りを確かめながら、続けやすい方法を選んでください。不調が続くときは、セルフケアだけで抱え込まず、医療機関に相談しましょう。

参考文献
- National Library of Medicine|The volume and characteristics of research on gastrointestinal symptoms in ‘natural’ peri- and postmenopause: A scoping review
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12575958/?utm_source=chatgpt.com
↩︎ - Menopausal shift on women’s health and microbial niches
https://www.nature.com/articles/s44294-024-00050-y
↩︎ - ストレス科学研究 2013, 28, 16-19|福土 審, 脳腸相関とストレス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/stresskagakukenkyu/28/0/28_16/_pdf
↩︎ - 日本消化器病学会|機能性消化管疾患診療ガイドライン2020過敏性腸症候群(IBS)
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/IBSGL2020_.pdf#page=33
↩︎ - 日本消化管学会|便通異常症診療ガイドライン2023慢性便秘症
https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00812.pdf
↩︎ - 厚生労働省|食物繊維の必要性と健康
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-05-001
↩︎ - National Institutes of Health|Probaiotics
https://ods.od.nih.gov/factsheets/Probiotics-HealthProfessional/?utm_source=chatgpt.com
↩︎ - National Institutes of Health|Eating, Diet, & Nutrition for Lactose Intolerance
https://www.niddk.nih.gov/health-information/digestive-diseases/lactose-intolerance/eating-diet-nutrition
↩︎ - 厚生労働省|健康づくりのための身体活動基準・指針の改訂に関する検討会, 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023
https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf
↩︎






