【働き盛り男性のホルモンマネジメントVol.1】医師と語る「男性更年期」のリアルと受診の目安

中年期に差し掛かると健康への意識が高まりますが、その中でも最近話題に上がるようになった男性更年期。とはいえ、単なる加齢や過労による疲れとの違いがわからないという方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、「ただの疲れで片付けない。働き盛りのパフォーマンス低下と向き合う、大人のホルモンマネジメント」をテーマに、イーヘルスクリニック新宿院で院長を務める天野方一先生とTRULY代表の二宮未摩子による対談を実施いたしました。
本企画は全3回でお届けしますが、Vol.1では「そもそも男性更年期とは何か?」や「病院に行くべきタイミング」など、まずは男性更年期に関する基礎知識から語っていただきます。
疲れ・イライラ・意欲低下…実は珍しくない?知っておきたい「男性更年期」3つの症状
二宮:働き盛りの男性から、「以前より疲れやすくなった」「集中力が続かない」「仕事への意欲が湧かない」といった相談を受けることはよくありますか?
天野先生:はい、前より多くなっていますね。僕自身が大きなメディアで取材を受ける機会が増えていることもあり、世の中的にも少しずつフォーカスされていると感じます。ただ、男性更年期の約94%は症状があっても病院で受診しないという結果が出ているほど、実は困っている人がまだまだたくさんいるのが現状です1。
二宮:「男性更年期」という言葉の認知度は徐々に上がっていると私も感じていますが、一方でどういった症状のことを指しているのかをわかっていない方が多いのかなとも思います。
天野先生:男性更年期では、主に3つの症状があります。まず、「疲れやすい」「汗をかく」といった身体的な症状。2つ目は、不安な気持ちになったり、眠れなくなったりするなど鬱に近い状態になる精神的な症状。そして最後が、ED(勃起不全)や性欲低下のような性的な症状です2。
二宮:そういった症状というのは、一般的に何歳くらいから感じるのでしょうか。
天野先生:男性更年期の可能性があるのは、だいたい40歳くらいから。40歳を過ぎると6人に1人、50歳を過ぎると5人に1人の割合だと考えられています2)。男性更年期の症状を抱えている方は約600万人とも言われているので、珍しいことではありません。ただ、先程お伝えしたように90%以上の方が受診していないというデータに基づくと1)、500万人ほどの方が本当は困っているけれど、何も治療できていない状況にいるということです。僕としても、ここに関しては改善したいと思っています。
「仕事で踏ん張れない」「怒りっぽくなった」は受診のサイン!見逃したくない変化とは
二宮:女性でも更年期で病院に行くのはハードルが高いという声をよく聞きますが、男性の場合も同じなんですね。では、どういうタイミングで診察を受けたほうがいいのでしょうか。
天野先生:まずは、明らかにパフォーマンスが落ちて仕事に影響が出るくらいの体調不良だったら、絶対に行ったほうがいいですね。年齢を重ねれば当然疲れやすくなりますが、「仕事で最後の踏ん張りができなくなっているとか、仕事に支障をきたすほどがんばれない場合は、病的な可能性がありますよ」とよく話しています。
患者さんのなかにも、仕事で集中できなくなった結果、パフォーマンスが落ちてしまい、以前と同じ仕事量なのに長時間労働になり、睡眠時間が取れなくなってますます仕事に影響が出るという悪循環に陥ってしまった方もいました。
あとは、ご家族や周りから「さすがにイライラしすぎじゃない?」とか「最近のパパ、めちゃくちゃ怖い」などと言われるようになったときも受診したほうがいいタイミングですね。普通だったら気にならないことにイライラし始めて、ご自身で気づく方もいらっしゃいます。
二宮:いろんなパターンがあるんですね。
天野先生:少し珍しい例だと、60歳になって仕事が少し落ち着いてきたから、趣味である長年の推し活にフォーカスして楽しもうと考えていたところ、「推しを推したいのに推せない自分がいてつらい」といって受診にいらっしゃった方もいました。
ほかにも電車の中でスーツケースを持ってる人を見るだけでイライラしてしまうという方もいましたが、そんなふうに前よりも明らかに怒りっぽくなっているときは注意したほうがいいと思います。

ストレスや生活習慣も影響?男性更年期の主な要因
二宮:加齢以外にも、男性更年期になる原因はありますか?
天野先生:男性は30歳をピークに男性ホルモンが下がっていきますが、そこにストレスが掛かってしまうと一気に下がり、男性更年期の症状が出ます2)。ある研究でも、男性ホルモンが下がる原因の半分は生活習慣であるという結果が出ているほど、環境が与える影響も大きな要因です。50歳前後に症状がわかりやすく出る女性更年期に比べると、男性更年期のほうがわかりにくいところがあるので、そういった部分も男性更年期に対する認知度が上がりきらない理由かもしれません。
二宮:確かに、それはありますね。そもそも男性ホルモンのテストステロンは、心と身体に対してどういう役割があるのでしょうか。
天野先生:僕が患者さんに説明するとき、まずは「石器時代にマンモスを狩りに行くときの男性を想像してください」と伝えます。そうすると、筋肉質で骨が太くて毛が濃い男の人がやる気と集中力に満ちている姿が浮かんできますよね? そういう男性を作っているのが、テストステロンです。
男性更年期を改善するには?治療のリアルと、放置するリスク
二宮:なるほど、わかりやすいですね。男性更年期と診断された場合、どういった治療をされるのでしょうか。
天野先生:最初は薬を使って治療することが多いですが、元気になってくると生活習慣も変わってきて、外に出たり、睡眠をきちんと摂れたりするようになるので、その段階で治療をしなくてもよくなる方はたくさんいます。先程もお話したように、男性ホルモンが低下する原因の半分は生活習慣ですし、特に睡眠が大きく影響しているので、睡眠不足が改善するだけでも大きく変わりますよ。
二宮:実際に診察や治療を受けた方からは、どのような反響がありましたか?
天野先生:「自分が男性更年期なはずがない」とおっしゃる方よりも、「原因がわかって気持ちが軽くなった」という方が大半です。よくわからなかった状況が明確になるだけで、皆さん前向きに治療と向き合ってくださいます。それと、治療が上手くいった方は自分の周りで困っている同僚や友人に勧めてくれるパターンが多いですね。
二宮:もし症状が出ているまま放置してしまった場合は、どういう問題を引き起こしてしまう可能性があるのでしょうか。
天野先生:男性更年期になると太りやすくなるので、メタボリック的な代謝疾患も悪化すると言われています2)。そうなると心臓や脳、高血圧に関わるような疾患を引き起こしやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞などになる確率が高くなる可能性もあるかもしれません。あとは、精神的な問題で言うと、メンタル面がどんどん悪くなってしまう方もいると思います。
そういった面からも、僕は医療へのハードルをもっと下げて、より多くの方に病院へ来ていただけるようにしたいと考えています。診察してみて何もなければ、「違ってよかったね」でいいので、まずはいい医療と関わりを持つことを大事にしていただきたいです。

「何科に行けばいいの?」迷ったときの相談先と賢い探し方
二宮:とはいえ、「男性更年期の場合、どこに相談したらいいのかわからない」というのは、TRULYでもよく聞かれる質問です。
天野先生:大半の方が診察に行かない理由も、まさに「何科に行ったらいいのかわからない」というのが回答でした。確かに、内科なのか泌尿器科なのか、どれも違う感じがあって、ピンとこないですよね。しかも、どの先生でもみんな男性更年期の知識があるわけではないというのも医療現場の現状としてあるので…。
ただ、ここ1、2年の間に男性更年期を扱うクリニックも増えてきてはいるので、僕がオススメしているのは、ネットやAIに家の近くにある男性更年期のクリニックを探してもらうという方法。夏の終わりから秋にかけては男性ホルモンが下がりやすいと過去の研究で結果が出ていますが、そうした季節の変わり目に調子が悪くなる方が増えるかもしれないので、まずは近所で受診してもらうところから始めていただきたいです。
我慢は禁物!40代以降のパフォーマンス向上にはホルモンケアを
二宮:とはいえ、つい我慢してしまう方が多いと思うので、いま困っている方へアドバイスがあればお願いします。
天野先生:これは更年期に限ったことではないかもしれませんが、もっと医療のことを頼っていいんじゃないかなと感じています。日本には優秀な医療や保険システムがあるのに、なぜか日本人は末期状態にならないと病院に行かない方が多いんですよね。それよりも、ご自身の体調管理やパフォーマンスの向上にもっと目を向けて、ウェルビーイングになるために医療を有効活用して欲しいと思っています。

天野方一先生
イーヘルスクリニック新宿院 院長、博士(公衆衛生学)。
埼玉医科大学卒業後、都内の大学附属病院で研修を修了。東京慈恵会医科大学附属病院、足利赤十字病院、神奈川県立汐見台病院などに勤務、研鑽を積む。2016年より帝京大学大学院公衆衛生学研究科に入学し、2018年9月よりハーバード大学公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)に留学。予防医療に特化したメディカルクリニックで勤務後、2022年4月東京都新宿区に「イーヘルスクリニック新宿院 (eHealth clinic 新宿院)」を開院。複数企業の嘱託産業医としても勤務中。

二宮未摩子
株式会社TRULY代表取締役CEO。
広告会社勤務時代、妊娠中の激しいつわりを経験し、女性ホルモンが心身に与える影響を痛感。職場復帰後、新規事業開発部門で美容・健康領域に携わるなか、TRULYを起案。2020年に独立し、TRULYを創業。男女の更年期課題の解決に取り組む。高校生男子の母。
出典
- イーヘルスクリニック新宿院. PR TIMES:「男性更年期障害と生活習慣病の関連や診療科の理解不足により、症状があっても約94%がすぐに受診しない実態が明らかに」
↩︎ - 日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会「LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き」
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