【おせっかい薬剤師の気になる！シリーズvol.2】 命をかけてまで認めてほしかった「男性としての自分自身」

関西のとある薬局。

男性に処方されていたのは「勃起不全治療薬」。

何十年ぶりの同窓会と喜んでいた男性。しかしなぜ同窓会に参加するためにそれが必要なのか？

この会話のやり取りをした当時の私には、全く理解できませんでした。

男性に処方されていたのは「勃起不全治療薬」。

何十年ぶりの同窓会と喜んでいた男性。しかしなぜ同窓会に参加する為にそれが必要なのか？

この会話のやり取りをした当時の私には、全く理解できませんでした。

日本で初めて勃起不全治療薬が発売された当初。ほとんどの方は寡黙で、急いで会計を済ませていました。

それだけに、この男性との会話は、今でも印象深く残っています。

そして今なら理解できるのです。この男性がなぜこの質問をしたのかが……。

勃起不全治療薬は　戦略をしっかり立ててから服用

この男性に「食事の影響を受けるので、飲むタイミングに注意してくださいね」と伝えたのは、食後すぐに服用すると効果が半減するためです。

本来ならば空腹時に服用していただきたいのですが、シチュエーション上、やむを得ず食後に服用する場合もあるでしょう。

ぜひ以下のことを意識して、綿密に戦略を立てて欲しいものです。

アルコールの勢いがなければ、口説けないタイプの方は要注意です。

勃起不全治療薬には催淫効果がないってホント？

勘違いされやすいのですが、勃起不全治療薬には催淫効果（性欲や性的興奮を高める作用）はありません。この男性にお渡しした薬は、陰茎への血液を増加させ、勃起をおこす働きがあります。

強制的に勃起をさせる薬ではなく、性的刺激によって勃起しやすい状態に整えます。また有効成分が作用する間ずっと勃起し続けるわけではないのです。

余談ですが、お渡しした勃起不全治療薬は開発当初、狭心症の治療薬として研究されていましたが、開発途中で効果的でないと判断され、治験者に回収依頼をかけました。しかし回収率が悪いため理由を尋ねたところ「服用すれば勃起が促進されるため」と分かったそうなのです。

飲む前に要チェック！　あなたは服用しても大丈夫？

元々狭心症の治療薬として開発された勃起不全改善薬ですが、実は薬自体が直接心臓に負担をかける訳ではありません。薬の効果で勃起力が上がることで、性行為が激しくなり、心臓に負担をかけてしまうことがあるので注意が必要なのです。

上記以外にも飲んでいる薬や基礎疾患がある人は、必ずかかりつけ医に相談しましょう。

さらに、初めての相手や婚外性交の場合は興奮度が増す、後ろめたさやアルコールなどが重なり心拍数が上昇するという研究結果1）もあります。

心血管系障害がある人は、性行為が可能か、医師に確認して下さい。場合によっては性行為を控える必要があります。

また仮にそうであった場合、パートナーに真実を伝えて下さい。

余計な心配をかけたくない気持ちもわかりますが、パートナーシップを深めるために大切なことです。

命をかけてでも「男性として認められたい」という切実な思い

「命懸けで性行為を行う必要があるのだろうか？」

まだ若かった私には理解できませんでした。

今の私自身は、女性として見られているだろうかと不安になる時があります。

歳を重ねていくと自分の存在価値について悩む機会が増えてきます。

そんな時、異性との出会いというのは意外と簡単に自分を認めてくれるツールです。同世代の友人を見ていて感じます。

この男性も、男性としての承認欲求を満たすことに命をかけていたのかもしれません。

１）DeBusk RF. The physiologic cost of sexual activity. In: Kloner RA ed. Heart disease and erectile dysfunction. Totowa, NJ, USA: Humana Press Inc, 2004: 239- 249