【泌尿器科の医師に聞く!】保険診療or自費?男性更年期障害の診断とセルフ検査《前編》
男性にも更年期障害があるということは少しずつ認知されてきましたが、その診断や治療をどこで受けられるのかはまだまだ知られていません。男性更年期障害1の代表的な窓口は「泌尿器科」です。
そこでTRULYでは、泌尿器科医師である佐々木クリニック院長の佐々木裕先生に、男性更年期障害についての治療や生活でのアドバイスなど、幅広く教えていただきました。
今回は前半パートとして、男性更年期障害の診断や、TRULYのホルモン検査キットについて、先生から伺ったことをご紹介します。
- 男性更年期障害:ストレスなど様々な原因での男性ホルモンの低下による不調
加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群):加齢による男性ホルモンの低下による不調
注)記事内での男性更年期障害は、LOH症候群も含んだ意味で使用しています。 ↩︎
Q.患者さんからの相談で男性更年期を疑う症状はどのようなものがありますか?
患者さんが訴える更年期症状で多いのは、まず、元気・やる気が出ない、そしてEDですね。
精神的な症状は、テストステロン値の低下が中程度進行した場合にみられることがあるといわれています。
ただ、精神的な症状は、すべてテストステロンの低下で説明できるわけではないことが多く、うつ病などの精神疾患との関連なども注意してみていく必要性があります。
メタボリックシンドロームとも密接に関連しています。メタボリックシンドロームがあるとテストステロンは低下する場合がありますので、注意が必要です。
Q.男性更年期障害の検査は保険診療と自費診療のどちらで行われるかは医療機関によって異なっています。これはどのような理由からですか?
保険診療では、様々なルールが決められています。疑った疾患に対して可能な検査や疾患に対して可能な治療は、決められています。よって様々な検査を同時に行うのが難しい場合があります。
例えば、男性ホルモンの測定には、主にテストステロンとフリーテストステロンの2種類の検査があります。保険診療ですとこの2つのホルモンを同時に測定することはできません。同時に測定し、評価しようとする場合、自費診療となります。
また、症状が男性更年期障害以外のものによる可能性も考えられるので、メタボの検査(中性脂肪、コレステロール、体脂肪率、腹囲など)や糖尿病の検査、心電図検査、腫瘍マーカー(PSA検査)など、必要に応じて様々な検査を行う場合がありますが、保険診療でこうした検査をすべて同時におこなうのは難しい場合があります。
そのため、より詳細に短期間で鑑別診断を行う場合、自費での検査を勧めることがあります。
治療に関しても保険適用とならないものもあるため、自費での治療となることがあります。(原則、保険診療では混合診療は認められていません)
保険診療がいいのか、自費診療がいいのか、診断の手順、治療の種類・必要性などを医師とよく相談し、納得の上で検査や治療を受けることが大切です。
Q.男性更年期障害の診断基準は、最近変わったのですか?
これまで、男性更年期障害の診断基準として、フリーテストステロンの採血値が使用されてきました。
実は、昨年、新しい“LOH症候群の診療の手引き”が日本泌尿器科学会、日本メンズヘルス医学会から発刊されました。それによりますと、新しい診断基準として、海外の診断方法に準拠し、まず、総テストステロン値の採血値を測定し、補助診断基準としてフリーテストステロン値を使用すると記載されています。
自費診療では、同時測定することが多いと思われますが、保険診療では、現時点、同時測定は難しいため、検査の順序、項目に関しては、よく医師とご相談いただく事をお勧めします。
Q.男性のほうが更年期障害と診断されにくいという話を聞いたことがありますが
男性のほうが男性更年期障害についての知識を持っていないことも理由かもしれませんね。症状があっても受診につながらなかったり、どこを受診したらいいのかも分からなかったりする方がいらっしゃいます。
男性更年期障害を疑って受診する場合は、泌尿器科、メンズヘルス外来または、テストステロン治療認定医がいる施設で相談してみるとよいでしょう。
男性自身も自分が更年期障害だと認めたくないと感じる方が多い印象です。そうすると診断まで、時間がかかってしまうことがあります。周りの方が受診をすすめるのも、なかなか勇気がいるかもしれません。
しかし、様々な更年期に伴う症状は治療により改善できることがあります。イライラしているなどパートナーの不調を感じたら一度、相談してみましょう。
Q.診断のために、どのようなことをするんですか?
診断には、問診、状態評価のための質問表(AMSスコア)、男性ホルモン値を測る採血などを行います。
AgingMales’Symptoms(AMS)スコア
訴えの程度 17~26点:なし 27~36点:軽度、37~49点:中等度、50点以上:重度
【引用】日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会・LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き作成委員会編 (2022)医学図書出版「 LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き」
Q.男性ホルモンの採血は時間帯が決まっていますか?
男性ホルモン値には、日内変動があります。午後になると低下するので、正確に把握するためには、ホルモン採血検査を午前中に受けるのがベターです。
Q.TRULYでは髪の毛を送るだけでできる測定キットの販売を始めました。髪の毛や爪を送って、男性ホルモンを測定することについてどう思われますか?
髪の毛や爪から測定することで、血液と違って日内変動がありません。
病院に行くのにハードルが高いと感じる男性も多いので、セルフチェックとして把握できるのは一つの手ですね。まずセルフチェックをした上で、何かおかしいと感じたら受診して詳しい検査を受ける、という流れで利用するのもいいと思います。
Q.セルフチェックを受けられた男性には、TRULYからのセルフケアの情報提供や、専門家への相談も利用することができます。
それはいいですね。男性でも相談したい人はたくさんいますよ。どこに相談したらいいか分からない、相談しづらいと感じている男性には、心強いサービスだと思いますよ。
パートナーの女性からこんなセルフチェックがあるよという風に、伝えてあげるのもいいかもしれませんね。
後半では、男性更年期障害の治療や予防法について、佐々木先生に教えていただいた内容をご紹介します。
記事内でご紹介した、髪の毛を送るだけで自宅で簡単に男性ホルモンを測定できるキット「MENOPO CHECK FOR MEN」はこちらです!
お話をうかがった先生
監修医師
佐々木裕先生
佐々木クリニック泌尿器科 芝大門 院長
日本泌尿器科学会認定医 泌尿器科専門医・指導医
日本癌治療学会 がん治療認定医
日本泌尿器ロボティックス・内視鏡学会腹腔鏡技術認定医
日本メンズヘルス医学会 テストステロン治療認定医
ぼうこう又は直腸機能障害 指定医
がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修修了