【薬剤師の体験談】性行為は男性だけが楽しむもの。 女性は辛いだけと思う女性の話

記事更新日: 2022/04/10 TRULY編集部

【薬剤師】岡下真弓

  • みなさんこんにちは。薬剤師の岡下真弓です。

  • 【薬剤師の体験談】シリーズは私がこれまで患者さんと接してきた経験の中でとくに印象的だった方のエピソードをご紹介し、その体験から得た学びやメッセージをみなさんにお届けしている連載です。


  • 今回は「性行為は男性だけが楽しむもの。 女性は辛いだけ」と思う女性のお話。

  • このような体験や悩みを持っている女性、実は意外と多いように感じています。


  • デリケートな問題だからなかなか人には相談できないし、他の人やカップルの状況を知ることも難しいですよね。

  • ですのでこの記事を読むことで、皆さんが体の悩みだけでなく、心の悩みも少し軽くなってくれることを願っています。


  • ではさっそくご紹介していきましょう。


  • あんなに痛いのに、何がいいの?

  • 「あんなに痛いのに、何がいいのでしょうか?むしろない方が、私はいいですね。」

  •  「これだから、男の人って私にはよくわからないです」

  •  60代後半の男性が、勃起不全治療薬の処方箋を持参された際に、受付スタッフの口からこぼれ落ちた声を偶然にも聞き取ってしまった時のことです。

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  • 「あなたのような若い人でも痛いって感じるの?原因があるはずだから、今すぐ教えてあげたいけど、業務中だから後でね」

  • 「いえ結構です」

  •  見事に断られました。それはそうでしょう。職場でプライバシーに関わる話なんて、誰だってされたくありませんよね。

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  • しかし彼女以外にも、実は同じような悩みを抱えている女性は多くいます。


  • 性の喜びはwell-beingの要素である

  • そもそも人間の「性」は生殖以外の目的や意味を持っており、中でも「性」の喜びはwell-beingの要素であると、2005年第17回世界性科学会会議で述べられています。(WASモントリオール宣言第8番)

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  • 生きていく上で持続的な幸せを感じるために必要な「性」ですが、課題や問題がある場合、男性は勃起が起きない、射精に至らないと比較的わかりやすいのですが、女性の場合明確な現象もなく、そもそも性交とはこのようなものだと思い、過ごしている人がほとんどです。

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  • 性的な刺激に反応できない、性的な行為において痛みを感じることを医学的には、性機能不全と呼ばれます。

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  • また、性機能不全はICD-10(国際疾病分類)に掲載されている疾患ですが、日本では保険病名として採用されていないため、この病名で検査も治療も健康保険が使えません。

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  • 世界的にも多数ある性機能不全の分類

  • 性機能不全分類は世界的にたくさんありますが、今回はDSM(アメリカ精神医学会の疾患分類)2013年に公表されたDSM-5に基づいて、女性のみについて表記します。

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  • 性的欲求

  • ①   性的欲求の低下

  • 男性の場合は勃起障害を起こすため、そもそも性交が成り立ちませんが、女性の場合は体位が受け身的なので、性交は可能となってしまいます。そして性交が辛い行為でしかないと思うのです。

  • ②   嫌悪感を感じる

  • 性交に対する不合理な恐怖や嫌悪感、恐ろしい、あるいは嫌でたまらない、この状況から逃れたいという強迫的な衝動、恐怖症症状、などにより意欲的な性生活を得られない状態です。(幼い頃の厳しいしつけの場合もあるようです)

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  • 性的な興奮を感じられない

  • ①   女性が性的な興奮を感じない

  • 一般的には、中枢性性的興奮(視覚・聴覚・嗅覚と相手に抱くイメージ)と末梢性性的興奮(性器や性感帯が受ける刺激)とが互いに重なり合って性的興奮が高まります。

  • しかし、この性的興奮が感じられなくなってしまうことがあります。

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  • オルガズム障害

  • ①   女性のオルガズムについて

  • 日本性科学会 セクシャリティ研究会の調査では30%前後の女性がオルガズムを感じていないが、それが問題で、診察やセラピーを受ける人は3%にも満たない結果が出ています。これらより女性は性交を楽しいと感じていないのではないかと推測されます。

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  • 性交時に感じる痛み

  • ①   性交痛

  • ②   膣痙攣

  • 性交前もしくは最中、後に,おこる反復的、持続的な生殖器のズキズキする痛みです。男性より女性に多く起こります。

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  • 性機能不全はこれら以外にも原因があります。

  • 医薬品による誘発性機能不全

  • 鎮静剤,睡眠薬,抗不安薬,循環器系薬、内分泌系薬などには、機能不全をおこす場合があります。気になる場合は医師、薬剤師にご相談ください。

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  • 夫婦、パートナーの関係そのものに問題がある場合

  • 長年、夫からの一方的な性生活や性交の強要,あるいは裏切りや一方的な性的放置、もしくは日常的なコミュニケーション不足も関係があります。

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  • 更年期を機に性欲低下となる場合

  • 閉経や孫の誕生などを老化のシンボルと捉え、女性であることに自信を失い、やがて性欲低下を感じてしまいます。

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  • 更年期以降気を付けて欲しいのは、体調がダイレクトに性交に影響を及ぼすということです。

  • 性交に関する一連の動きは、筋肉や血管、神経の働きが必要であり、これらに問題があれば劣えを感じます。

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  • 例えば、男性では勃起をする、女性では 濡れるという反応は血流の増加によって起きますが、動脈硬化などがあれば満足いく結果が得られません。

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  • また性欲低下は、うつ症状や睡眠障害とも関係があります。しかしこれらの症状は更年期症状とも関係が深いため、心理面、肉体的な側面からのサポートが必要です。

  • PMID:12510200

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  • さらに重要なこととして、性交痛は気持ちの問題と放置していると、重大な疾患が隠れている場合もあります。

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  • 性交痛の原因となる疾患

  • 外陰:外陰湿疹、性器ヘルペス、会陰切開瘢痕など

  • クリトリス:癒着など

  • 膣:萎縮性膣炎、カンジダ膣炎、子宮脱など

  • 骨盤:子宮内膜症、子宮筋腫、尿路感染症など

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  • このようにセクシャリティな問題は、本人も意識しないまま悪化する場合があります。

  • ですので少しでも気になる場合、恥ずかしがらず婦人科を受診してくださいね。

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  • あふれる情報に惑わされないで、正しい情報を知識を得ることが大事

  • フェムテックブームで様々な専門家の方が発信されていますが、中には脅迫まがいの商法を展開されている方も見受けられます。

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  • 個人的な話しで恐縮ですが、今回の出来事をきっかけに、性に関する専門知識をさらに深め、女性特有の複雑な背景因子を考慮し、身体的、心理的な側面からサポートできるように自己研鑽をしていこうと考えています。

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  • またいつかこの勉強の成果をお伝えしたいと思いますので、少しお待ち下さいね。

ライタープロフィール

【薬剤師】岡下真弓

フリーランス薬剤師。JAAアロマコーディネーター協会認定講師。化粧品メーカー研究開発や薬剤師の知識を生かし、女性の健康と美容をテーマにした講演活動を行っています。 歳を重ねるにつれ、衰えや失われていくものはあります。また更年期世代は仕事で負う責任が大きくなり、後ろ向きな気持ちになりがちです。私は人の美しさとは、その人の生き方次第で変えることが出来ると多くの患者様から教わりました。「歳を重ねる事をネガティブに捉えずセクシーに健康に楽しみましょう」

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