【性の教科書】エロの語源とセクシュアリティの意味・違いとは?

日常的に使われている「エロ」「エロい」という言葉。性に関する話題や「セクシュアリティ(性のあり方)」という言葉を、すべて「エロいこと」の一言で片付けていませんか?そもそもセクシュアリティは本当に「エロい」ものなのでしょうか?
実は、「エロ」の語源をたどると、私たちが日常的に使っている意味とは大きなズレがあることがわかります。
そこで今回は、「エロ」と「セクシュアリティ」の定義や語源の違いを徹底解説。さらに、海外で注目されている「セックス・ポジティビティ」の思想や、日本の日常に潜む7つの性の抑圧について紐解きます。正しい知識を身につけ、自分らしい性のあり方を肯定するヒントを見つけてみませんか?
「エロ」と「セクシュアリティ」の本来の意味とは?
「あの服装、ちょっとエロいよね」などの言葉を、何となく使っていませんか?「エロ」と性のあり方を表す「セクシュアリティ」の本来の意味について、語源をたどりながら紐解きます。

エロの語源
「エロ」はその響きの通り、「エロス」が語源。エロスは、ギリシャ神話に登場する女神アフロディテの息子で”愛”の神。恋の弓矢を操るいたずら好きの男の子です。背中に羽の生えた姿で描かれ、ローマ神話のクピド(キューピッド)にあたります。
しかし現在、日本人が使う「エロ」には”愛”の感情が込められておらず、性行為だけを想起させる言葉になっています。しかも、多くの女性が言われたら嫌な気分になってしまうほどネガティブな響きがあるのが現状です。
セクシュアリティとは
一方、「セクシュアリティ」とは、一言で説明すると「性のあり方」。私たちが自分の体や他者との関係を理解するために使う言葉です。性に対する価値観や信念、身体、欲望、人間関係、ジェンダーなど、私たち自身の性に関するあらゆる要素が含まれます。
自分の「セクシュアリティ(性のあり方)」は、他者の人権を侵害せず同意がある限り、自分の権利です。そこには人間の健康、幸福、尊厳、愛を作る大きな要素が含まれており、決して「エロ」ではないのです。
ちなみに、小児性愛を性の多様性だから認められるべきと主張する人がいますが、これは違います。性的同意を理解できるほど成長していない子どもからは本物の同意が得られません。そのため、小児性愛は子どもへの人権侵害になります。
「セックス・ポジティビティ」とは?自分らしい性を認める思想
「セックス・ポジティビティ」は性的同意や対等な立場を前提に、その人らしい性のあり方をジャッジせずに受け入れること。
米・テキサス在住の性教育者であるグッディ・ホワード氏(Instagram @askgoody)がセックス・ポジティビティを分かりやすく説明しています。彼女によると、「人々が批判されたり、恥じたりすることなく、自分のセクシュアリティやジェンダーを体現し、探求し、学ぶ場を持つべきだ」という思想がセックス・ポジティビティだそうです。(※)
近年、海外セレブが #FreeTheNipple というハッシュタグを使い、乳首が透けて見えるトップスをまとった写真やトップレスの写真を投稿していますよね。たとえば、俳優のエマ・ワトソンは、胸の下半分を見せた写真を女性誌に掲載しました。こういった行動はセックス・ポジティビティに基づいたものです。
しばらく前、某編集者に「セクシュアリティの企画を提案したい」と話したら、「うちは、エロは駄目なんです」と言われて驚きました。この「セクシュアリティはエロい」という言葉から、そもそも「セックスは自然なもので、喜びや快楽も含めて自分を知ることだ」という「セックス・ポジティビティ」の思想が欠けていると感じました。これは編集者個人の問題というよりは、社会意識の問題なのです。
日本社会に潜む「セックス・ネガティビティ」7つの特徴

反対に、「セックス・ネガティビティ」はどういう思想なのでしょうか?
ホワード氏が主張する「セックス・ネガティビティ」の主な特徴は以下のとおりです。
① 女性に「肌を覆う格好をしろ」と言うこと
② 公共の場で授乳することを批判すること
③ セックスワーカー、LGBTQ+、フェミニストに対するあらゆる暴力
④ セックスを禁止する性教育、生殖行為だけを教える性教育
⑤ 処女信仰
⑥ スラットシェイミング(Slut-shaming;性的行動や露出の多い服装、通常の行動規範から外れた女性に向けられる非難のこと。)と被害者非難(性暴力の被害者へ、被害にあった原因と責任を負わせること。)
⑦ 女性を「良い女の子」と「悪い女の子」として二極化すること
こうして見ると、日本社会によく当てはまるのではないでしょうか?たとえば、次のような出来事が思い浮かびます。
- ミニスカートをはいた中年女性が「年がいもなくあんな格好をして」と悪口を言われる。(①)
- 女子学生のポニーテールやツインテールを「男子学生が欲情すると困る」という理由で禁止するブラック校則。(①)
- 生理用品をレジで紙袋で包装するのは、女性の生理を恥ずかしいものと思っている。(②)
- 「おフェミさんは~」という攻撃的言葉があふれかえっているTwitter界隈。(③)
- 生殖的役割しか教えない日本の保健体育の授業。(④)
- マンガやAVなどで処女が特別な価値として描かれる。(⑤)
- 性被害を受けて告発した女性が、ハニートラップだと批判される。(⑥)
- アイドルに『恋愛禁止』を求め、恋愛が報じられると一転して激しく非難する。(⑦)

なぜ「エロい」の一言で片付けるのが問題なのか?
本来、性のあり方は多様であって、他人から批判されるものではありません。しかし、日常的に使われている「エロい」には、無意識のうちにセックス・ネガティビティが含まれてしまっているのです。
人間のセクシュアリティを、「イヤらしいもの」「危険なもの」「汚らしくて気持ちの悪いもの」「自然じゃないもの」「コントロールできないものだから支配すべき」「害のあるもの」などと捉えるセックス・ネガティビティ。
事実、筆者がセックスレスのルポを書くと、「女性にも性欲があるなんて信じられない」「セックスと愛情は違う」「セックスは単なる性欲」「セックスは子作りだ」などという批判的なコメントが寄せられます。こういったコメントにもセックス・ネガティビティが見受けられるのではないでしょうか?
まずは「言葉の意識」から変えてみませんか?

日本社会では、性に関する話題がすべて「エロいこと」の一言で片付けられがちです。しかし、本来のセクシュアリティ(性のあり方)とは、私たちの心と体の健康、そして尊厳を守るための大切な要素。決して恥ずかしいものでも、汚いものでもありません。
女性の性が商品化されている傍ら、包括的性教育を排除し、性にまつわること全般をひっくるめて単純に「エロい」と表現する日本社会には、性に対する深刻なダブルスタンダードがあります。セクハラ、性犯罪、性差別から子どもたちを守るためにも、社会に根深く残る「セックス・ネガティビティ」に、まずは私たち大人が気づくことが第一歩。
「エロ」という言葉の思い込みから一歩抜け出し、自分らしさを大切にできるポジティブな社会を、まずは身近な意識の変革から一緒に作っていきませんか?

参考
※…What Does It Actually Mean to Be ‘Sex Positive’? – healthline






