見つけよう!あなたにぴったりの更年期ケア
更年期障害の可能性があると考えている人の割合は、40歳代女性で約3割、50 歳代女性では約4割と高くなっています。しかし、実際に受診して更年期障害と診断された人は40 歳代女性で 3.6%、50 歳代女性で 9.1%と、いずれも1割以下。1)他国と比べてとても低くなっています。
「更年期は病気ではないから」「家庭や仕事が忙しいから」と、ついつい我慢をしてしまっている方も多いのではないでしょうか。
今回は、更年期のケアにはどのようなものがあるのかをご紹介します。自分で取り組めるセルフケアから病院受診まで。あなたの症状や生活に合ったケアを選ぶ参考にしてください。
体と心 両面からのケアが更年期には必要
更年期に現れるさまざまな症状の中で他の病気を伴わないものを「更年期症状」と言います。
また、更年期症状の中でも症状が重く、日常生活に支障を来す状態は「更年期障害」と呼ばれています。
更年期の症状は、女性ホルモンの急激な減少によって、自律神経の乱れが引き金になって起こることがほとんどです。
それに加えて、子育て、介護、職場など更年期世代を取り巻く環境やストレスも大きく影響します。
つまり、更年期を穏やかに過ごすためには、体のケアと心のケアのどちらも大切ということが分かりますね。
気軽に始めたい【セルフケア】
更年期の症状も生活スタイルも人それぞれです。あなたに合ったケアを選ぶことが更年期の悩み改善への近道。
自律神経を整える「ストレス緩和」と、生活に取り入れやすい「食事」のポイントでご紹介します。
適度な運動
軽い運動(交感神経の刺激)を行うことによって、交感神経と副交感神経のバランスをとることができます。
ヨガやウォーキングなどの有酸素運動や、森林浴など自然に触れて深呼吸するだけでも、ストレスの緩和に役立ちます。
アロマテラピーやハーブティーなど自然療法
メディカルハーブは、病気の治療を目的とした西洋療法と異なり、ホリスティック(包括的)な働きを期待して用いられるため、複雑に症状が起こる更年期との親和性が高いと言われています。
例えばクラリセージの精油は、女性ホルモンの分泌を調整する働きがあることから、更年期の主症状にオイルトリートメントでよく用いられています。また、精油成分に含まれるリナロールは痛みと気持ちを沈める働きに加え、筋肉弛緩作用もあり、緊張からくる肩こりや全身のコリをほぐしてくれます。
食事やサプリメント
女性ホルモンの補充に取り入れたいのは大豆イソフラボンです。大豆食品(納豆、豆腐、豆乳など)を生活に取り入れてみましょう。
大豆イソフラボンから体内の腸内細菌が働いて、エクオールと呼ばれる女性ホルモンに似た作用を表す物質が作られます。
ただし、日本人の2人に1人は腸内細菌がうまく働かず、大豆イソフラボンからエクオールを作りだせないというデータもあります。エクオール産生のチェックキット等でご自身の体質を調べてみることも、自分の体のことを知るきっかけになると思います。
エクオールが体内で作られていない人は、エクオールのサプリメントなどで補うといいかもしれません。
健康な体づくりは、食事が基本です。適切な量をしっかりバランス良く食べることを心がけましょう。
つらい症状には【専門的なケア】
セルフケアに取り組んでも更年期の症状が続く、生活に影響するようなつらい症状がある場合には、医薬品や受診などによる専門的なケアが必要かもしれません。
一般用医薬品
薬局やドラッグストアなどで市販されている医薬品(一般用医薬品)を用いることも、更年期症状に対処する一つの方法です。
一般用医薬品では、更年期の症状に対する漢方薬があります。用法・用量を守って服用することで、特定の症状改善効果が期待できます。
薬によって飲み合わせに注意が必要なもの、漢方はご自身にあったものを選択する必要があるので、薬剤師によく相談した上で購入しましょう。
病院で相談
セルフケアでも症状が重かったり生活や仕事に支障をきたす場合は、無理せずに受診してみましょう。
更年期の相談は主に婦人科で相談することができます。HRTと呼ばれるホルモン補充療法、漢方療法、その他の薬物療法を医師と相談して決めていきます。
ホルモン補充療法とは、体内に不足した女性ホルモンを補充する方法です。日本の普及率は1.7%と低い値ですが、欧米諸国では閉経前後の30〜40%の女性が利用しています。
医療用医薬品では、経口薬、貼付剤(皮膚に貼って吸収する薬)、ジェル剤(皮膚に塗って吸収する薬)など様々なタイプがあります。自分にあった薬やタイプを、医師や薬剤師と相談して決めていきましょう。
カウンセリングや心療療法
更年期の症状は身体的なものだけでなく、女性ホルモンの低下により、精神的な病状が発現する場合もあります。
イライラする、怒ってしまうなど感情がコントロールできなくなってしまったり、くよくよしたり、憂鬱になったり、気分が落ち込む方もいます。
心に更年期の症状が出ている方は、何らかのストレスや家庭や職場などの社会的因子が複合的に影響している可能性もあります。カウンセラーやセラピストの方に悩んでいることや不安に思っていることを打ち明けるだけでも、少し心が楽になるはずです。
自分だけの更年期ケアを見つけましょう
ホルモンに対する感受性の違い、自律神経やメンタルの機能や体質、周囲の環境などその人の個性が映し出されるのが、更年期の症状です。だから症状やケアの方法は十人十色。決まった形はありません。
ご自身にあった体のケアと心のケアを是非見つけてください。そして、つらい時は、無理をせず専門家にご相談くださいね。
参考
1)厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査」(2022)