産婦人科医が解説!大人の性教育が必要な理由と正しい知識の見分け方

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性教育の重要性や内容に関しては以前よりさまざまな議論が起きていますが、近年は「大人のための性教育」にも注目が集まっています。とはいえ、「どうして大人に性教育が必要なの?」とか「どうやって学べばいいの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

そこでお話を伺ったのは、渋谷文化村通りレディスクリニックで院長を務める髙橋怜奈先生。日本産科婦人科学会専門医や医学博士のほかに、性教育認定講師の資格を持ち、今年出版された「50歳からの性教育」でも執筆者の1人として名を連ねています。今回は、大人の性教育と子どもの性教育の違いや更年期の正しい知識、そして大人が性教育を学ぶべき理由などについて教えていただきました。

目次

大人にも性教育を

Q.早速ですが、なぜ大人に性教育が必要なのでしょうか?

最近は、メディアやSNSでもPMS(月経前症候群)やピルのことを以前よりも取り上げるようになったので、少しずつ性に関する認識は高まっているとは思います。ただ、更年期のことになるとまだまだマイナスイメージのことばかり。たとえば、中年の女性がイライラしていたら「あの人、更年期なんじゃない?」と言われることが多かったりと、更年期が相手を揶揄(やゆ)する言葉の代名詞として使われがちですよね。

でも、更年期は自分の体ときちんと向き合える時期ですし、症状への対策法もたくさんあります。病気の早期発見、早期治療に繋げるためにも、大人には性教育が非常に大切なことなのです。

Q.子どもの性教育とは、どのような違いがあるのかを教えてください。

まず、子どもの頃に必要な性教育といえば、セックスの考え方や避妊方法、プライベートゾーンのことが中心ですが、最近は「包括的性教育」といって人権やジェンダーについても教えています。ほかにも、学校の性教育では生理についても説明するのが一般的です。ただ、閉経以降の更年期については教えてくれません。そういったこともあって、大人の性教育では更年期以降のことを当事者として学ぶ必要があると考えています。

Q.では、大人の性教育はどうやって学ぶことができますか?

最近はインターネットでもいろんな情報が発信されていますが、正しい情報を見分けるのが難しいですよね。そんなときのオススメは、学会のホームページです。そういうと堅苦しいイメージがあるかもしれませんが、実は意外と一般の方向けに書かれているものがあるんですよ。たとえば、日本女性医学学会のホームページには更年期の基礎知識や治療法、セルフケアなどに関する動画が掲載されていて、すごくわかりやすい内容になっています。しかも、学会が制作しているので、内容も正確で安心です。

あとは、医師や製薬会社が監修しているアプリ、病院のホームページといったものもいいと思います。私もSNSで発信をしていますが、検診や子宮頸がんを予防するHPVワクチンの大切さを伝えたいという思いで始めました。

Q.直接相談したい場合は、どうすればいいですか?

まずは、産婦人科でかかりつけの医師を持っていただくのがいいですね。何かあったときに相談できる医師がいると、症状や治療法について情報を提供してもらうことができるので、とても重要です。

友達に相談をして、勧められたサプリを飲むだけという対処法をされる方がよくいらっしゃいますが、それだと更年期障害の裏に隠れている病気を見逃してしまうことがあります。友達に相談したうえで医師の診察を受けるのであればいいのですが、自己判断で薬やサプリを飲んだりするのはなるべく避けてほしいです。最終的には医師の判断を仰ぐのが一番なので、まずはかかりつけ医を持ち、そこから正しい情報を得ていただきたいです。

マイナスイメージもいまだに強い?

Q.実際、間違った知識や情報が広まっているように感じていますか?

そうですね。たとえば、子宮頸がんは性行為によってうつるウイルスが原因ですが、更年期世代の方で「私はしばらく性行為をしていないから関係ない」とか「複数人と性行為していないから大丈夫」と思って検診に来ない方がいます。でも、過去に一度でも性行為をしていれば、子宮頸がんになる可能性はあります。本来はいくつになっても婦人科に行く必要がありますが、それを知らない方が多いのが現状です。

あと、「婦人科の内診は痛い」とか「検査に時間がかかる」というマイナスイメージもいまだに強いようですね。でも、リラックスしてもらえればそんなに痛くはありませんし、がん検診なら1分程度。料金も高いと思われがちですが、対象者は各自治体から無料チケットや割引クーポンも発行されていますし(申請方法などは自治体によって異なります)、それを使わずに婦人科を受診したとしても、何かしらの症状があるときであれば保険適応にもなります。病気の発見が遅れないためにも、もっと気軽に受けられるものだというのを知っていただきたいです。

Q.どうすれば、そういった偏見はなくなるのでしょうか。

私たちのような医療関係者が正しい情報をもっと発信していく必要はありますが、正直に言うと口コミに勝るものはないとも感じています。なので、もしみなさんが検診を受けたことがあったら、「痛くなかったよ」でも「婦人科は怖くないよ」でもいいので、家族や友人の方に伝えていただきたいです。それが周りの方々を守ることにもなるので、いい口コミをみんなで広げていくのは大事だと考えています。

1度でも嫌な経験があると産婦人科に行きたくなくなってしまう方もいるかもしれませんが、そこがすべてではないので、ぜひほかのところでも受診して、自分に合う医師を見つけていただきたいです。特に産婦人科は敷居が高いと思われていて、行ったことがないという方も結構いるのですが、病気の早期発見や治療、そして予防のためにも受診の重要性を多くの方に届けたいです。

Q.更年期に対しても、知られていないことや伝えておきたいことがあれば教えてください。

更年期のことを勘違いしている人がよくいますが、「更年期」というのは病気の名前ではありません。閉経前後5年の期間のことを指しています。つまり、更年期自体は誰にでも訪れるものなのです。更年期に対して怖い印象を持っている方は多いですが、ホルモン補充療法をすれば、症状はかなりよくなりますし、心疾患のリスク軽減や高脂血症などの脂質異常改善にも繋がります。漢方薬も婦人科では症状改善のためによく処方しますよ。

更年期に入ると毎月の排卵もなくなってきますが、それによってホルモンが一定になるので、生理前の身体的不調や精神的不調からも解放されます。さらに、閉経すると子宮筋腫や子宮内膜症の症状も落ち着いてくるので、そういったいい面があることも知っていただきたいですね。更年期に偏見を持たないで欲しいですし、ホルモン補充療法や漢方療法などによってよりよい人生が歩めることも伝えたいです。まずは「更年期とは何かを知る」というのが大事ですし、それが対策の1つだと思います。

お話をうかがった先生

監修医師

髙橋怜奈 先生


産婦人科専門医、医学博士、性教育認定講師。

渋谷文化村通りレディスクリニック院長。

東邦大学医療センター大橋病院月経困難症専門外来担当医師。

2016年にプロボクシングライセンス取得、プロボクサーとして活動し、2020年10月の試合で現役を引退。 産婦人科での臨床を行いながらYouTube、TikTok、TwitterなどのSNSで医療情報の発信を行う。

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この記事を書いた人

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このコンテンツは、病気や症状に関する知識を得るためのものであり、特定の治療法や専門家の見解を推奨したり、商品や成分の効果・効能を保証するものではありません。

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