オトナ女性が知っておくべき【更年期の自分の体&性】

わたしの体はわたしのもの 「40代からの性」について婦人科医師に聞きました
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40代以上のオトナ女性たちにとって、若い頃とは違う悩みが出てくるのが性に関する問題について。なかでも更年期に関しては、「不安だけど何をしたらいいかわからない」「相談する人がいない」などの声がよく聞かれます。

そこで今回は、渋谷の東急プラザ内にある「Inaba Clinic」で院長を務める産婦人科医師稲葉可奈子先生に、更年期でも悩まないための対策や、関心が高まりつつあるSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)などについてお話していただきました。

目次

更年期に悩まないための基礎知識とは?

Q. まず、更年期世代の女性たちは、どんなことに気を付けて過ごしたらよいでしょうか

悩まないための基礎知識として知っておいて欲しいことの一つは、「更年期障害の症状は全員に出るわけではない」ということです。更年期に対しては、まだ何も症状が出ていないのに“得体の知れない不安な存在”として心配されている方がものすごくたくさんいらっしゃいます。

でも、実際は症状が出ない人のほうが多いくらいなんです。それに、もし症状が出たとしても、医師に相談してもらって、必要があれば治療をすることができるので何の問題もありません。

Q.  症状が出ない人のほうが多いというのは、大半が知らないことかもしれません

そうですね。特に、最近は「プレ更年期」というワードが巷で言われているので、そういう言葉の影響で必要以上に心配になっている方が増えているように感じています。そもそも「更年期」は「思春期」のようなもので、生きていれば誰もが通る時期。なので、症状がでる前から不安に思う必要はありません。気が付いたら何の症状もなく閉経していた、という人も結構いるのです。

とにかく「気になる症状があれば我慢せずに受診する」ということに尽きます。

更年期の対策はありますか?とよく聞かれますが、心配しない」「気にしすぎない」「我慢しないの3つが重要です。

Q. 更年期以外では40代以上の女性からはどんな相談が多いのでしょうか

40歳を過ぎてから、PMSや生理痛がひどくなったという方も結構いらっしゃいます。受診に来られる方の中には「40歳過ぎているのにすみません…」みたいに申し訳なさそうに相談される方もいらっしゃいますが、生理の悩みは何歳になっても同じです。そんなふうに感じる必要は、まったくありませんので、心配しないでください。

あと、「40歳過ぎたらピルはもう飲めないんですよね?」とおっしゃる方が多く、そういった知識は広まっているんだなと感じます。ただ、それに関しても、40歳すぎたらもうなにも治療できない、というわけではありません。血栓症のリスクがなく、何歳でも服用できる、低用量ピルとは異なる生理痛の治療薬(プロゲステロン製剤)があるので対応は可能です。なので、年齢は気にせず、まずは相談に来ていただきたいと思っています。

40代からのSRHR(性と生殖に関する健康と権利)

Q. 稲葉先生は、「性と生殖に関する健康と権利」を意味するSRHRについても積極的に取り組んでいらっしゃいますが、40代からのSRHRにおいて意識したほうがいいことはありますか?

SRHRは性に関すること全般に関わる話ですが、なかでも子どもを産むか産まないかを自分で決める権利は大事だと考えています。特に、40代になると「まさか妊娠しないと思っていたのに、妊娠してしまった」という方もいるので、人工妊娠中絶は実は40代のほうが10代よりも多いと言われているほどです。

40代になると不妊治療ばかりが取り上げられるので、40代になるとそうそう妊娠しないだろうと思う方もいますが、妊娠がしにくくなるだけで、妊娠しないわけではありません。なので、もし子どもを望んでいないのであれば、きちんと避妊をすることをオススメします。日本ではコンドームが一般的ですが、子宮内に装着する避妊具であるミレーナを入れるという方法もあります。避妊は男性まかせではなく、女性自身で避妊することもできる(むしろその方が避妊効果は高い)、ということももっと知られてほしいですね。

Q. 日本におけるSRHRで遅れていると感じることはありますか?

課題だと思っているのは、女性にとって避妊が男性任せになってしまっていること。

自分でもコントロールできるということが日本ではまだあまり知られていないと感じています。あと、日本だと避妊に関してはすべて自費になりますが、たとえばヨーロッパでは避妊にもちゃんと補助が出る国もあり、日本もそうなったらいいなと。「子どもを望むときに望めて、そうではないときにはきちんと避妊する」というのがSRHRにおいては、非常に大事な部分になっています。

Q.40代の中絶や夫婦間の避妊が問題になることがありますが、解決に向けてどのように意識を変えていくべきだと思いますか?

この問題に関しては、男性パートナーのほうが避妊に協力してくれない、というケースが問題になりがちです。子どもを望んでいるわけでないのに避妊をしない、ということ自体が、女性を望まない妊娠のリスクにさらしているわけで、男性側が非協力的な姿勢であればなおさら、女性がミレーナを入れたり、経口避妊薬で避妊をしておきましょう。

その場合、避妊していることを男性側に言わないといけないわけではありません。妊娠して困るのは自分なので、子どもを望んでいないのであれば、女性が自分自身で避妊方法を検討していただきたいです。

ミレーナに関しては、最長5年間効果が続きます。閉経までまだ年数がありそうな場合は、入れ替えて閉経まで継続的にミレーナを使用することができます。

稲葉先生からオトナ女性へのメッセージ

Q. オトナ世代の女性は「性について積極的なのは恥ずかしいこと」という意識がある人が多いですが、そのような女性に向けて先生からのメッセージをお願いします。

性に関係する話を大っぴらに言う必要はありませんが、生理痛やPMS、更年期障害のことに関しては、体の症状に関することなので、何も恥ずかしい話ではありません。「虫歯が痛い」と言っているのと同じことです。虫歯で歯医者さんを受診するのをためらう方はいないと思うので、生理痛や更年期症状があれば、婦人科にも同じように何もためらうことなく来ていただきたいです。

友人や家族など周りには言いづらいこともあるかもしれませんが、婦人科ではそういう相談をしている方ばかりなので、気にする必要はありません。むしろ、そんなときのためにあるのが婦人科ですから。「これくらいで病院に行ってもいいのかな」と思われがちではありますが、自分がしんどいと思ったら、それは症状が出ているということ。1人で抱え込んでしまうのはよくないので、遠慮なく相談しに来てください。

お話をうかがった先生

監修医師

稲葉可奈子先生


産婦人科専門医・医学博士

Inaba Clinic 院長


京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得。

双子含む四児の母。

産婦人科診療の傍ら、子宮頸がん予防や性教育、女性のヘルスケアなど生きていく上で必要な知識や正確な医療情報を、メディア、企業研修、書籍、SNSなどを通して発信している。婦人科受診のハードルを下げるため2024年7月渋谷にInaba Clinic開院。
https://ina-cli.com/

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この記事を書いた人

志村昌美のアバター 志村昌美 【ライター】

大学卒業後、イタリア留学を経て映画宣伝会社に就職。
洋画や邦画の宣伝業務に従事する。その後、ワーキングホリデーでイギリスへ渡った際、ライターに転向。現在は映画監督や俳優のインタビュー、映画評、海外のエンタメ情報などを中心にWEBや雑誌で執筆中。
そんななか、TRULYとの出会いをきっかけに更年期やヘルスケアへの関心が高まり、医師のインタビューやアンケート記事の監修に携わるようになる。

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