「情緒的不応答」な“レスり”を描く『あなたがしてくれなくても』。セックスレスに向き合わない相手とはどうすればよいのか?
TRULYでの連載が大人気の此花さんの前記事、セックスを求めれば求めるほど、パートナーの目には自分の価値が下がっていく。セックスレスドラマ『あなたがしてくれなくても』にみる受動的攻撃性では、登場人物4人が持っていたある共通の特徴「パッシブ・アグレッション」について解説してもらいました。今回は4人が持っているもうひとつの特徴的なパーソナリティについて、解き明かします。
こんにちは。リレーションシップコンサルタントの此花わかです。
大ヒットセックスレスドラマ/コミック『あなたがしてくれなくても』。前回の記事では登場人物全員がもつパッシブ・アグレッション(受動的攻撃性)がセックスレスをこじらせている点を指摘しました。
本記事では、登場人物たちのうちでセックスのいわゆる“レスり”(セックスを一方的に拒否している側)の特徴である「情緒的不応答性」についてお話したいと思います。
情緒的不応答性(emotional unavailability)とは?
Emotional unavailabilityはリレーションシップの心理学でよく使われている言葉。日本語では「情緒的不応答性」と訳されます。分かりやすく言うと、他人と感情的・情緒的にコネクトできないことを指します。
情緒的に応答しない人は、自分の感情を表現することが苦手な人が多い傾向があり、他者の感情を理解し、反応や共感することがなぜかできません。(同意じゃなくて、共感がポイント。人間は個性があるのでカップルでも違う意見があるのは当たり前)
ドラマでは、セックスを一方的に拒否する“レスり”側の陽一と楓が当てはまります。
以下が主な特徴。
感情的な親密さを避ける
感情を表現できない人は、感情的な親密さを避けることがあり、よく他人と距離を置いたり、感情や気持ちについての会話を避けたりします。
傷ついていることを見せない
感情的になりにくい人は、他人に弱音を吐くことが苦手です。
共感性の欠如
感情が不安定な人は他人の感情を理解するのに苦労し、共感や思いやりを示すのが難しいときも。
不信感
感情的になりにくい人は、他人に対して不信感を抱き、自分の感情を共有することができません。
決して他人に助けを求めない
感情的になりにくい人は、周囲のサポートを求めず、自分ですべてを解決しようとします。
無反応
感情表現ができない人は、感情的なつながりや会話を試みても無反応や無関心です。
陽一と楓はなかなか本心をパートナーに表しませんよね。“有毒な男らしさ”にとらわれている陽一は、なぜ自分が妻だけEDなのかを探求しようとせず、レスの理由を“みちの責任”にします。
楓も同じ。仕事で有能になろうと思うばかり、感情を見せない・本音を言わない癖がついてしまったのかもしれません。両人ともパートナーが苦しんでいるのを知っているのに、自分は何もせず、相手の思いを都合よく使っています。
それは、彼らが感情で他人とつながることができないからなのです。筆者のチャットカウンセリングや取材経験上、セックスを一方的に拒否し、パートナーに向き合わないレスりの大きな特徴のひとつが、この情緒的不応答性。(セックスしたくない明確な理由があるけれど、相手のハラスメントが怖くて言い出せないなどは別)
情緒不応答性の原因とは?
他者と感情的にコネクトできないのは、過去のトラウマ、養育者との愛着スタイル、性格的特徴など、さまざまな要因によって引き起こされます。
カウンセリングや自己探求、コミュニケーションスキルの向上から、「情緒的不応答性」を克服することは可能ですが、こういったタイプのパートナーとの関係には限界があります。他人を変えることはできないので、自分自身の感情的欲求を優先することも重要です。
「セックスレスに向き合わない」パートナーとどうすればよいのか?
セックスレスに限らず、感情レベルでコネクトできない(情緒不応答な)パートナーとはあらゆる問題が起こります。そんなパートナーとの対処法は以下だと考えられます。
① コミュニケーションをとる
自分の気持ちやニーズについて、パートナーと率直に話し合うことが大切。パートナーシップに何を求めているのか、何を受け入れてもいいのか/嫌なのかを明確にしましょう。ただし、パートナーが自分の感情的なニーズに応えられない可能性もあることを覚悟しておくこと。
② NOと言う/境界線を設定する
パートナーシップにおいて自分が許せる範囲について、明確な境界線を設定することが不可欠。
ドラマの登場人物の場合だと、家事の分担を設定したり、誕生日をどのように祝ってほしいかを伝えたり、セックスについて本音を語らないと別れると伝えたりすること。
できること/できないこと、したいこと/したくないこと、好きなもの/好きじゃないものについて事細かに話し合う必要があります。
③ 自分を大切にする
自分自身のメンタルヘルスと幸せをパートナーよりも優先しましょう。セルフケア、カウンセリング、友人や自分の家族、興味や趣味の世界を大事にすることが重要です。
④ カウンセリングを検討する
有資格者の心理カウンセラーによるカップル・カウンセリングや個人カウンセリングが役に立つかもしれません。カウンセラーは、情緒的不応答性の根本的な原因を探り、コミュニケーションと感情的なつながりを改善するための方法を一緒に考えてくれるでしょう。
⑤ 関係を終わらせる
パートナーが感情的なニーズに応えようとしない、あるいは応えられない場合、関係を終わらせたほうがよいかもしれません。難しい決断ですが、自分を優先しましょう。ドラマの登場人物のように、自分が“被害者意識”をもつ関係は健全ではないのです。
まとめると、セックスレスを含め「感情レベルでコネクトできない」(情緒不応答な)パートナーと健全な関係を育むのは非常に難しく、万能の解決策はありません。パートナーシップにおいて一番大切なのは、“感情レベルで深くコネクトし、尊重し合えるかどうか”。
これは必ずしも、経済・家事・育児・責任を平等に分担することではありません。人生には色々なステージがあり、ときにはどちらかに頼らなければいけない状況も多々出てきます。パートナーシップは責任を五分五分に分けることではなく、相互に支え合うこと。
自分の不満やニーズに対し相手は耳を傾けて、解決策や着地点を一緒に考えてくれますか? はぐらかしたり、逆ギレしたり、その場しのぎの約束をしたりしていませんか?
相手の話しを聞き、前向きな着地点を一緒に考えられるコミュニケーンがとれるかどうかーー。それには、感情的にコネクトできる(情緒応答性のある)人でないと難しいのです。
『あなたがしてくれなくても』の最終回は賛否両論を呼びましたが、感情レベルで深くコネクトできない相手とは別れたほうがハッピーエンドだと、筆者は捉えています。