【つわりみたい】更年期の吐き気はなぜ起きる?
「なんだか気持ちが悪い」「まるでつわりみたい」
更年期世代でこうした症状に悩んでいる女性が一定数います。
実は更年期に減少する女性ホルモンの影響で「吐き気」などの症状が起きることがあるのです。
こうしたつわりのような症状がどうして更年期に起こりやすいのか、いつまでつらい症状が続くのか、そして対処方法はあるのかといった内容を今回はお伝えしていきます。
40代妊娠していないのに【つわりのような症状】体験談
40代半ばのAさんは、40歳を過ぎた頃からほてりや汗といった更年期症状を少しずつ自覚し始めていました。それと同時にまるでつわりのようなムカムカした吐き気を感じることも増え、食欲が落ちるようになっていました。
Aさんのように40代以降の更年期世代の女性の中には、つわりのような「吐き気」を感じることがあります。なんとなく吐き気を感じる程度の人もいれば、急に気持ち悪くなって実際に嘔吐してしまうという人も。
吐き気が更年期によるものだと自身で気づくのは難しく、症状を我慢しながら過ごしている女性が多いのが現状のようです。
更年期の「吐き気」はなぜ起きる?
吐き気が続いたり胃の調子が悪かったりするのは、身体的にも精神的にもつらいもの。どうしてなのか原因が分からないと我慢してしまいがちですが、更年期に起こる吐き気には次のようなことが関係しています。
女性ホルモン【エストロゲン】の減少が影響した更年期症状
更年期は卵巣機能が低下して、脳からの指令を受けても女性ホルモンの一つである「エストロゲン」が分泌されにくくなります。すると、脳はさらに指令を出し続けることに。同じ場所から出される指令を受けている自律神経も影響を受けて乱れてしまうのです。
自律神経は胃腸の働きにも影響しています。そのため、更年期に自律神経のバランスが乱れると、胃の動きや消化する力が弱まり、吐き気・胃もたれ・食欲不振などの症状があらわれるのです。症状の程度や頻度には個人差があり、妊娠していないのにつわりのような症状に感じる人もいます。
更年期世代にかかるストレスも関係
エストロゲンの減少のほか、ストレスも自律神経の乱れに関係します。自律神経には、活動しているときに働く「交感神経」とリラックスしているときに働く「副交感神経」の2種類があります。この2つがシーソーのようにバランスをとりながら、体を調整しているのです。
ところがストレスが蓄積すると、交感神経が過度に働いてしまい副交感神経の働きは抑えられてしまうため、さまざまな胃腸のトラブルがあらわれます。
更年期にあたる女性は、子どもの進学や親の介護、仕事で責任のある立場を任されるなど、心理的・環境的にも負担がかかりやすい時期でもあります。女性ホルモンなどの身体的な影響だけでなく、さまざまな要因がかさなることで胃の不調などにつながっているのです1。
こんな「吐き気」は要注意!
更年期には吐き気がみられることがありますが、我慢してやり過ごすのは禁物。更年期以外の原因で吐き気が起こる場合もありますので注意が必要です。
- 吐き気とともに耐えがたい頭痛が起こる場合
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これまでに経験したことのないような強い頭痛・めまい・吐き気などが突然起こる場合は、脳卒中などの重大な病気の可能性があります。すぐに救急病院を受診しましょう。
- 吐き気とともにグルグル回転するようなめまいや耳鳴りが起こる場合
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めまいと吐き気の発作が繰り返し起こるメニエール病などの可能性があります。ストレスや心身の疲労が蓄積すると発作が起こりやすくなるといわれているため、まずは安静にして、医療機関で適切な治療を受けましょう。
いつまで続く?更年期の「吐き気」
更年期の吐き気がいつまで続くのか不安に感じる人も多いことでしょう。大抵の場合、吐き気などの更年期症状はエストロゲンの急激な減少に体が慣れると少しずつ治まっていきます。
更年期とは閉経の前後5年間をあわせた10年間をさすもの。40代後半〜50代前半に更年期を迎えるのが平均的で、吐き気・ホットフラッシュ・肩こりなどの更年期症状・障害があらわれるケースが多くあります。。
症状の程度や期間には個人差はありますが、閉経後5年ほど経過するとエストロゲンが少ない状態に体が慣れて、症状は落ち着いていくといわれています。
【つわりのような症状】への対処法
更年期に起こるつわりのような吐き気には、さまざまなアプローチがあります。日々の体調に目を向けながら、自分にあう対処法を取り入れてみましょう。
自律神経を整えてリラックス
まずは自律神経を整えることがとても重要です。
基本的なことかもしれませんが、規則正しい生活習慣・質のよい睡眠・バランスのとれた食事などは自律神経の安定に役立ちます。また、湯船にゆっくり浸かったり、ストレッチやヨガを取り入れたりすると、心や体をリラックスモードにできるのでおすすめです。
ツボを刺激する
ウッと吐き気を感じたときは、胃腸の不調に効果的なツボを押してみるのも一つの方法です。
たとえば「内関」と呼ばれるツボは、吐き気を抑えて心をリラックスさせるのに役立ちます。手首内側の中央からひじ方向へ指3本分下がったところを3〜5秒くらい押してみましょう。
漢方の力を借りる
漢方薬は体が本来もつバランスを整えてくれるため、更年期だけでなくさまざまな不調によく用いられます。たとえば、吐き気がある場合には次のような漢方薬が有効です。
- 六君子湯(りっくんしとう)
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胃腸の働きを整えてくれるため、吐き気だけでなく食欲不振などの改善を期待できます。
- 呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
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胃腸の働きを整え、吐き気を抑える働きがあります。また、冷えや血行不良による頭痛を鎮めてくれる作用も期待できます。
ただし、漢方薬は体質にあったものを服用しないと、効果を感じられない場合もあるため、使用する場合は医師や薬剤師に相談しましょう。
つらい症状が続くなら婦人科で相談
症状がつらかったりセルフケアで改善しなかったりする場合は、一人で悩みを抱え込まずに婦人科で相談しましょう。
更年期の症状は人によって異なり、一人ひとりの症状や程度にあわせた治療が行われます。ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬などの服用、生活習慣の見直しについての専門的なアドバイスを受けることで、つらい症状を和らげることが期待できます1)。
その「つわりのような吐き気」は更年期症状かもしれません
更年期に起こるつわりのような吐き気は、女性ホルモンの低下や自律神経の乱れなどによる更年期症状の可能性があることをご紹介しました。吐き気も更年期症状のひとつなの?と意外に思った人も多いのではないでしょうか。
つわりのような吐き気が続くと、仕事やプライベートに影響してしまうことも。吐き気や胃の不調は不快に感じてしまうものですが、我慢する必要はありません。早めに対処して、更年期を快適に乗り越えましょう。
出典
- 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会『産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2020』 ↩︎