味覚障害は更年期が原因?治療法や対策について解説

更年期は、ホルモンバランスの乱れによってさまざまな体の変化が現れます。その中でも「味覚の変化」は意外と見過ごされがちな症状の一つです。
この記事では、更年期世代の女性に向けて、味覚障害の原因や対処法についてわかりやすく解説します。「最近、味の感じ方が変わったかも……」と感じている人は、ぜひ参考にしてください。
「甘い・しょっぱいが分かなくなった」味覚障害の体験談
「ママ!これしょっぱすぎる!」
料理をすることが好きだった50代の裕子さん(仮名)。
最近家族から「料理の味付けが濃すぎる」と指摘されることが増えてきました。裕子さん自身も「味見をしてもよく分からない」と感じています。好きだった料理も味付けが決まらないので、作るのがおっくうになってしまっています。
裕子さんのように更年期世代で、味覚に変化を感じる女性は少なくありません。実は味覚障害と更年期には関係があるのです。
味覚障害にはどんな症状がある?
味覚障害とは、味を感じにくくなったり、本来とは異なる味を感じたり、何も口にしていないのに口の中に変な味がしたりする状態を指します。具体的には以下のような症状があります。
- 味覚減退:以前と同じ濃さの味付けでは物足りなくなり、味が薄く感じる。
- 味覚消失:何を食べても味がしない。
- 異味症:実際とは異なる味を感じてしまう。例えば、何を食べても苦みや金属のような味がするなど。
- 自発性異常味覚:何も口に入れていないのに、口の中に異常な味を感じる。
更年期に多いのは、味覚減退と異味症と言われています。これらの症状を放置すると、食事量が減ってしまったり、味の濃いものばかりを好むようになり、栄養バランスが偏ってしまう可能性も。また、食事を楽しめない状態が続くと、精神的なストレスにもつながるため注意が必要です。
更年期に味覚が変わる原因
更年期における味覚の変化は、女性ホルモンの低下や自律神経の乱れ、ストレスが複雑に関与しています。
更年期には、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」が急激に減少します。 エストロゲンは、女性の体の中でさまざまな働きをしており、肌の潤いや骨の健康、そして、 味覚にも深く関わっています。
エストロゲンが減少すると、自律神経が乱れやすくなります。自律神経は、体温調節や消化活動など、私たちが意識しなくても体が正常に働くようにコントロールしている神経です。
自律神経が乱れてしまうと、味がわかるように脳に情報を送る神経伝達物質の分泌がうまくいかなくなったり、舌にある味を感じるセンサー「味蕾(みらい)」の働きが鈍くなったりします。その結果、「味が薄く感じる」「変な味がする」といった、味覚の変化が起こってしまいます。
更年期は環境の変化や将来に対する漠然とした不安などから、ストレスを感じやすい時期でもあります。ストレスを感じると、自律神経のバランスはさらに崩れやすくなり、味覚障害が悪化してしまう可能性もあるのです。
【更年期の味覚障害】治療&対策
更年期の味覚障害は、根本的な治療が難しいのが現状です。しかし、毎日の生活習慣を見直したり、セルフケアをコツコツと続けることで、症状が軽くなったり、少しずつ改善していくことが期待できます。
亜鉛を摂る
亜鉛は、味蕾(みらい)の細胞分裂や代謝に欠かせないミネラルです。亜鉛が不足すると、味蕾の働きが鈍くなり、味覚障害が悪化する可能性があります。そのため、意識的に亜鉛を摂取することが大切です。
亜鉛は、牡蠣、牛肉、レバー、ナッツ類などに多く含まれています。食生活に取り入れにくい場合は、サプリメントで補うのも良いでしょう。
漢方の力を借りる
更年期の味覚障害に漢方薬が効果を発揮するケースがあります。
更年期に入ると、ホルモンバランスが乱れることで自律神経のバランスも崩れやすくなります。この自律神経の乱れが、味覚障害をはじめとする様々な更年期症状を引き起こすと考えられています。
漢方薬は、自律神経を整える効果に優れており、体全体のバランスを整えながら不調を改善へと導きます。特に「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」は、味覚障害への効果が期待できると言われています。
漢方薬は、体質や症状に合わせて選ぶ必要があるため、まずは漢方に精通した医師や薬剤師に相談してみましょう。
ドライマウスを改善する
更年期には、唾液の分泌量が減り、口の中が乾燥しやすくなる「ドライマウス」の症状が現れることがあります。
ドライマウスになると、食べ物の味が分かりにくくなるため、味覚障害が悪化してしまう可能性があります。
こまめな水分補給を心がけたり、口の中の乾燥を感じる場合は、市販の口腔保湿剤やスプレーを活用するのも良いでしょう。唾液の分泌を促すマッサージや、口呼吸を避け鼻呼吸をすることも効果的です。

更年期の味覚障害は専門家に相談を
更年期における味覚障害は、女性ホルモンの急激な減少によって自律神経が乱れることが主な原因であることをお伝えしました。
放置すると食事が楽しめなくなったり、栄養バランスが偏ったり、健康面にも悪影響を及ぼす可能性があります。「最近、味が変わったなぁ…」と感じたら、まずは生活習慣を見直したり、セルフケアを試してみましょう。
味覚障害は、更年期のホルモン変化以外にも、病気や薬の副作用が原因になっている可能性もあります。もしも症状が続く場合には、耳鼻咽喉科や婦人科、更年期外来で相談することをおすすめします。
参考文献
- 矢野忠則. 補中益気湯が著効した味覚障害あるいは口臭症の2症例. 漢方医学. 2018;71(3):198-202. https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/71/3/71_198/_pdf/-char/ja
- 味覚消失×補中益気湯[漢方スッキリ方程式(66)]. 日本医事新報社. https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=20373