30代で更年期?プレ更年期・若年性更年期障害を解説

若年性更年期障害 プレ更年期 プチ更年期 そんな病名ありません 30代で更年期?自己判断は危険!
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最近30代の方からも「若年性更年期障害」「プレ更年期・プチ更年期」なのではないかという相談が寄せられます。

こうしたキーワードがテレビや雑誌などで取り上げられていて、疲れやすさやイライラ、生理の乱れ・変化などを感じたら「もしかして私も……」と心配になりますよね。

今回は「若年性更年期障害」などの言葉が正しいものではないこと、そして自己判断で思い込んでしまうことのリスクホルモンバランスを整えるセルフケアについてお伝えしていきます。

目次

「若年性更年期障害」「プレ更年期」という病名はありません

疲れやすさやイライラ、生理不順などの症状に直面すると「プレ更年期」という言葉を思い浮かべる30代の女性は多いでしょう。しかし、「若年性更年期障害」や「プレ更年期」という言葉は正式な病名ではありませんし、医学的な定義も存在しません。

30代の女性が更年期に似た症状を訴えて受診しても、エストロゲンなどの女性ホルモンの値は低下していないことがしばしばあります。

女性ホルモンの値が低下していないにも関わらず、なぜ更年期と似た症状が現れるのでしょうか?

その答えは、ホルモンバランスの乱れにあります。

早い人は何歳から更年期になる?

日本人の閉経年齢の中央値は52歳 1なので、40代半ばから後半にかけて更年期が始まることが平均的です。

そして実は更年期に入る前の35歳をすぎる頃から、すでに卵巣機能は低下し始めています。ですので、30代で月経周期が短くなったり、経血量が減るといった生理の変化を感じる人もいますが、これらの症状が現れたからといって、必ずしも更年期の始まりを意味するわけではありません。

生理が来ないので閉経?イライラするから更年期障害?

いわゆる「若年性更年期障害」や「プレ更年期・プチ更年期」と言われるような症状ですが、30代で起こる場合、そのほとんどが実は【ホルモンバランスの乱れによるもの】なのです。

ホルモンバランスはストレスや不規則な生活、体重の変動など、日常生活のさまざまな要因によって影響を受けます。特に30代の女性は、キャリアや家庭生活の中で多忙を極め、ストレスの蓄積によりホルモンバランスを崩しやすい状況にあります。

ホルモンバランスの乱れが引き起こす症状

月経異常自律神経失調症状精神症状
・生理不順
・不正出血
・生理痛
など
・のぼせ
・発汗
・寒気
・冷え
・疲労感
・動悸
・頭痛
・不眠肩こり
・めまい
など
・イライラ
・意欲低下
・抑うつ
など

これらの症状は更年期障害と共通しているものもあり、プレ更年期と誤解されることがありますが、30代の女性においては、ホルモンバランスの乱れが根本的な原因であることが多く見られます。

体験談1 生理が毎月来ないのはプレ更年期で閉経?

35歳のAさん、生理が来るのは3か月に1回仕事が忙しく、毎月生理が来ていないことをあまり気にしていませんでしたが、先日雑誌の「プレ更年期」の特集を目にして、もしかして私もプレ更年期で生理が来ていないのでは……と不安に思うようになりました。

通常の月経周期は25日から38日 2なので、Aさんは月経不順であると言えます。

30代の月経不順は更年期の兆候ではなく、ホルモンバランスの乱れが原因であることが多いですが、多嚢胞性卵巣症候群や甲状腺機能障害などの病気が原因のこともあるので、まずは医療機関で正確な診断を受けることが重要です。

※多嚢胞性卵巣症候群:正常な排卵が妨げられ、卵巣に未成熟な卵胞(卵子の袋)が多数残る病気
※甲状腺機能障害:甲状腺ホルモンが多すぎるか少なすぎることにより、体のエネルギー調整に影響を及ぼす病気

体験談2 イライラがひどいから若年性更年期障害?

38歳のBさんは最近イライラすることが多く、職場でも後輩から怖がられているのを自覚しています。でもこのイライラをコントロールすることがどうしてもできず、自分でも困っています。そんな時、友人から「それって若年性更年期障害なんじゃない?」と言われて、もう更年期になったのかと落ち込んでいます。

イライラに悩んでいる女性は年代を問わず少なくありません。Bさんのように30代でこうしたメンタルの波に困っている場合は、まず症状がいつ強く出ているのかを確認してみましょう。

もし月経の1週間から2週間前にイライラが強くなり、月経とともに軽減するなら、PMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)の可能性が高いです。

コントロールできないくらいのイライラは日常生活に影響を及ぼします。低用量ピルや漢方の内服により症状の緩和が期待できるので、婦人科の医師に相談することをおすすめします。

自己判断のリスク

更年期障害の診断は特定の症状と、それを裏付ける医学的検査の結果を組み合わせて行われます。

若い世代で更年期に似た症状が見られる場合、何らかの病気が潜んでいる可能性もあります。AさんやBさんのように「私の症状は更年期だ」と自己判断してしまうことで、病気を見逃してしまうことにもつながりかねません。こうしたリスクを避けるためにも、症状がある場合はまずは医療機関を受診することをおすすめします。

更年期前の30代は【ホルモンバランス】を整えよう

ホルモンバランスを整えることで得られる効果

ホルモンバランスを整えることで、疲れやすさやイライラ、生理不順などの症状が改善するだけでなく、全身の健康と幸福感も向上します。以下に、ホルモンバランスを整えるためのセルフケアをお伝えします。

バランスの良い食事

繊維質豊富な食品、オメガ3脂肪酸を含む魚類、鉄分やビタミンB群が豊富な緑黄色野菜を積極的に取り入れましょう。砂糖や添加物の摂取は控えめにしてください。ビタミンやミネラルを食事から十分に摂取できない場合は、サプリメントも有効です。

エクオール含有食品

大豆由来のエクオールは女性ホルモンに似た働きがあります。大豆イソフラボンを豊富に含む納豆や豆腐、きな粉などを毎日の食事に取り入れましょう。

定期的な運動

適度な運動はストレスを減少させ、ホルモンバランスを整えます。週に数回、心拍数を上げる運動と筋トレを組み合わせて行うと効果的です。

ヨガやピラティスは心身の緊張を解きほぐし、ホルモンバランスを整えるのに役立ちます。

十分な睡眠

毎晩7~8時間の良質な睡眠は、ホルモン調整に欠かせません。寝る前にスマホを見る時間を減らすことも睡眠の質の向上につながります。

ストレス対策

ストレスはホルモンバランスに大きな影響を与えます。瞑想、深呼吸、趣味の時間を設けるなどして、日々のストレスを効果的に管理しましょう。

要チェック!30代での閉経は「早発閉経」として治療が必要

30代で更年期の症状を感じている人の中には、卵巣機能不全により早期に閉経してしまうケースもあります。40歳未満での閉経は早発閉経と診断されます。早発閉経は骨粗しょう症や動脈硬化、うつ病などのリスクが高まるため、ホルモン補充療法(HRT)が必要です。

30代で生理不順やホットフラッシュなどの症状があるなら、一度、婦人科や更年期外来の医師に相談することをお勧めします。

※卵巣機能不全:卵巣が正常に働かない状態

不調や生理の乱れを感じたらまずは受診&セルフケア

30代の女性が経験する生理不順やイライラは、多くの場合、ホルモンバランスの乱れが原因であることをお伝えしました。

ただし、症状の背後には病気が隠れていることもあるので、まずは婦人科や更年期外来で相談してみてください。病気がないのに体の不調を感じるなら、ホルモンバランスを整えるセルフケアが効果的です。積極的に実践していきましょう。

参考)

  1. Yasui T, Hayashi K, Mizunuma H, et al. “Factors associated
    with premature ovarian failure, early menopause and earlier
    ↩︎
  2. 正常な生理(月経)の目安を教えてください! . 日本産婦人科学会 .  https://www.jaog.or.jp/qa/youth/qashishunki5/. (参照2024-4-15) ↩︎
若年性更年期障害 プレ更年期 プチ更年期 そんな病名ありません 30代で更年期?自己判断は危険!

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この記事を書いた人

十枝明日香のアバター 十枝明日香 【看護師】

総合病院にて13年、職場を変え乳腺外科クリニックで勤務。その間、婦人科疾患の手術と重症妊娠悪阻により入院を経験。3児の子育て中で、自分自身が女性のキャリアや働き方の壁に突き当たり、仕事・育児・夫婦関係について、楽しみながら模索している最中。女性特有の悩みに左右されることなく、日々ご機嫌さんに過ごすことが当面の目標。

このコンテンツは、病気や症状に関する知識を得るためのものであり、特定の治療法や専門家の見解を推奨したり、商品や成分の効果・効能を保証するものではありません。

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