アーユルヴェーダでの不眠症(ニドラナシュ)対策【前編】
アーユルヴェーダ講師MAMIさんの今回のテーマは「不眠症」。前回ご紹介した「自律神経の乱れ」からつながっている症状です。
前編の今回は、アーユルヴェーダ的不眠の原因や、体質による不眠の違いをご紹介していきます。
前回の『自律神経とアーユルヴェーダ』の中にもあった、自律神経の乱れの原因でもある「不眠」。
寝つきが悪い、布団に入ると目が冴えてしまう、朝起きるのが辛い、夜目覚めてしまうなど睡眠の質が落ちると徐々に自律神経の乱れ、更年期やPMS、不妊の原因にもつながっていきます。
アーユルヴェーダでは「身体は毎秒、毎分失われていくもの」と定義します。それ故に「身体は補っていかなくてはならない」のです。では何を補うのでしょうか。
それは「食事」「睡眠」「純粋意識」の三つであると説いています。
人は誰もが睡眠を取ります。睡眠は心の安らぎとなり、明日への活力を蓄える大変重要な要素なのです。
一般的な不眠症とは
入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒など長期に渡って睡眠に問題がありそのために日中に倦怠感、意欲低下、集中力低下、食欲低下など不調が現れ、日常生活に支障をきたし生活の質が低下することをいいます。
アーユルヴェーダでの不眠症とは
アーユルヴェーダでは睡眠を二ドラと呼び、不眠症を『ニドラナシュ』と呼びます。二ドラは、心身を再生してメンテナンスするための本質的現象です。
しかし、不摂生な生活、ストレス、運動不足などにより二ドラが乱れてくると不眠症(ニドラナシュ)となります。
不眠症の原因とは
不眠の主な原因はヴァータドーシャが悪化することです。ヴァータは流動性の性質を持ち、その性質が過剰になると眠りが浅い、眠れない状態となるのです。
成人の睡眠時間は6〜7時間が正常と考えます。その他睡眠の状態により、ピッタ、カパの影響もあります。
ヴァータドーシャの乱れがどのように不眠に影響しているのか、要因となるものがいくつかありますのでみていきましょう。
※ヴァータについて
ヴァータとはアーユルヴェーダにおいての3つのドーシャ(体質)のひとつ。
アーユルヴェーダでは私達の体、精神、自然界を空・風・火・水・地の5つの元素から構成されていると考え、この5つ元素の組み合わせによって「ヴァータ」「ピッタ」「カパ」という3つの体質に分けられます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ヴァータドーシャの乱れによる不眠の乱れの要因はこちらが考えられます。
肉体的要因
・夜中のこむら返りや神経痛
・ガスでお腹が張る
・肩こり、腰痛など
・乾燥による痒み
・冷え(カパドーシャの人にも関わる)
精神的要因
・不安、心配
・悲嘆
・別れ
・怒り←(主にピッタドーシャの人)
・情熱←(主にピッタドーシャの人)
など
生活スタイル、環境の原因
・引越し、転職、仕事などでの距離移動(電車、飛行機、車など)
・運動のし過ぎ
・喫煙
・不規則な食生活
・アルコール、カフェイン
など
ドーシャごとの眠りの質によるもの
・ヴァータ体質:眠りが短く、浅い 怖い夢をみる
・ピッタ体質:興奮して寝られない 夢をよく見る
・カパ体質:熟睡しすぎる
ドーシャ(体質)による睡眠の違い
ヴァータドーシャ
眠りの質が変わりやすく、睡眠時間が短い(4〜6時間)浅い睡眠になりがちです。
エキサイトしやすく、全力を尽くしてしまうので睡眠を補うためにお昼寝やリラクゼーション、瞑想の時間を作ると良いです。
騒音、汚染、過密、心的ストレスなど心の影響をとても受けやすいので、質の高い休息の取り方を心がけましょう。
温かいオイルマッサージ、香りの高いお風呂にゆっくり入り早く眠りにつくことは、忙しく混沌した生活の中でリラックスし、活力を蓄え、良い外見を保つためにおすすめの方法です。
ピッタドーシャ
睡眠は浅く、寝つきが良く、寝起きが良い人が多いとされています。また、非常に短い睡眠時間が続いても数日は耐えられるタイプです。
ピッタの人の達成することに対する非常に強い意思と関心が睡眠の質と量、両方を阻害することもあり得ます。
自分の活動を抑制し、物事を達成するための時間を十分に作る必要があります。
冷たいシャワーを浴びて甘い飲み物を飲み、月明かりのもとで瞑想するなど、高くなりすぎたピッタエネルギーを解きほぐすと良いでしょう。
カパの人
ありのままに休み、活力を取り込む事を好みます。眠れないと悩むことは滅多にないです。
8時間以上の長い睡眠を好み、目覚めは爽快ですが眠りすぎないように注意が必要です。
眠りすぎることで体重増加を招いたり、精神的に重苦しい状態に陥ったりするかもしれません。
早寝早起きは、カパの人が健康で綺麗になるためにとても良い習慣です。
睡眠不足と肥満の関係
睡眠時間と体重の関係の調査では、睡眠時間が5時間以下の人で50%に肥満傾向がみられたという報告があります。
睡眠時間が短い人ほど肥満や糖尿病のリスクが高いと言われています。
なぜならホルモンが関係しているからです。
睡眠時間が短いとレプチンという食欲を抑制するホルモンが減少し、反対にグレリンという食欲増進ホルモンが増加します。
そのため、空腹を感じ塩分の高い食べ物、こってりとした高カロリーの物を夜間に摂取してしまい肥満へとつながります。
また、睡眠不足による日中の眠気で活動力の低下がより代謝を下げる原因となります。
アーユルヴェーダでは6〜7時間の睡眠が正常と考え、4時間以下、8時間以上の睡眠はドーシャの乱れ、不調になるリスクが高くなります。
ホルモンと不眠、食欲増加の関係
グレリンの放出が増加するとレプチンが減少します。また、グレリンが増加しレプチンが減少することにより、空腹感が増し食欲増加につながります。
「オレキシン」というホルモンは覚醒コントロールをするとともに食欲を亢進する働きがあるため、睡眠不足により食欲が亢進します。
グレリンとは
胃から分泌される食欲ホルモンであり、食欲亢進、脂肪蓄積などの生理作用があり、肥満、糖尿病などリスクが高くなる。
レプチンとは
脂肪組織から分泌される抑制ホルモン、エネルギー消費の亢進をもたらす抗肥満ホルモンです。
体重調整作用以外にも糖質代謝調整、性腺機能調整、血圧調整作用もあります。
後半ではより良い睡眠にしていくためにするべきことを、お伝えしていきます。