更年期の「卵巣の腫れ」は要注意!がんのサインかも

「卵巣がはれている」と言われたらどうしたらいい?
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どの年代の女性にも起こりうる「卵巣の腫れ」。自覚症状はほとんど現れず、検診などで指摘されて戸惑ってしまう女性も少なくありません。

更年期以降にみられる卵巣の腫れは、大きな病気が隠れている場合もあるので注意が必要です。

今回は、更年期に卵巣が腫れる原因や考えられる病気、対処法についてお伝えします。

目次

「卵巣が腫れてますね」と言われたけれど

真理さん(49歳仮名)は、婦人科の検診で「卵巣が少し腫れていますね」と言われました。

特に自覚している症状もなく、痛みもなかったため、思いがけない指摘に動揺してしまいました。医師からは「更年期の影響で一時的に腫れることもある」と説明されましたが、今まで婦人科の病気や異常も指摘されたことがなく、不安が募っていきました。

「何か悪い病気だったらどうしよう……もしかしてがん?」と考えると気持ちが落ち着かず、ついスマートフォンでいろいろ調べては、かえって怖くなるそんな日々がしばらく続いています。

卵巣の腫れ《3つの原因》

卵子を貯蔵・排卵したり、女性ホルモンを分泌したりして、女性の体を支えている卵巣。その大きさは通常2〜3cmくらい、更年期から閉経を迎える頃には半分くらいの大きさになります。

しかし、何らかの原因で卵巣が腫れてしまうことがあります。腫れが軽度の場合は自覚症状が現れにくいのですが、4〜5cm以上の大きさになってしまうと、卵巣の根元がねじれてしまい急激な腹痛におそわれる「茎捻転」となる可能性もあるので注意が必要です。

卵巣が腫れるメカニズムはまだわかっていないことが多いのですが、主な原因は3つあります。

1.腫瘍

卵巣が腫れる原因の一つは、腫瘍ができることによるものです。卵巣の腫瘍には触るとやわらかいタイプコブのように硬いタイプがあります。

やわらかいタイプの卵巣のう腫は、卵巣の腫瘍のうち8〜9割を占めていて、良性のタイプです。卵巣のう腫とは、卵巣の中に古い血液、脂肪、水などが溜まってしまう状態。その内容物によって「チョコレートのう胞」「成熟のう胞性奇形腫」「粘液性のう胞腺腫」「漿液性のう胞腺腫」に分けられます。

卵巣の腫瘍は良性が多いとはいえ、悪性の可能性がないわけではありません。触ると硬いタイプの充実性腫瘍は、卵巣の腫瘍の1~2割を占めています。腫瘍の性質によって、「悪性(卵巣がんを含む)」「良性」、良性と悪性の境界である「中間性」に分けられます。

2.女性ホルモンの影響

月経周期にともなって、卵巣が腫れてみえることがあります。

月経のサイクルでおよそ1カ月に1回、排卵が起こります。そして、排卵した後の卵胞でつくられるのが黄体と呼ばれるもの。黄体の中に、まれに液体が溜まってしまうことがあります。これが黄体のう胞と呼ばれる状態で、卵巣が腫れてみえる原因の一つです。

更年期には卵巣の働きが弱まり、女性ホルモンの分泌が変動しやすくなることから、卵巣の腫れがみられることも少なくありません。また、閉経を過ぎてしばらく経ってからも、女性ホルモンがわずかに分泌されているため、卵巣が腫れる可能性があります。

3.卵巣の炎症

卵巣が腫れるもう一つの原因に、卵巣の炎症があります。卵巣の炎症は、卵管で起こっていた炎症が卵巣まで広がってしまった状態であることが多いと言われています。

卵管で起こる炎症は、性交渉によって感染するクラミジア淋菌が原因になることがほとんどです。

これらの性感染症は初期症状が起こらないことも多く、気づいた時には症状が進行しているケースがあります。

【更年期の卵巣の腫れ】で考えられる病気

女性ホルモンバランスが乱れやすい更年期では、卵巣の腫れが思わぬ病気のサインかもしれません。更年期に起こる卵巣の腫れで考えられる病気には、次のようなものがあります。

子宮内膜症性のう胞(チョコレートのう胞)

子宮内膜症性のう胞(チョコレートのう胞)は、子宮内膜に似た組織が卵巣の中にできる子宮内膜症の一つ。のう胞の中に月経血のようなチョコレート色の液体をため込むのが特徴です。

20~30代で発症することが多い病気ですが、更年期の女性にみられることもあります。チョコレートのう胞は一般的には良性の腫瘍です。しかし約1%が悪性化して卵巣がんになるケースがあるので、卵巣の状態を定期的にチェックすることが大切です1

粘液性のう胞腺腫

粘液性のう胞腺腫は、ネバネバ・ドロドロした液体が溜まる卵巣のう胞の一つまれにがん化することもあります。閉経後の女性にみられることが多い腫瘍です。

急激に大きくなることがあり、茎捻転による激しい腹痛を起こすおそれがあります。

卵巣がん

卵巣がん40〜50代で急激に増え始めるため、更年期世代の女性は注意すべき病気です。初期の卵巣がんは自覚症状が現れにくく、気づいた時には進行しているケースが多くなっています。進行すると、お腹の臓器を覆う腹膜などに転移して、がんが広がりやすいのも特徴です。

卵巣がんは、早期診断・治療につなげられるよう定期的な婦人科検診が大切です。また、次のような症状が気になる場合は、早めに婦人科で相談しましょう。

  • 服のウエストがきつくなる
  • 下腹部にしこりが触れる
  • お腹が張る
  • 不正出血
  • 下腹部や腰の痛み
  • 頻尿や便秘

その他

更年期の女性では、上記以外の卵巣の腫瘍がまれに生じる場合もあります。

また、腹腔内の腫れや液体が溜まった状態が一見卵巣の腫れにみえる偽のう胞が生じるケースもあります。これまでにお腹の手術を受けたり性感染症にかかったりしたことがある人に多く、傷が治る過程で生じる癒着などが原因になると言われています。

卵巣の腫れは自然に治る?経過観察で大丈夫?

卵巣の腫れは無症状のことが多く、自分では気づきにくいですが、自然に治るケースもあります。

一般的に、月経周期や更年期で女性ホルモンが変動することによる卵巣の腫れであれば、しばらく様子をみて問題ありません。次の月経が起こったり、女性ホルモンの分泌が落ち着いたりすると、卵巣の腫れは自然に治まることが多いです。

それに対して、卵巣の腫瘍が原因で腫れている場合は、できるだけ早い診断や治療が必要です。卵巣の状態をチェックするだけでなく、その後の治療方針についても、婦人科でしっかりと相談しましょう。

更年期・閉経後も卵巣は定期的にチェックを

更年期にみられる卵巣の腫れは、女性ホルモンの変動によって起こる場合もありますが、卵巣の腫瘍やがんなどの病気が隠れている可能性があります。

卵巣の病気は、初期では自覚症状がほとんど現れず、気づかないうちに悪化しているケースが少なくありません。

更年期以降、とくに閉経した後は婦人科受診から足が遠のいてしまうことも。更年期以降もすこやかに過ごすためには、体のことをなんでも相談できるかかりつけの婦人科を持ち、卵巣の状態を定期的にチェックしましょう。

出典

  1. 日本産科婦人科学会, 卵巣の腫瘍とがん ↩︎
「卵巣がはれている」と言われたらどうしたらいい?

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この記事を書いた人

榎本真美子のアバター 榎本真美子 【看護師・保健師】

看護師・保健師
女性の健康総合アドバイザー
薬膳コーディネーター

都内総合病院の婦人科・乳腺科などに勤務後、女性総合診療のクリニックに従事。女性ホルモンと体・心のつながりについて理解を深め、さまざまな患者さんをサポートする。
その後、家族の転勤に伴い海外生活を経験。
健康管理やセルフケアの大切さを実感し、看護師ライターとして健康に役立つ情報発信に努めている。

このコンテンツは、病気や症状に関する知識を得るためのものであり、特定の治療法や専門家の見解を推奨したり、商品や成分の効果・効能を保証するものではありません。

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