更年期「生理痛がひどくなった」原因&受診の目安

「もう50代なのに、なんでこんなに生理痛がひどいの?」
「若い頃より痛みが強くなってる気がする……おかしいのかな」
更年期に入ると、多くの女性は「そろそろ生理も楽になるはず」と思いがちです。しかし実際には、閉経前に生理痛が重くなったと感じる方は決して少なくありません。
もうすぐ閉経するはずだから……とつい我慢してしまう方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、更年期に生理痛がひどくなる理由と、病院に行くべき症状の見分け方を解説します。
自宅でできる痛みのやわらげ方も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
閉経前は生理痛が軽くなるって聞いたのに……
55歳の幸穂さん(仮名)。ここ数年、生理の間隔が不規則になり「そろそろ閉経かな」と感じています。
まわりの友人たちは「閉経前は生理痛が軽くなるものよ」と話していたのに、幸穂さんの体験は真逆でした。最近、腹部の鈍い痛みや腰の重だるさが以前より強く出ることが増えたのです。
「この年でまた生理痛に悩まされるなんて…」
身体の変化が読めず、これが更年期による一時的なものなのか、それとも病気のサインなのか。幸穂さんは不安を抱えながらも、「更年期だから仕方ない」と自分に言い聞かせて我慢していました。
40代・50代の生理痛が重くなるのはなぜ?
更年期に生理痛がひどくなる原因は、大きく分けて2つあります。ひとつはホルモンバランスの乱れ、もうひとつは婦人科系の病気です。
ホルモンバランスの乱れ
更年期のホルモンバランスの乱れが、生理痛を重くする原因のひとつです。
40代後半から50代前半にかけて、卵巣の機能は徐々に衰えていきます。すると、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の分泌が不安定になり、月によって大きく変動するようになります。
エストロゲンは子宮内膜を厚くし、プロゲステロンは子宮の収縮をコントロールしています。これらのホルモンが安定していた若い頃と違い、更年期では毎月のホルモン量がバラバラになるため、子宮の働きや自律神経のバランスも乱れやすくなります。
その結果「先月は楽だったのに、今月はすごく痛い」といった、予測不能な痛みに悩まされるのです。
婦人科系の病気
生理痛がひどくなる理由として、更年期の女性に多い婦人科疾患が隠れている可能性もあります。
| 病名 | 特徴 |
| 子宮腺筋症 | 子宮内膜の組織が子宮の筋層に入り込み、生理のたびに強い痛みを引き起こす |
| 子宮筋腫 | 子宮の壁にできる良性の腫瘍で、出血量の増加や下腹部の圧迫感をともなう場合がある |
| 子宮内膜症 | 子宮の内膜組織が子宮以外の場所で増殖し、強い生理痛の原因になる |
| 子宮内膜ポリープ | 子宮内膜にできる良性のイボ状の突起で、不正出血や痛みを起こすことがある |
これらの病気は、本来なら生理以外のタイミングで不正出血することが多いのですが、更年期では生理周期そのものが不規則になるため、「これは生理?それとも病気の出血?」と区別がつきにくくなります。
だからこそ、痛みの質が変わった、出血量が異常に増えた、パターンがいつもと違うなどと感じたら、婦人科で原因をはっきりさせることが大切です。
更年期の生理痛《3つの特徴》
更年期の生理痛には、若い頃とは違う以下の3つの特徴があります。
- 生理周期が不規則で予測が難しい
- 生理痛が長引く
- 痛みの質や強さが毎回違う
当てはまるものがあれば、今感じている痛みは更年期の影響かもしれません。
1.生理周期が不規則で予測が難しい
更年期の生理は「いつ来るかわからない」のが特徴です。
ホルモンの分泌が不安定になる更年期では、生理周期が大きく乱れます。今月は25日周期だったのに、次は40日空く、その次は20日後といったように、バラバラになることも珍しくありません。
生理痛も予測できないタイミングで襲ってくるため、「明日は大事な予定があるのに」と困ることも増えるでしょう。外出や仕事の調整が難しくなり、精神的なストレスも大きくなりがちです。
2.生理痛が長引く
通常なら3〜7日で終わる生理が、更年期ではダラダラと続くことがあります。
ホルモンバランスが不安定だと、子宮内膜がきれいに剥がれ落ちず、少量の出血が長く続きやすいのです。そのため、痛みも生理期間中ずっと続いたり、出血が止まったあとも下腹部の違和感が残ったりします。
「いつまで続くんだろう」という不安と、長引く痛みのストレスで、日常生活に支障が出ることも少なくありません。

3.痛みの質や強さが毎回違う
「前回は楽だったのに、今回はこんなに痛い」という風に、痛みに波があるのが、更年期の生理痛の特徴です。
更年期のホルモンは、閉経に向かって全体的には減っていきますが、その過程で乱高下を繰り返します。毎回の生理でエストロゲンの量が一定ではないため、痛みや出血量も月によって大きく変わるのです。
予測が立たないため、鎮痛薬の準備やスケジュール管理も難しくなり、仕事や家事への影響も大きくなります。
要注意!更年期の生理痛で受診すべきサイン
「更年期だから仕方ない」と我慢していると、病気のサインを見逃してしまうことがあります。これから解説する症状が1つでも当てはまったら、早めに婦人科を受診してください。
出血量が多い・不正出血がある
昼用ナプキンを1〜2時間で替えるほどの経血量は、多すぎる異常な出血(過多月経)であると捉えましょう。
レバー状の血の塊が多く出る、夜用ナプキンでも間に合わない、といった状態が続く場合はとくに要注意です。こうした過多月経には、子宮筋腫や子宮内膜症など、婦人科疾患が隠れている可能性があります。また、大量の出血が続くと貧血のリスクも高まります。
生理以外のタイミングで出血がある不正出血も見逃せないサインです。更年期では生理周期が乱れるため「生理が早く来ただけ」と思いがちですが、子宮や卵巣の病気のサインである可能性もあります。
鎮痛薬が効かない、日常生活に支障が出る
市販の痛み止めを飲んでも治まらない、仕事や家事に集中できないような日常生活に支障が出るほどの痛みがある場合は、子宮内膜症や子宮腺筋症といった病気の可能性も否定できません。
受診の際は、「いつから痛むか」「どこがどのように痛むか」「どんな姿勢で楽になるか」などをメモしておくと、医師に正確に伝えられ、診断もスムーズに進みます。
貧血症状や発熱をともなう
ふらつきや動悸、立ちくらみ、微熱が続く場合、出血や炎症といった体の過剰反応かもしれません。
なかでも貧血の症状は、更年期症状(疲れやすさ、息切れ、集中力の低下など)とよく似ています。そのため「更年期だから仕方ない」と軽視してしまい、実は貧血が原因だったというケースもあります。
また、微熱が続く場合は、出血や婦人科系の炎症に身体が反応している可能性もゼロではありません。
「更年期の影響だろう」と決めつけず、これらの症状がある場合は婦人科で検査を受けることをおすすめします。
更年期の生理痛をやわらげるセルフケア
「病院に行くほどではないけれど、痛みをなんとかしたい」といったときに試していただきたいセルフケアをご紹介します。
身体を温める(腹巻・入浴など)
身体を温めることで血流がよくなり、子宮の緊張がほぐれて痛みが和らぎます。
とくに効果的なのは、下半身を温めることです。腹巻やカイロ、湯たんぽなどを活用して、お腹や腰を温めましょう。38〜40度のぬるめのお湯にゆっくり浸かると、身体の芯から温まります。
冬はもちろん、暑い季節も冷房による冷え対策として、就寝時に薄手の腹巻をつける、足首を冷やさないように靴下を履くなど、小さな工夫を続けてみてください。
血流を促すストレッチや軽い運動を取り入れる
身体を動かして骨盤周りの血流を良くすることも、痛みの予防に効果的です。
おすすめの運動は、以下のとおりです。
- ウォーキング、ジョギング
- ヨガ
- 水泳、水中歩行
- サイクリング
「運動する時間がない」という方は、1日10分の散歩から始めてみましょう。運動量を多くするよりも、無理なく続けられる範囲で習慣にすることが大切です。
ストレスケア・睡眠の質を高める工夫をする
ホルモンバランスと自律神経は深くつながっているため、ストレスが多いと痛みを強く感じやすくなります。また、睡眠不足は女性ホルモンのバランスを崩し、生理痛の悪化につながるおそれがあります。
以下を参考に、日常生活で取り入れやすいリラックス・睡眠の質を上げるケアを取り入れてみましょう。
- 就寝1時間前にはスマートフォンやパソコンを見ない
- アロマオイル(ローズマリー、ラベンダー、ヒノキなど)で香りのリラックスタイムを作る
- 毎晩同じ時間に寝る、ストレッチをするなど、就寝前のルーティンを整える
- 温かいハーブティーを飲んでリラックスする
小さな工夫の積み重ねが、痛みの感じ方を変えてくれるかもしれません。自分に合ったリラックス方法を見つけて、毎日の習慣にしてみてください。
更年期の生理痛の変化は身体からのサイン
更年期の生理痛が変わったと感じるのは、身体からの重要なサインかもしれません。
更年期の不調は年齢のせいで片付けられがちですが、適切な検査と治療によって改善できるケースも多くあります。「我慢できる痛みだから」「更年期だから仕方ない」と放置せず、違和感が続くなら婦人科で相談してください。
ひとりで抱え込まず、専門家の力を借りながら、快適な毎日を過ごしていきましょう。
参考文献
「TRULY」LINE公式アカウント
女医や専門家による正しい情報を配信中!






