fermata×TRULY 特別対談 「フェムテックでかっこいいオトナの女性を増やしたい」

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これまでにTRULYでも取り上げている「Femtech(フェムテック)」。Female(女性)とTechnology(技術)を掛け合わせて生まれた言葉で、生理や妊娠、更年期といった女性が抱える様々な健康課題をテクノロジーで解決するサービスやプロダクトのことを指しています。TRULY読者のなかにも、すでに利用している方や興味を持っている方は多いのではないでしょうか?

そこで今回は、フェムテックをはじめ、ウーマンウェルネスに多角的に取り組んでいるfermata株式会社のCEOであるAminaさんに、TRULYのCEO二宮未摩子がお話を伺いました。会社を設立するまでの経緯や現在のフェムテック業界が抱える課題、そして女性たちに伝えたい思いについて対談でお届けします。(以下敬称略)

目次

体について知ることで生き方の選択肢を増やせると感じた

二宮:会社を設立されて、ちょうど1年が経ちましたが、まずはfermataを立ち上げようと思ったきっかけから教えていただけますか?

Amina:もともと公衆衛生について勉強していたので、以前はそういったことに携わる仕事をしていました。ただ、社会的にいいことをしているやりがいや実感はあるのに、仕事のなかにおもしろさを見つけることができないつらさがあったんです。そんなときに、たまたま「卵巣年齢をチェックできる製品」に出会って衝撃を受けたんです。それをきっかけに、一人ひとりが自分の体を知ることで生き方の選択肢を増やせるんじゃないかと思って、考えだしたらワクワクして。この考えをビジネスとしてやってみたいと思うようになったのが最初ですね。

二宮:そのあとはどのように展開されていったのでしょうか?

Amina:実は、「フェムテック」という言葉は知っていても、実際に商品を見たことがなかったので、まずはどんなものがあるのかを知るところから始めました。そこで、フェムテックに携わっている海外の会社を洗い出し、200社以上の会社にメールを送ってコンタクトを取ったんです。

二宮:ちなみに、どういった内容のメールを送られたのですか?

Amina:「あなたの会社の商品を日本で展示したいので、サンプルを送ってもらえますか?」とお願いしました。すると想像以上のサンプルが集まったんです。それを受けて渋谷でフェムテック展示会を開いたんですが、有料のイベントだったにもかかわらず、用意したチケットが完売して予想を上回る多くの方に来場していただき、様々なメディアでも取り上げてもらえることに。その様子を見て、2012年くらいから「フェムテック」という言葉は使われ始めていて、いろんな商品も作られているのに、それがきちんとお客様の届くところになかったんだなと気が付きました。

二宮:確かに、そういうところはあるかもしれませんね。

Amina:せっかく開発者の方々が一生懸命作っても、いろんな規制の壁があって手間もコストもかかって輸入できないことが多いので、まずはこのギャップを埋めなきゃいけないなと。そういったこともあり、マーケットに出すための国とのやりとりのサポートも、fermataで取り組んでいることの一つです。

いま感じているフェムテック業界の課題とは?

二宮:7月には実際に店舗でフェムテック商品を扱う「fermata store in New Stand Tokyo」をオープンされました。反響はいかがですか?

Amina:おかげ様で、幅広い年代の方にお越しいただいています。フェムテック以外の商品も取り扱っていることもあり、男女比は半々くらいですね。これからどうやってもっとたくさんのお客様に来ていただくかをいまは考えています。

二宮:フェムテックは右肩上がりの市場だとは思いますが、女性だけではなく、もっと幅広い人たちを巻き込んでいかないと、なかなか社会には広がっていかないんじゃないかなと。そこはTRULYとしても更年期をオープンにする上での課題だと感じていますが、今後の展開に関してどのように考えていますか?

Amina:いま取り組んでいることはいくつかありますが、ここで大事なのは「感情論になってはいけない」ということ。女性の権利だけを訴えることはしてはいけないと思っています。

二宮:女性が主語になると男性が耳をふさいでしまいますからね。

Amina:そうなんですよね。あと、最近意識していることとしては、「フェムテックや女性特有の悩みについて語ることってタブー視されてるよね」みたいなネガティブな目線で言うのをやめること。それよりも、「更年期にこういうことをしている人がいまのかっこいい女性なんですよ」とか「こういうライフスタイルがいまのトレンドですよ」といったポジティブなメッセージを伝えていきたいなと。

二宮:それはいいことですね。確かに、いまはまだ更年期について恥ずかしくて言えないと思っている女性は多いですが、これは誰にでも起きることであって、人生においてもただの通り道。にもかかわらず、どうしても「女じゃなくなった」みたいに感じてしまう人がいるんですけど、実際には閉経後に楽しんでいる女性はたくさんいますから。なので、そんな風に新しいイメージを作っていくのは大事だと思います。

Amina:たとえば、うちの会社のメンバーで海外から取り寄せた膣トレグッズのサンプルを使った女性がいるんですが、印象的だったのは「いままでは使うのが恥ずかしいと思っていたけど、これを続けたら将来の私はきっといまの私に感謝すると思います」と言っていたこと。そうやって経験することで、早くから膣トレとかをしたほうがいいんだということに気付いていくんですよね。

第一線で働く女性が当たり前な世の中に

二宮:素晴らしいことだと思います。そのうちそれがスタンダードになるといいですね。Aminaさんは長年海外で生活されていましたが、帰国した際に「日本は女性が生きづらい社会」と感じられたとか。どうしてですか?

Amina:私がこれまで住んできたのは、タンザニアやザンビア、イギリス、ドイツなど。そして、私の周りには、第一線で働く女性たちが当たり前のように沢山いました。たとえば、タンザニア時代の友人たちの母は、EUやユニセフなどのODAや国際開発機関の東アフリカのトップとして働いていました。実は、私の母も起業した女性の一人なんですよ。そんな風に、「女性はこうあるべき」というしがらみがまったくない環境で育ってきたので、28歳で日本に帰ってきたときに、それまで感じたことのない“重み”みたいなものが一気に押し寄せてきたんですよね。

二宮:その“重み”とはどんなものでしたか?

Amina:20代後半だったこともあり、結婚したいかどうかとか、仕事を続けたいけど子供も欲しいなどの悩みとかに関してですね。でも、育ってきた環境とは異なる社会構図の日本でいろんなことを経験することが、結果的に自分の興味ややりたい事に目覚めるきっかけになったので、今では貴重な体験だったと思っています。

二宮:日本での環境とAminaさんの今までの海外生活で出会った女性たちを比べて、特に違いを感じるのはどんなところですか?

Amina:海外と日本の女性を一概に比べることは、難しいと思いますが、違いがあるとすれば、日本だと結婚したり子供を産んだら、母の前に一人の女性であること、一人の女性の前に一人の人間であることを忘れがちな人が多いのかなという印象は受けました。それに比べて、ヨーロッパの女性たちは「いくつになっても女でいたい」とか「私はこんな人間です!」と、自己表現をしている人が多いと思います。例えば、70歳でも赤いドレスに赤いリップでハイヒールを履いていたり、思いっきり個性豊かなのファッションセンスを持っている女性は多いですよね。それくらい自分に自信を持っていますし、リベラルな考えを持っている女性も多いかと思います。

実は日本人の女性は貪欲で素直だと思う

二宮:確かに、そういうところは日本人女性には足りないところかもしれないですね。

Amina:欧米の女性は文化的にオープンで積極的である印象はありますが、とはいえそれが必ずしもいいというわけではありません。個人的には、日本の女性はある意味貪欲だなと思うところもありますよ。

二宮:なるほど。「貪欲さ」をどのあたりに感じていますか?

Amina:欧米人が個人主義であるのに対して、日本人の国民性は、全体主義の傾向がありますよね。なので、あまり公にはしていないけれど、本当は知りたいと思っていることがたくさんあって、内に秘めている欲望がすごく強いんじゃないかなと。

二宮:それはありますね。それが爆発したら、フェムテック市場もすごく伸びそうです。それでは最後に、fermataとして今後力を入れていきたいことを教えてください。

Amina:女性が自分のライフスタイルやいろんな条件を入力すると、さまざまなサービスを検索できるようなものを作りたいと考えています。たとえば、20代で子どもを産む人と40代で子どもを産む人とでは、探している情報もサービスもまったく違うように、年齢や環境によっても求めていることは異なりますよね? そんなときに、フェムテックを通じて集約したさまざまなデータを基にしたプラットフォームがあれば、自分に合った情報を見つけることができて安心する方がいるんじゃないかなと。いまの自分と将来の自分をマッチングできるようなものを作りたいと思っています。

二宮:造られた女性の“常識”を変えていく、今まさに変革期なのだと思います。フェムテックを通じて、女性が自由に、かっこよく生きられる社会を実現できるといいですね! 今日は、興味深いお話をありがとうございました。

「fermata store in New Stand Tokyo」では、アプリを見ながらゲーム感覚で骨盤底筋を鍛えられるエルビートレイナー(Elvie)や尿漏れ対策としても使える吸水可能な生理用ショーツなど、さまざまなフェムテック商品が展示販売されています。自分が使う大切なものだけに、実際に目で見て、触れることができるのはうれしいところ。ぜひ、足を運んでみては?

New Stand Tokyo

〒106-0032 東京都港区六本木7丁目2番8号 WHEREVER 1F
月〜木、日:12-19時 / 金:12-20時 / 定休日:火・土

fermata store

プロフィール

Amina Sugimoto

Co-founder / CEO

DrPH/公衆衛生博士

東京大学修士号、London School of Hygiene & Tropical Medicine (英) 公衆衛生博士号取得。東京電力福島原子力発電所事故調査委員会や厚生労働省のヤングプロフェショナルなどのメンバーにも選ばれ、「グローバル・ヘルスの体制強化:G7伊勢志摩サミット・神戸保健大臣会合への提言書」の執筆にも関わる。専門は、国内外の医療・ヘルスケアスタートアップへの政策アドバイスやマーケット参入のサポートなど。

■ 二宮 未摩子(にのみや みまこ)

TRULY Inc. CEO

2007年に大手広告代理店に入社。営業職として通信キャリア、大手エステティックサロン等を担当。入社3年目の妊娠時、働くことが困難なほどの激しいつわりを経験し、女性の心と体は女性ホルモンの影響を強く受けることを痛感する。職場復帰後、社内の開発部門を経て、女性向けの商品開発プロジェクトを発足。2020年6月、女性の更年期や閉経に寄り添うフェムテックサービス「TRULY」を立ち上げる。10歳男児の母。

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