宋美玄さん×TRULY 特別対談 「更年期をもっとオープンに語れる社会に」

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女性ホルモンの変化による更年期や閉経、性の悩みなど、女性の閉ざされた課題に寄り添い正しい情報を伝えたい、そして更年期についてもっとオープンに話せる社会にしたい、そんな思いから始まった「TRULY(トゥルーリー)」。「TRULY」は、年齢と共にそれまでとは変わってくる女性の体の不調や更年期世代の悩みに応えるオンライン相談サービスをメインに、更年期や閉経などの正しい情報を伝えるメディアとしての役割も果たしていきます。

 

そんな「TRULY」立ち上げのタイミングで、産婦人科「丸の内の森レディースクリニック」院長である宋美玄さんに、「TRULY」CEO二宮未摩子がお話を伺いました。「TRULY」立ち上げに至った経緯や、更年期を乗り越えるためのヒントなど、今まさに更年期真っ只中の女性、そしてこれから更年期を迎える女性たちに伝えたいメッセージを、対談のかたちでお届けします。(以下敬称略)

目次

現代女性の生理の回数は昔の約10倍

二宮:宋先生、今日はお忙しい中お時間をいただきましてありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

宋:こちらこそどうぞよろしくお願いします。

二宮:私が宋先生と初めてお会いしたのは確か2年程前のイベントで、そのときに先生が、女性の生理の回数が昔の約10倍になっているとおっしゃっていた話がとても印象的だったんです。戦前の女性は人生で生理の回数が50回くらいだったのが、今は450回くらいになっているって…。

宋:そうなんですよ。皆、生理が毎月来るのは健康だとか、女性の証と思っているかもしれないですけど、生理が毎月来ることに特に健康上のメリットはなくて。

二宮:そうですよね、卵巣を疲れさせているだけというお話がその時もあって、とても印象的でした。それと同時に、自分が女性としてこんなにも自分の体のことを知らないんだと気付かされました。あの時のインパクトが強烈で、その後、社内で女性向けの新規事業を開発しようという取り組みがあったときに、自分自身も女性としての生きかたへの想いがあったので、女性ホルモンや更年期にフォーカスしたサービス「TRULY」を起案し、企画がスタートしたんです。生理や妊娠は徐々に社会課題になってきているのでサービスも増えていますが、更年期に関するものはなくて…。

宋:更年期って本当に負のイメージですよね。女性だったら全員が通る道なのに。

二宮:そもそもの更年期の認識がネガティブな気がします。「更年期」と「更年期症状」と「更年期障害」の違いの理解が曖昧な人も多いです。

「更年期」ってそもそも何?

宋:更年期は成熟期から老年期までの間に女性ホルモンがガクッと減ることが原因で起こるので、女性なら生きていれば誰でも経験するんですけど、そこで生活に支障が起これば「更年期障害」だし、支障が特になければただの更年期ですね。

二宮:そもそも「更年期」と「閉経」の違い(※1)もわからない女性もいると思います。

宋:習う機会もなかったですよね。私は二宮さんより年齢が少し上ですが、私たちの時代は小学生の時に、初潮と子供が生まれる仕組みを学校で習ってそれでおしまいでした。ただ昔と違って、今は生理が来てから20年くらい子供を産まない女性が増えているので、学校ではもう少し現実に即して、生理がきたら、その生理は正常範囲なのか、痛い時はどう対処すればいいのか、といった教育をした方がいいと思います。でもそれどころか、生理の先の妊娠・避妊もきちんと教わらないし、ましてやさらに先の更年期なんて授業で学ぶ機会がないのが現状なんです。

女性は思った以上に女性ホルモンの影響を受けている?

二宮:私、息子が10歳になるんですが、10年前を思い出すと悪阻(つわり)がとても酷くて、妊娠7ヶ月くらいまで続いたんです。会社にも行けなくなって、吐き悪阻でどんどん痩せていって、心も病んで、孤独でした。妊娠したのが入社2、3年目だったので、同期が仕事も恋も頑張っている時に私はゲーゲー吐いている、みたいな(笑)。当時、妊娠と出産とキャリアをセットで考えていませんでした。計画的な出産ではなかったんですが、若かったこともあって前向きな気持ちだったものの、想像以上のダメージにびっくりして。仕事も中断しないとだなんて思ってもいませんでした。結局、2年くらい会社を休むことになったんですが、つわりでこんなに苦しむ人もいると知っていたら、もうちょっときちんと計画していたかなと。女性は、女性ホルモンに支配されている生き物なんだなとその時に痛感しましたね。なので、数年先に更年期が来たときに、また女性ホルモンに影響を受けるんじゃないかと…つわりがトラウマのようになっているので、ビクビクしているところがあるのが正直な気持ちです。

宋:そうだったんですね。

二宮:なので「TRULY」は、これから女性がもっと生きやすい社会になるためにも、女性なら経験する更年期や女性ホルモンに関する悩みや課題がもっとオープンに話せるようになったらいいのに、という思いが大きいです。あと、自分が当時からもっと女性の体の仕組について知識があったら、悪阻で苦しんでいた時や生理痛がひどかった時、パートナーにその原因をうまく説明できて、もっと理解してもらえたんじゃないかなという思いもありますね。正しい知識を女性たちに知ってほしいです。

出産のタイミングは「いつ」じゃなく「相手」?

宋:これは世界共通ですが、女性がキャリアを積む時期と、妊娠・出産に適した時期はモロかぶりなんです。それを多少ずらして、キャリアを後回しにするのか、出産を後回しにするのか、それとも両立するのか。多分皆、「今妊娠したら職場に迷惑がかかる」って言いますけど、でも会社に2年丸々いなくてもいい時期なんてやってこないんだから(笑)。

二宮:確かにこないです!(笑)

宋:計画的にって言っても、今の日本のシステムで、女性が家事も育児も全部背負い込む場合はなおさら、「妊娠するなら今!」って思うときはやって来ないし、やってきたとしてもその時に自分の体が妊娠できるかわからない。その時に子供を一緒に作ろうって言ってくれる相手が隣にいる保証もないじゃないですか。

だから二宮さんみたいに、見切り発車も一つの手だと思いますよ(笑)。37歳でだいぶ手の離れたお子さんがいるんだから、私からしたら羨ましいです(笑)。私は35歳と39歳の時に子供を産んでいるので、ボロボロです(笑)。なので、早くても遅くても、いつが自分にとって出産にベストのタイミングなのかは永遠にわからないですよね。

二宮:確かにいつ産んだとしても、結局ラクな時はないですね。

宋:以前、学園祭に講演で行ったら、学生さんに「いつ出産するのが良いですか?」って聞かれたんですけど、「いつじゃない。相手だ」って答えました(笑)。自分一人でやろうとするからその学生さんみたいな発想になるけど、自分事として分担してくれるパートナーがいるなら、いつ産んでもそこまで大変ではないと思います。

二宮:確かにそうですね。

更年期障害の治療費は意外と安い

二宮:宋先生のクリニックにも、更年期の相談に来る患者さんはいらっしゃるんですか?

宋:結構いらっしゃいますよ。私がよく言っているのは、更年期は、「更年期障害」と診断されれば保険がきくので、たいして医療費がかからないんです。そして診療に来る人は辛いから来るわけだから、大抵更年期障害と診断されます。

二宮:では更年期障害と診断されれば、HRT(ホルモン補充療法)も保険が効くんですね。

宋:そうです。更年期障害の治療法の一つであるHRTは、女性ホルモンを補充することで症状を緩和します。副作用で少し出血が続きますが、効果は早ければ1、2週間で出てきますよ。漢方薬などに比べると即効性があるんです。

二宮:そんなに早くラクになるんですね!

宋:ただ、特に今の50代あたりの人たちは、西洋医学の薬に対して不信感がある場合が多いようで、更年期も生活習慣で乗り切ろうとか、自然に治そうという人が多いのを感じますね。生理痛が辛い時の痛み止めすら我慢する人もいるけど、ピルとかホルモン剤をなるべく使わず自分の体を整える、ヨガやハーブ、自然療法で自然に治したい、っていう方向性だったんですよね。

二宮:漢方も副作用ありますよね?

宋:副作用はどんな薬にでもあります、よく飲まれている風邪薬や痛み止めにでも。

二宮:日本でHRTを取り入れている女性の割合が、海外に比べてすごく少ないっていう記事を読んだことがあります。桁が違ってました。

宋:ピルの使用率も欧米に比べると桁が違いますからね。更年期はその世代の女性は皆が経験します。ポイントは、更年期がきたら卵巣機能が引退するから、エストロゲン(女性ホルモン)の少ない人生を送らないといけないということ。(ホルモン補充などをしないと)エストロゲンが枯渇する状態を我慢しながら、残りの人生を生きていかなきゃいけないってことです。

正しい知識を得るために

二宮:30代後半、40代から事前にできる更年期対策はありますか?

宋:あんまりないんですよね。強いて言えば、事前に何かというよりは、更年期がきたら、医師と相談しながらその時に対処すればいいと思いますよ。

二宮:個人的には今回いろいろ勉強して、もう少し女性のライフステージの中で、体の変化をきちんと知ることが大事じゃないかと思いました。あと病院に行く敷居を下げる。病院に行くタイミングって、どこまで耐えるべきなのか、この程度の不調で行っていいのかと悩んでいる人も多いと思うんです。特に婦人科は、痛そうとか恥ずかしいというイメージもあるかもしれないし。

宋:最近は産科がない婦人科だけのクリニックも増えているのでそういう婦人科専門のところを選んだり、あとは大きい病院じゃなくて、小さい所の方がまずは行きやすいかもですね。

二宮:そういうのも含めて、オンライン相談があると、まずはオンラインで相談して、それ以上の診察が必要なら「行ってらっしゃい」って背中を押してくれるようなツールになるのではないかと思います。

宋:そうね。あと事前にセルフチェックを自分でやっておいてくれると、病院側もスムーズに対応しやすいですね。

二宮:そうですよね。「TRULY」も、まずはユーザーがセルフチェックを行い、今の自分の状態を正しく理解することを目指しています。自分の体が今どういう状態かをわかっている人は意外と少ないし、そもそも知る機会を失っている気がするんです。宋さんにも監修していただきましたが、「TRULY」には3つの項目で俯瞰して見れるようなセルフチェックがあって、それでも不安や症状が残る人は「TRULY」のチャットで相談し、何か問題がありそうだったら病院に行く。その順を踏むステップが大事だなって思いました。知識がない人にいきなり病院に行けって言っても絶対抵抗がありますよね。

宋:そうですね。どの科に行ったら良いかわからない場合もあるかもしれないですしね。更年期世代の人が、「ここに来たら正しい情報が得られて、セルフチェックもできて、オンラインで相談もできる」という場を「TRULY」で作ったということですね。

二宮:そうです。そしてそれをうまく発信できたらいいなというのが私の思いです。これが届けば、きっと更年期世代の女性たちの助けになると思います!(笑)

宋:皆に届かせるために、何か考えているんですか?

二宮:イベントは考えています。時節柄、オンラインイベントになるかもしれませんが、こういうテーマなので、逆にオンラインの方が参加しやすかったり話しやすかったりして、相性がいいのかなとも思っています。ステイホームの時期もあり、皆さんだいぶオンラインが身近になって慣れてきたと思いますし。

宋:確かにね。

更年期は怖くない!

二宮:最後に宋先生、更年期世代の女性たちに向けてアドバイスなどありましたら一言お願いできますか?

宋:私がよく講演で言っているのは、更年期って、単語だけは皆絶対に知っているじゃないですか。それで、なんとなく背後から更年期というモンスターがやってきて、ある時バッと捕まる、怖い! っていうイメージを持っている女性が多いと思うんですけど、私たち産婦人科医からしたら更年期の病態はシンプルで、卵巣から出る女性ホルモンが減っているから起きるんです。

そして補充できる治療薬もこの十数年でたくさん出てきたし、保険も効くので費用も安い。

なので別にそんな怖がらずに、更年期がきたら治療すれば大丈夫です。過去の病歴によってはホルモン補充ができないという人も中にはいらっしゃいますが、今はある程度、検査も治療法も確立しているので、症状が辛かったらまずは医師に相談して、対処すれば良いと思います。ただ、そういう対処法があることを事前に知っておくことは大事かもしれませんね。

医師から説明を聞くのもいいですし、更年期ライフを送っている人の体験談や、こうやって乗り越えたなんていう記事を読んで、実態を知っておくだけでも助けになると思いますよ。

二宮:確かに「TRULY」立ち上げのために更年期世代の方々にインタビューをした時、皆さん情報が得られないと困っていて、乗り越えた人の経験談を欲しがっている声はたくさんありました。なので「TRULY」はメディアの側面もあるので、そういう体験談も集めて発信していきたいと思っています。宋先生、今日はお忙しい中、有意義なお話をありがとうございました。

宋:いえいえ! 「TRULY」のこれからに期待しています。がんばってください!

※1 「更年期」は閉経前の5年間と閉経後の5年間とをあわせた10年間。「閉経」は医学的には、1年以上月経がない場合に閉経と診断される。

プロフィール

宋美玄(そん みひょん)

 産婦人科女医 医学博士 FMF認定超音波医・性科学者
日本周産期・新生児学会会員
日本性科学会会員

丸の内の森レディースクリニック 院長

子育てと産婦人科医を両立、メディア等への積極的露出で“カリスマ産婦人科医”として、様々な女性の悩み、セックスや女性の性、妊娠などについて女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。

■二宮 未摩子(にのみや みまこ)

TRULY Inc. CEO

2007年博報堂に入社。営業職として通信キャリア、大手エステティックサロンを担当。

入社3年目の妊娠時、働くことが困難なほどの激しいつわりを経験し、女性の心と体は女性ホルモンの影響を強く受けていることを痛感する。

職場復帰後、社内の開発部門を経て、女性向けの商品開発プロジェクトを立ち上げる。2019年「TRULY Inc.」を起業。10歳男児の母。

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