女性ホルモンを増やす【食べ物・飲み物】はある?

「最近、疲れやすくて体調がイマイチだけど、更年期かな……」
40〜50代の更年期になると、卵巣機能が低下することから女性ホルモンの分泌が減り始めます。体の変化にともなって女性ホルモンバランスが乱れやすく、体のだるさやホットフラッシュ・イライラ・不眠などの更年期症状に悩む女性が少なくありません。
家事や仕事、子育てなどで毎日忙しく過ごさなくてはならない中で、「女性ホルモンは食べ物・飲み物で増やせるの?」と考えることもあるでしょう。
そこで今回は、女性ホルモンを増やす食べ物・飲み物についてご紹介します。
女性ホルモンの働き&年齢による変化

女性の体や心を支えるのに欠かせないのが女性ホルモン。この女性ホルモンには「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類があります。
エストロゲンは、卵胞を育てて妊娠に向けて準備するホルモン。それ以外にも、肌や髪のうるおいを守ったり、脳や自律神経に働きかけたりと、女性の健康を支える働きがあります。それに対してプロゲステロンは、子宮内膜を厚くしたり基礎体温を高くしたりと、妊娠の維持に関わっています。
女性ホルモンの分泌のピークは、20台後半〜30台前半。それ以降は少しずつ減少していきます。一般的に45〜55歳頃になると、卵巣の機能が低下するため女性ホルモンの分泌は急激に減っていきます。
とくに、女性の健康に関わっているエストロゲンの分泌が減ると、女性ホルモンバランスは大きく乱れがちに。エストロゲンの分泌が少ない人は、月経リズムや経血量がこれまでと変わってくるだけでなく、ホットフラッシュ・めまい・イライラ・気分の落ち込み・不眠などの不調を引き起こしやすくなるのです。これがいわゆる「更年期症状」と呼ばれるものです。

女性ホルモンを増やす《食べ物・飲み物》はある?
年齢とともに少なくなっていく女性ホルモン。残念ながら、若い頃と同じくらいの分泌量に自然に増やすことはできません。しかし、不足した女性ホルモンを食べ物や飲み物で補うことで、更年期症状をやわらげられる可能性があります。
女性ホルモンを増やすためには、女性ホルモンをつくる材料になる栄養素をとることが大切です。
たんぱく質
まずは、たんぱく質をしっかり摂りましょう。たんぱく質には、大きく分けて2種類あります。
- 動物性たんぱく質:肉・魚・卵・牛乳・ヨーグルトなど
- 植物性たんぱく質:豆腐・納豆など
成人女性の1日の摂取推奨量は50g 1)。1つの食材では1日摂取量を十分に摂れないため、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質のどちらもバランスよく摂取するとよいでしょう。
毎日忙しくて食事バランスが偏りがちという人は、プロテインドリンクや豆乳を飲むのも一つの方法です。また、ビタミンB6とビタミンCを一緒に摂ると、たんぱく質の代謝をサポートしてくれます。
脂質(オメガ3脂肪酸)
脂質(コレステロール)もホルモンの材料になる大切な栄養素の一つ。脂質にはいろいろな種類がありますが、とくに摂取したいのがオメガ3脂肪酸です。必須脂肪酸の一つであり、体内で作り出せないため、更年期世代の女性は意識して摂取しましょう。
<オメガ3脂肪酸が多く含まれる食材>
- エゴマ油
- アマニ油
- 青魚(サバ、サンマ、イワシなど)
- くるみ など
女性ホルモンの働きを「助ける」大豆イソフラボン
大豆イソフラボンは、女性ホルモンの働きをサポートしてくれると注目が高まっています。
大豆イソフラボンを摂取すると、腸内細菌によって「エクオール」という物質が産生されます。このエクオールは、女性ホルモン(エストロゲン)に構造が似ていることから、女性ホルモンに近い働きをしてくれるのです。
そのため、大豆イソフラボンを摂り、不足した女性ホルモンを補うことで、ホットフラッシュや首・肩こりといった更年期症状の改善が期待できます2)。
豆腐や納豆、きな粉などの大豆製品は、たんぱく質と大豆イソフラボンの両方を摂取できるので、更年期女性にはおすすめの食材です。豆乳などの飲み物であれば、家事や仕事の合間や外出先などでもサッと補給できるので、自分のライフスタイルに合わせて取り入れてみてください。

ホルモンバランスを「整える」栄養素
更年期症状はエストロゲンの分泌が減ることだけでなく、それにともなって自律神経のバランスが乱れることも関係しています。そのため、食事などでこれらのバランスを整えることが大切です。女性ホルモンバランスを整える主な栄養素をご紹介します。
ビタミンB群
ビタミンB群には、ホルモンバランスや自律神経を整える作用があります。とくに、ビタミンB6は感情を安定させるセロトニンの合成に関与しています。そのため、イライラや抑うつ感などの心の不調に対しても効果的です。
<ビタミンB6を多く含む食材>
- 赤身の肉
- 魚
- レバー
- バナナ
- いも類 など
ビタミンE
ビタミンEには血行をよくしたり、ホルモンバランスを整えたりする作用があります。そのため、ホットフラッシュや冷えのぼせといった症状をやわらげる効果が期待できます。
<ビタミンEを多く含む食材>
- アーモンドなどのナッツ類
- うなぎ
- たらこ
- アボカド
- カボチャなどの緑黄色野菜
また、果物のクランベリーはビタミンB群・C・Eが含まれているだけでなく、エストロゲンをゆるやかにサポートする作用もあります。

亜鉛・鉄・マグネシウム
亜鉛・鉄・マグネシウムは、ホルモンの生成に欠かせない栄養素です。
それだけでなく、亜鉛はたんぱく質の合成やコラーゲンの生成をサポートして、肌や髪のハリ・ツヤを維持するのに役立ちます。マグネシウムは自律神経のバランスを整えて、気分の浮き沈みやイライラなどを抑えるのも作用の一つ。鉄分は栄養素を体のすみずみまで届けて代謝をよくするだけでなく、女性に多い貧血予防にも役立ちます。
<ミネラル(亜鉛・鉄・マグネシウムなど)が多く含まれる食材>
- 魚介類(カキや小魚など)
- 海藻類
- レバー
- 豆類 など
ただし、一つの食材から栄養素をとろうとすると、栄養バランスが偏ってしまい、あまり効果的ではありません。なるべく多くの食材をバランスよく摂取するようにしましょう。
更年期世代は避けたい食べ物・飲み物
体調が不安定になりやすい更年期世代の女性は、一部の食べ物・飲み物の摂り方には気をつけなければなりません。摂り過ぎると更年期症状を悪化させてしまうことがあるので、注意しておきたい食材についてあらかじめ知っておきましょう。
刺激の強い食べ物
トウガラシなどに含まれるカプサイシンには、交感神経を刺激する作用があります。食べると体温が上昇して、ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ・発汗)を悪化させる可能性も。
普段からホットフラッシュを感じている女性は、刺激の強い食べ物はなるべく控えるようにしましょう。
アルコール・カフェイン
アルコールには血管を広げる働きがあるため、顔の赤みやほてりを引き起こしやすくなります3)。
また、カフェインには交感神経を刺激する作用があるため、摂りすぎると自律神経を乱してしまう可能性も。人によって、ホットフラッシュの頻度や程度が悪化してしまうケースもあるので注意が必要です4)。

精製された糖・炭水化物
精製された糖や炭水化物は、血糖値を急激に上げてしまうことから、更年期女性は注意しておきたい食材です。
血糖値が一気に上昇した後は、急激に下降するため、血糖値の変動がとても大きくなります。このような状態が続くと、インスリンが効きにくくなり、ホットフラッシュを助長してしまうことがあると言われています。
更年期世代の女性は、糖類の多い加工食品やジュース類はなるべく控えたり、白米を玄米に、小麦を全粒粉やオートミールなどに置き換えたりするとよいでしょう。
冷たい飲み物・食べ物
ほてりやのぼせなどの症状があると体を冷やしたくなるかもしれませんが、冷たい食べ物・飲み物の摂りすぎには気をつけなければなりません。
冷たい食べ物・飲み物を摂りすぎると、体の内側から冷えてしまい、血行不良や自律神経の乱れを引き起こします。すると、女性ホルモンバランスが乱れ、更年期症状の悪化につながるかもしれません。
どうしても汗が止まらないときは、冷たいタオルを当てたり、うちわで扇いだりして一時的に体を冷やす程度にしましょう。
食事で女性ホルモンを増やしましょう
今回は、更年期になると不足する女性ホルモンは、食べ物・飲み物を工夫することで補ったり整えたりすることができることをご紹介しました。
更年期に女性ホルモンの分泌が少なくなっていくことは誰にでも起こる自然な変化です。体が大きく変わる時期だからこそ、不安になりすぎないようにしたいもの。そうすることで、気持ちが少しでも楽になるはずです。
ただし、更年期の不調に悩まされてしまっては日常生活に支障が出てしまうかもしれません。毎日の食事を少しだけ工夫すれば、体や心の調子が整っていくでしょう。女性ホルモンを増やす・整える食べ物・飲み物を味方にして、更年期をしなやかに乗り越えていきましょう。
出典:
2. Aso T, et al., J Womens Health 21(1): 92-100, 2012 改変
3. Differential diagnosis of hot flashes, Mohyi D, et al., Maturitas, 27(3), 203-214, 1997.
4. An Exploratory Study on Perceived Relationship of Alcohol, Caffeine, and Physical Activity on Hot Flashes in Menopausal Women, Kandiah J & Amend V, Health, 2010.