「背中がゾクゾク」は更年期症状?寒気の対策を解説!

更年期に差し掛かると、ホルモンバランスの乱れによりさまざまな体調不良を感じることがあります。
その中でも「背中がゾクゾクする」といった寒気や冷えのぼせは、更年期によく見られる症状のひとつです。これらの症状は単なるカゼや体調不良ではなく、更年期特有の体温調節機能の乱れによるものと考えられていますが、その見極めを難しいと感じる方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、更年期にあらわれる寒気や冷えのぼせの理由を解説し、どのように対処すればよいか具体策を紹介します。
「更年期のゾクゾク感」その正体とは?
更年期のゾクゾク感や寒気、冷えのぼせは、女性ホルモンのひとつであるエストロゲン低下による体温調節の乱れが原因です。
卵巣の働きが低下するとエストロゲンが減り、脳は「もっと出して」と指令を送り、女性ホルモンを作ろうとするホルモンの分泌が増えます。1
しかし、働きが低下した卵巣は応じられないため、視床下部は指令を出し続ける興奮状態に。視床下部は自律神経も司るため、この興奮状態が体温や血流の調整にも影響し、寒気やゾクゾク感、顔や胸元のほてり(冷えのぼせ)があらわれやすくなるのです。[1]
【更年期症状の寒気】2つの特徴
更年期になると、身体の一部は冷えているのに顔や胸元がほてる「冷えのぼせ」や、夜間や朝方に強く感じる寒さなど、不思議な感覚に悩まされることがあります。
ここでは、更年期特有の寒気やゾクゾク感の特徴を2つに分けて解説します。自分の症状が当てはまるかチェックしてみましょう。
冷えのぼせ
更年期における「冷えのぼせ」では、エストロゲンの減少により血行が不安定になり、身体の一部は冷えを感じる一方で、顔や胸元にほてりを感じます。
ホルモンバランスの崩れによって血液循環がうまく調整できず、冷えと熱さが交互にあらわれるのが特徴です。冷えのぼせは、身体が冷たく感じると同時に、顔は熱くなるため、不快に感じることがあります。
夜間や朝方にあらわれる冷え
更年期の冷えは、とくに夜間や朝方に強く感じられることがあります。
これは女性ホルモンの急激な変動によって自律神経が乱れ、体温調節機能が不安定になるために起こります。寝ている間や目覚めたばかりの朝に体温が低下しすぎて、寒さを感じてしまうのです。
この冷えは背中や手足の「ゾクゾク感」として自覚しやすく、朝起きたときに寒さを感じる場合は、更年期特有の症状として受け入れつつ、無理のない対策をとることが大切です。
カゼ?インフルエンザ?ほかの症状と見分けるポイント
更年期における寒気やゾクゾク感は、ほかの病気や体調不良と似ているため、見極めが難しい場合もあります。「カゼをひいたかな?」「まさかインフルエンザ?」などと感じることもあるかもしれません。
ポイントを押さえ、更年期によるものかどうかを見分けられるようにしておきましょう。
熱やだるさなどの症状がみられるか
更年期の寒気やゾクゾク感は、通常、熱やだるさをともなわないことが特徴です。
カゼやインフルエンザの場合、寒気とともに体温が上がり、だるさや全身の疲れがあらわれることが多いですが、更年期の症状は体調の急激な悪化はほとんどありません。
もし、熱が上がらず、だるさも感じない場合は、更年期に起因する寒気やゾクゾク感の可能性があります。
更年期症状があらわれているか
寒気やゾクゾク感が単独であらわれるのではなく、ほかの更年期症状と一緒にあらわれる場合、これも更年期による症状である可能性が高いです。
更年期症状として、以下をともなうことがあります。
- ホットフラッシュ(急激な発汗)
- 動悸・息切れ
- 肩こり・関節痛
- 原因のない不安感
- 気分の落ち込み
- 睡眠障害 など
これらの症状と寒気やゾクゾク感がセットであらわれているなら、更年期のサインとして受け止め、適切な対策を講じることが大切です。

更年期のゾクゾク感対策《漢方・生活習慣の改善》
更年期のゾクゾク感や寒気、冷えのぼせは、生活に不快感を与えるだけでなく、睡眠や気分にも影響します。
まずは、体質に合わせた漢方や生活習慣の改善を取り入れて、自然に症状をやわらげられる工夫に取り組んでみましょう。
漢方薬で対策
漢方薬は、更年期の症状をやわらげるためのサポートとして活用できます。とくに、更年期にともなう冷えやゾクゾク感には、以下の漢方薬が処方されることが多いです。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):体力が少なく冷えやむくみが強い場合に、血流を整え全身の冷えをやわらげる
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):比較的体力があり、冷えのぼせや肩こりをともなう場合に、滞った血の巡りを改善する
- 加味逍遙散(かみしょうようさん):イライラや不安、不眠など精神的な不調が目立つときに自律神経を落ち着かせる
いずれも体温調節の乱れをやわらげるサポートとなりますが、体質によって合う処方は異なります。専門家に相談して選びましょう。

生活習慣の改善
生活習慣の見直しも、更年期のゾクゾク感を軽減するためには重要です。
行動 | 期待できる効果 | ポイント |
睡眠環境を整える | 自律神経が安定しやすくなる | 寝室の温度・湿度を快適に保ち、毎日同じ時間に眠る |
軽い運動を習慣にする | 血行を促進し、冷えや寒気を軽減 | ウォーキングやヨガなどの有酸素運動を継続する |
リラックス法を取り入れる | ストレスを減らし自律神経を整える | 深呼吸・瞑想・入浴など、無理なく続けられる方法を選ぶ |
「これならできそう」と思えるものから、少しずつ取り入れてみましょう。
ゾクゾク感で病院に行くべきタイミング
更年期のゾクゾク感や寒気は、多くの場合は生活習慣の工夫やセルフケアでやわらぐことがほとんどです。しかし、以下の場合には、専門医に相談することをおすすめします。
- ゾクゾク感が数日続いている
- 寒気や冷えのぼせで眠れない、仕事に集中できないなど、生活に支障が出ている
- 更年期のせいかどうか見分けがつかない
医師から適切な治療や生活改善のアドバイスを受け、自分に合う対策を見つけましょう。
ゾクゾク感をやわらげて心地よい更年期を
更年期のゾクゾク感は、ホルモンバランスの変化による自然な症状ですが、生活習慣の改善や漢方薬を取り入れることで、軽減できるかもしれません。また、症状が続く場合や悪化する場合は、医師に相談し、適切な対策を取ることが大切です。
少しずつ自分に合った方法で症状を管理し、快適な更年期を過ごしましょう。
参考文献
- 岡庭豊.病気がみえるvol.9婦人科・乳腺外科第4版.2021年.メディックメディア. ↩︎