【アラフォー男性医師の実体験シリーズ Vol.4】医師×薬剤師が語る男性更年期とホルモンケア
TRULYで好評を博している連載の一つと言えば、KARADA内科クリニック渋谷の院長を務める田中雅之先生による「アラフォー男性医師の実体験シリーズ」。
最終回では、TRULY 読者のさまざまな悩みと日々向き合っている薬剤師の岡下真弓さんと男性更年期との向き合い方やホルモンケアの重要性などについて対談をしていただきました。
田中先生は医師としてだけでなく、一人の男性としても健康づくりのためにいろいろと気を付けていらっしゃるそうですが、更年期に対する不安はありますか?
30代後半になり、仕事や子育てなどで日々立て込んでいますが、それでも毎日上手く立ち回り、日常に満たされながら次の日を迎えられているなと感じています。
ただ、「もしコンディションが悪くなったらこの生活が全部できなくなるのではないか…」と考えると不安にはなるので、そうならないようにどうしたらいいかを常に意識しているところです。
そういった悩みについて、同世代の方と話し合うこともあるのでしょうか。
僕は試行錯誤しているところもありますが、肉体的にも精神的にも安定している方かと思います。確かに同世代でも不調を抱えている人は多い気がしています。主な原因は不規則な生活や暴飲暴食によるところが多いのかと思いますが、将来ここに更年期の症状が重なってきたら大変だなと思いますね。
もちろん個人差はありますし、生活のスタイルによってもかなり違いますが、周りを見ると「40歳を越えたら無理はしない」を徹底している人が増えているように感じます。」
岡下さんは、男性からどんな相談を受けることがありますか?
調剤薬局では、「体調が悪い」「最近疲れている」「眠れない」といった悩みが多く、諸症状を解決できるような栄養ドリンクや漢方薬などの問い合わせがよくあります。
確かに、薬局のほうが漫然とした症状に対する相談はしやすいですよね。とはいえ、僕も体調を整えるためのアドバイスをしたいと思ってアンテナは張っていますが、診療所や病院となると患者さんは相談しにくい印象を持っているんだろなというのは実感しています。
薬局に来る方の大半は何かしらの疾患があったり、健康診断での数値が気になったりという方が中心ですが、それ以外に体調不良を訴えている方も非常に多くいます。
そういう方々に対して、薬局でもいいアドバイスができたらいいなと。男性のプライドを傷つけることなく元気づけられたり、うまく受診を勧めたりするのに、いいフレーズがあれば教えていただきたいです。
僕が重要だと考えているのは、相手をサポートさせていただきたい気持ちを忘れずに、支援の選択肢を可能な範囲で提案することです。特にホルモンに関する話は医療従事者でないと分かりにくいこともありますし、伝え方次第で患者さんも捉え方やその受け止め方が大きく変わってくることでしょう。
たとえば、最初は風邪の診察で来た方でも、信頼関係ができるようになると、性感染症のことや身内の健康相談など、プライバシー性の高い相談までしてくれることもありますから。そういう話ができるようになると、医師としてもやりがいを感じますね。そんなふうに、徐々にステップアップしていくことが大事だと思います。
相談してもいい相手なんだということを知っていただけるように、まずは人間関係の構築をしていくことが大切ですよね。
ちなみに、田中先生はお忙しいなかでどのようにセルフケアの時間を捻出されていますか?
僕自身も来たる更年期に向けて、日々トライアンドエラー繰り返している感じです。夜8時以降はあまり食べないようにしようと思っているのについドカ食いしてしまったり、友人との集まりやイベントに行って寝るのが遅くなってしまったり…。でも、人間というのは、誘惑に負けてしまう生き物ですからね(笑)
ただ、コンディションが乱れてしまったあとに整える時間を確保するように調整しているので、やってしまったあとにどうするかということをできるだけ意識しております。
具体的に、ホルモンケアとしてされていることがあれば教えてください。
ホルモンというのは、1日のなかでも変動があるので、大事なのは“適切なタイミング”というのを意識することです。
たとえば、夜寝る前に激しい運動をすると睡眠に負担がかかってしまうので、サウナに行くのであれば夕方以降にしています。そんなふうに、すべきことを時間帯に合わせるように考えることが僕なりのセルフケアですね。
岡下さんが男性にオススメしているケア方法はありますか?
男性ホルモンであるテストステロンは、「みんなで何かを成し遂げるといい効果がある」とも言われています。そのためにご自身がスポーツをするのがベストかなとは思いますが、なかなか難しい方もいるのではないでしょうか。その場合は、何でもいいので好きなものを応援することをオススメしています。そういう気持ちをつねに持つこと自体が大事ですから。
そうですね。あと、僕が重視しているのは持続可能性です。運動したり、食事を節制したりするのは大切ですが、それを1年後も続けられるかというのが重要になってくるので、先を見据えたセルフケアかどうかを意識するように伝えています。ある研究では、3か月続けられると習慣になると言われていますが、僕自身も3か月できると軌道に乗れている実感はありますね。
性格や生活リズムによっても違いますが、私はいくつか選択肢を提案して、そのなかからできそうだと思う方法を一度試してもらうようにしています。薬局の場合は定期的に来られる方も多いので、次回いらっしゃったときにヒアリングをして、ダメだったらできなかった理由を一緒に考えて、他の方法を勧めます。その方がポジティブに生活できるように、ひたすら応援するしかないですね。
ただ、男性更年期に関しては、まだまだ認知が広がらないので難しいところですが、その理由についてはどのようにお考えですか?
男性更年期が認知されていない一番の理由は、発信が少ないというのが大きいと思います。医学の文脈で言えば、女性の更年期に関する研究がたくさんされている一方で、男性にフォーカスした研究はまだまだ少ないですからね。女性の更年期と同様に扱われていない現状を変えるためのアクションが必要だなと感じています。
その通りですね。普段、男性から「老化現象と更年期は何が違うのか?」といった質問をよく受けますが、女性の更年期と比べると男性の場合は疲労の蓄積や老化現象と似ているのでわかりづらいかと思います。しかも、「年だからしょうがない」「がんばってもこれ以上よくならない」と諦めている男性が多い印象です。
だからこそ、インフルエンサーのような方が「更年期の治療をしてよくなった」と発信してくれたらいいなと。男性の間で認知が高まれば、これまでの生活習慣を見直してセルフケアを意識してくれるのではないかなと考えています。
あと、男性は日常生活のなかでホルモンを意識しにくいというのはあると思います。女性の場合は、月に1回月経があるのでホルモンの影響に関する知識がありますが、それに比べると男性はなかなか難しいですよね。そこが男女間における大きな違いかもしれないなと感じています。
では、男性がホルモンを勉強するとしたら、どこから始めるのがよいでしょうか?
男性のホルモンというよりも、まずは女性のホルモンについて勉強するといいかもしれないですね。というのも、そのほうがまとまった資料も多いので、理解しやすいのではないかなと。女性のホルモンには周期があり、年齢とともに変わっていきますが、同じようなことが男性にもあると考えるとわかりやすいと思います。
確かに、まずはホルモンについて知ることが大事ですね。
男性がホルモンのことをわかるようになると、女性に対する理解も増すと思うので、そうなればお互いを認め合い、支え合える社会になるはずです。それはとても素敵なことなので、みんなが周りをサポートできるような環境にしていけるといいですね。
数年前まで男性更年期はまったく注目されていなかったので、単なる老化と片付けられていたかもしれません。でも、自分のなかにあるホルモンに意識を向ければ、相手のこともわかるようになりますし、それによって無駄な揉めごとも減っていくのではないでしょうか。相互理解という観点でも、ホルモンについて学ぶことは非常に重要なことだと思っています。
お話をうかがった先生
監修医師
田中雅之先生
KARADA内科クリニック渋谷 院長
医学博士
日本感染症学会専門医・指導医
日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
日本医師会認定産業医
皆さんの様々な健康の困りごとをしっかり受け止め、共に考えて診療をすすめるため、“渋谷に根ざす”クリニックを目標にスタッフと共に、日々誠実に努力して参ります。