更年期世代は要注意「6つの癌(がん)」気になる症状を見過ごさないで!
更年期世代は心身にさまざまな不調が生じやすくなります。何となく体調が優れない…そう軽く考えていると実は病気が原因だったというケースは少なくありません。
がんも更年期世代で見過ごされやすい病気の一つです。
今回は、更年期世代で特に注意が必要な女性特有の4つのがんと、更年期世代から発症者が増えていく2つのがんをご紹介します。注意すべき症状や注意点について解説しますので、ぜひ参考にしてください。
女性特有のがんに要注意!
更年期になると女性ホルモンの分泌バランスが大きく変化し、さまざまな心身の不調が現れるようになります。また、加齢に伴ってかかりやすくなる病気も増えていくため、若い頃に比べるとより注意深い健康管理が必要となります。
日本人の死因のトップを占めているがんもその一つです。
特に更年期になると女性特有のがんである乳がん、子宮頚がん、子宮体がん、卵巣がんになる人が増えていきます。女性特有のがんの特徴や注意点について詳しく見てみましょう。
【乳がん】40代から急激に増える
乳がんは、乳房の中にある乳腺という組織から発生するがんです。乳がん患者の多くは女性ですが、乳腺は男性にもあるため男性が発症するケースもまれにあります。
乳がんは女性が最もなりやすいがんです。1年間で乳がんと診断される女性は約97,000人で、約15,000人の方が乳がんで命を落としています1)。女性の11人に1人は乳がんになるとされており、女性にとっては非常に身近な病気なのです2)。
乳がんは30~40代頃にかけて急激に罹患率が増えていきます。罹患率が最も高いのは60~70代ですが、更年期世代は罹患率がどんどん増えていくため注意が必要です。
引用: がん種別統計情報 乳房
乳がんになりやすいのはどんな人?
乳がんの明確な発症メカニズムは解明されていません。しかし、乳がんの発症には女性ホルモンの「エストロゲン」が大きく関わっているとされています。
乳がんの多くは、エストロゲンの刺激を受けると発生・増殖が促されると考えられています。エストロゲンの分泌がトータルで多くなる以下のような項目に当てはまると乳がんを発症リスクが高まるため注意が必要です2)。
・初潮年齢が早い
・閉経年齢が遅い
・出産経験がない
・高齢出産
・授乳経験がない
その他にも閉経後の肥満、飲酒習慣、遺伝なども乳がんのリスクになることが分かっています。
また、更年期障害の治療でホルモン補充療法を受けている方は治療のタイプによって乳がんのリスクが高くなる場合があります。
しかし、ホルモン補充療法で乳がんのリスクが高くなるのはごくわずか。慎重に定期的な検査をしながら、つらい症状に合わせて治療を行っていくケースがほとんどです3)。
こんな症状には要注意!
乳がんを発症すると、乳房にしこりができるほか、乳房のくぼみ、乳房の左右差、乳頭や乳輪のただれ、乳頭からの分泌物といった症状が現れるようになります。
しかし、早期段階では自覚できる症状がないことが多く、早期発見のためには定期的な検診が大切です。特に乳がんは早期段階で治療ができれば、5年生存率は99%以上とされており治りやすいがんの一つでもあります。
40歳以上になったら2年に一度は乳がん検診を受けるようにしましょう。
- https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/14_breast.html
- https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/type/breast/cause/
- https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g1/q2/
【子宮頸がん】20代後半から40代にかけて急増
子宮頸がんは、子宮の入り口である「子宮頸部」という部位の組織から発生するがんです。
子宮頸がんは20代後半頃の若い世代でも発症する可能性があるがんです。1年間で約10,000人が子宮頸がんと診断され、約3,000人が命を落としています4)。若い女性が命を落とすこともあるため、「マザーキラー」とも呼ばれています。
子宮頸がんは20代後半から40代にかけて急激に罹患率が高くなり、50代をピークに発症者が減っていくのが特徴です。
引用: がん種別統計情報 子宮頸部
子宮頸がんになりやすいのはどんな人?
子宮頸がんの多くはHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染が原因で発症します。HPVは性行為によって感染するウイルスであり、性行為の経験がある女性の50~80%はHPVに感染していると考えられています5)。
しかし、HPVに感染したからといって必ずしも子宮頸がんを発症するわけではありません。多くはウイルスが自然に排除されていきますが、約10%の方はウイルスが感染した状態が続いてがんを引き起こすとされています5)。
近年ではHPV感染を予防するためのワクチンが小学校6年生~高校1年生相当の女子への定期接種に指定されています。しかし、接種する機会がなかった更年期世代の女性は、誰もがHPV感染している可能性があり、子宮頸がんを発症するリスクがあるのです。
こんな症状には要注意!
子宮頸がんは早期段階ではほとんど症状がありません。進行すると、不正出血(生理以外の出血)、下腹部痛、性交痛、性交時の出血、といった症状が引き起こされます。
子宮頸がんは早期段階で発見できれば5年生存率は95%です。一方で、がんが広がってしまった段階での5年生存率は70%以下4)。いかに早期段階で発見して治療を開始できるかが子宮頸がんを克服するカギとなります。
子宮頸がん検診は20歳以上から2年に1回受けることが推奨されています5)。更年期を迎えても忘れずに検診を受けるようにしましょう。
- https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/17_cervix_uteri.html
- https://www.jsog.or.jp/uploads/files/jsogpolicy/HPV_Part2.pdf
【子宮体がん】更年期世代で最も多く発症
子宮体がんは、子宮体部にある子宮内膜(子宮の内側を覆う組織)から発生するがんです。日本では、近年発症者が増えていることが問題となっています。
子宮体がんは、40~50代の更年期世代でよく見られるがんです。日本では1年間で約18,000人が子宮体がんと診断され、約2,600人が命を落としています6)。
30代から少しずつ発症者が増え始め、40~50代で急激に増加。55~60歳頃でピークを迎えると発症者が徐々に減少していくのが特徴です。特に更年期世代は急激に発症者が増えるため、注意しなければならないがんの一つとなっています。
引用: がん種別統計情報 子宮体部
子宮体がんになりやすいのはどんな人?
子宮体がんの発生には、女性ホルモンの「エストロゲン」が大きく関わっていることが分かっています。エストロゲンは妊娠に向けて子宮内膜を増殖させる働きがあるため、エストロゲンの分泌量がトータルで多くなると子宮体がんを発症しやすくなるのです7)。
具体的には、以下の項目に当てはまる方は子宮体がんのリスクが高いと言えます。
・生理不順
・出産経験がない
・授乳経験がない
・ホルモン療法(エストロゲン単剤)を受けている
エストロゲン単剤のホルモン療法は子宮体がんのリスクとなることが明らかになっているため、適切に黄体ホルモン剤を併用するなどの予防対策が治療の場では行われています。
その他にも肥満、高血圧、糖尿病、乳がんや大腸がんの血縁者がいることなども子宮体がんのリスクを高めることが分かっています。
なお、子宮体がんは閉経後の女性が最も発症率が高くなります。
閉経後はエストロゲンの分泌量は著しく減少しますが、子宮内膜の増殖を抑制するプロゲステロンという女性ホルモンの分泌量も減少します。その結果、相対的に子宮内膜の異常増殖が生じやすくなって子宮体がんになるリスクが高まるのです。
こんな症状には要注意!
子宮体がんは、早期段階から自覚症状が出やすいがんです。
最も多い自覚症状は不正出血ですが、更年期は病気がなくても不正出血が生じやすいため見逃されてしまうケースも珍しくありません。
子宮体がんは早期段階で発見できれば5年生存率は95%以上ですが、がんが広がると5年生存率は70%前後。転移が生じているような進行段階ではわずか20%です6)。
更年期で不正出血がある方も、頻度が増えている場合などはできるだけ早めに医療機関を受診しましょう。また、定期的にがん検診や婦人科検診を受けるのもよいでしょう。
- https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/18_corpus_uteri.html
- https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=11
【卵巣がん】更年期世代で急増してピークを迎える
卵巣がんは卵巣の組織から発生するがんです。卵巣は下腹部の奥にある小さな臓器であるため、「沈黙の臓器」とも呼ばれます。がんを発症しても進行するまで目立った自覚症状はほとんど現れないため注意が必要です。
卵巣がんは進行するまで症状が現れにくいがんの代表であり、1年間で約13,000人が卵巣がんと診断され、約4,800人が命を落としています8)。
10代後半から少しずつ発症者が増えていきますが、40~50代で急激に発症者が増えていくのが特徴です。そして、55歳前後でピークを迎えると発症者はどんどん減っていきます。
引用:がん種別統計情報 卵巣
卵巣がんになりやすいのはどんな人?
卵巣がんの明確な発症メカニズムは解明されていませんが、卵巣へのダメージが大きいほど発症しやすいと考えられています。具体的には、以下のような項目に当てはまる方は卵巣がんになるリスクが高くなります9)。
・出産経験がない
・初潮年齢が早い
・閉経年齢が遅い
・子宮内膜症などの婦人科系の病気がある
その他にも遺伝や肥満などの生活習慣も発症リスクを高めることが分かっています。
こんな症状には要注意!
卵巣がんは早期段階では目立った症状は現れません。
しかし、進行するとお腹の臓器を覆う腹膜などに転移して広い範囲にがんが広がりやすいため注意が必要ながんでもあります。
卵巣がんは進行するとお腹周りが太くなる、下腹部にしこりがある、頻尿や便秘、脚のむくみ、といった症状を引き起こします。
卵巣がんは早期段階で発見できれば5年生存率は90%を超えますが、多くは進行した段階で発見されます。進行した段階で発見された場合の5年生存率は60%以下となり、さらに転移があるような場合は20%程度です8)。
できるだけ早い段階で発見するには定期的にがん検診や婦人科検診を受ける必要があります。特に卵巣がんの発症リスクが高い方は定期的な検診を受けるようにしましょう。
- https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/19_ovary.html
- https://www.takeda.co.jp/patients/ransougan/know/page01.html
女性特有ではないがんにも注意しよう!
更年期世代は女性特有のがんだけではなく、他の部位のがんになる方も徐々に増えていく年代です。更年期ではさまざまな体の不調が現れますが、中にはがんなど別の病気が隠れている場合もあります。更年期世代からなりやすくなるがんの特徴を見てみましょう。
【大腸がん】40代後半~50代後半にかけて増加
大腸がんは、大腸の粘膜から発生するがんです。乳がんの次に女性がなりやすいがんであり、更年期世代から少しずつ発症者が増えていきます。
大腸がんは女性が最も命を落としやすいがんであり、1年間で約87,000人が大腸がんと診断され、約27,000人が命を落としています10)。
30代後半から少しずつ発症者が増え始め、40代後半〜50代後半にかけてもどんどん発症者が増えていきます。年齢を重ねるほど発症者は増えますが、更年期世代でも10万人に対して60人前後が大腸がんを発症するとのことで注意が必要です。
引用:がん種別統計情報 大腸
大腸がんになりやすいのはどんな人?
大腸がんは生活習慣が発症に大きく関係していると考えられています。
具体的には、以下の項目に当てはまる方は大腸がんのリスクが高いため注意が必要です11)。
・運動不足
・野菜や果物の摂取不足
・過度な飲酒
・喫煙習慣
・ハムやベーコンなどの加工肉、赤肉の過剰な摂取
また、そのほかにも遺伝、潰瘍性大腸炎などの大腸の病気も大腸がんのリスクを高める可能性があります。
こんな症状があるときは要注意!
大腸がんは早期段階ではほとんど自覚症状がありません。
しかし、進行するとがんの病変部から出血が生じるため血便などの症状が見られるようになります。また、出血が続くことで貧血を引き起こし、めまい、動悸、たちくらみ、だるさなどの症状が現れることも。さらに、がんが大きくなって大腸の内部が狭くなると便秘、便が細い、残便感などの症状が現れ、最終的には大腸が詰まって腸閉塞を引き起こします。
便に血が混ざる症状は痔でも生じるため、症状が現れても見逃されてしまうケースがあります。
特に更年期では便通の異常による痔に悩まされる方、上述したような身体的な不調がある方も多いため、大腸がんのサインとなる症状が現れても見過ごしてしまう場合があります。
大腸がんは早期段階で発見できれば5年生存率は97%です10)。40歳からは1年に1度の大腸がん検診が推奨されています。気になる症状がなくても定期的に検診を受けるようにしましょう。
- https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/67_colorectal.html
- https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/type/largeintestine/cause/
【肺がん】更年期世代から増え始める
肺がんは、肺の組織から発生するがんです。男性に多く見られるがんですが、日本では女性が命を落とすがんの2位になっています。
日本では、1年間で約84,000人の女性が肺がんと診断され、約53,000人が命を落としています12)。大腸がんの次に女性が命を落とすケースが多いがんであるため注意が必要です。
肺がんは、40代前半頃から少しずつ発症者が増えていきます。更年期世代では発症者が緩やかに増え始め、70代後半頃までどんどん増えていくのが特徴です。
引用:がん種別統計情報 肺
肺がんになりやすいのはどんな人?
肺がんの最大の発症リスクは喫煙習慣です。女性では喫煙習慣があると、ない人に比べて約3.9倍も肺がんになるリスクが高くなるとされています13)。
ご自身に喫煙習慣がなくても家族や同僚など身近な方が喫煙していると煙を吸い込んで肺がんを発症するリスクが高くなるため注意が必要です。
その他にもアスベストなど人体に悪影響を及ぼす物質を長く吸い込むことで肺がんを発症するケースがあります。
こんな症状には要注意!
肺がんは早期段階では目立った症状が現れないことも多いですが、進行すると咳、痰、血が混ざった痰、胸の痛み、動悸、発熱などの症状が現れるようになります。
進行するまでは咳や痰など通常の風邪と同じような症状しか出ないことも少なくありません。そのため、発見が遅れるケースもあります。2週間以上咳や発熱などが続くときは医療機関を受診しましょう。
また、肺がんは早期段階で発見できても5年生存率は80%程度です12)。40歳からは1年に1度の肺がん検診が推奨されていますので、定期的な検診を受けるようにしましょう。
- https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/12_lung.html
- https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/type/lung/cause/#:~:text=%E8%82%BA%E3%81%8C%E3%82%93%E3%81%AF%E3%80%81%E8%82%BA%E7%B4%B0%E8%83%9E%E3%81%AE,%E4%BD%8E%E4%B8%8B%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
更年期以降はがん検診を上手に活用しましょう
今回ご紹介した乳がん、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんは更年期世代で発症するリスクがどんどん高くなります。また、大腸がんや肺がんなど命を落とす原因になりやすいがんも、更年期以降徐々に発症者が増えていくため注意が必要です。
がんは早期段階では目立った症状が現れない場合も多いとされています。早い段階で発見して治療を開始するには定期的な検診を受けることが大切です。
乳がん、子宮頸がん、肺がん、大腸がんに対するがん検診は健康増進法に基づいてお住いの自治体で受けることができます。対象年齢になって検診の案内が届いたら、必ず受けてご自身の体の状態をチェックして下さい。
また、子宮体がんや卵巣がんは自治体が実施するがん検診の対象ではありませんが、がん検診や婦人科検診で定期的にチェックを受けるよう心がけましょう。