「春になると肌が痒くなる」意外な更年期と花粉症の関係
関西のとある薬局。
3月初旬に、皮膚科の処方箋を持参した女性との会話です。
暖かい日が増えてきたとは言え、その日はまだまだコート・マフラーが手放せないくらいの寒さでした。しかしその患者さんは、首元が開いたTシャツで来局されたのです。
寒くてもニットが着られない理由
そんな薄着で寒くないんですか?
いやめっちゃ寒いで。いいなあニットが着られて。
私はこの時期ニットなんて着られないし、ハイネックもだめやねん。
チクチクするから?
そうそう。
今まで大丈夫やったのに、去年くらいから急にニットとかハイネックを着たら痒くて、肌が赤くなって。
ほらみて、ここ。
ひとめをはばからず、彼女はTシャツの首元を下まで引っ張り、胸元を見せてくれました。想像以上に赤く、痒みがひどいのか掻きむしった痕も残っています。
洗剤変えたかとか、色々皮膚科の先生が聞いてきたけど、なんも思いあたらへんねん。
そしたら、先生が『花粉症だと思うからアレルギーのお薬出しとくね』って言ってお薬出してくれてん。でも鼻水も出ないし、目も痒くないのよ。
皮膚科の先生、間違えているん違うかな。
いえいえ、花粉症の症状って、鼻水だけでなく、目や皮膚の痒みもあるんですよ。
それにね、女性ホルモンの影響も考えられます。
と言って処方箋に記載された彼女の生年月日を確認すると、40代前半。そろそろ更年期に差し掛かるお年頃です。
女性ホルモン減少が肌トラブルの原因に?
唐突やけど生理は順調にきてます?
ほんまいきなりやな。
でも、実は最近生理のリズムが狂ってきて、子供の受験もあったからストレスかなって思っててん。
少し早いと思うかもしれないけど、そろそろ女性ホルモンのバランスが乱れる年齢になってきたみたいやね。
女性ホルモンのバランスが乱れてくると、花粉症の時期は皮膚の状態が不安定になってしまうんですよ。
女性ホルモンの一種である「エストロゲン」には、肌の弾力を保ち、コラーゲンや水分量を増やす働きがあり、これによって肌の潤いが保たれています。
しかし、更年期が近づき卵巣機能が衰え始める40歳を超えたあたりから、エストロゲンの分泌も徐々に減少し、閉経前後にはその減少が急激になります。
そのため更年期には肌トラブルが生じやすくなるのです。
エストロゲン減少による主な肌トラブル
- ・肌の乾燥と痒み
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皮膚に潤いや弾力性を与えるコラーゲンの産生を促すエストロゲンの分泌量が減少すると、皮膚や粘膜の乾燥やかゆみが生じます。
- ・ホットフラッシュによる痒み
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ホットフラッシュによる発汗で、皮膚の痒みやピリピリ感を引き起こすことがあります。
- ・皮膚の敏感さ
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表皮のいちばん外側にある皮脂膜や角質層が薄くなることで、皮膚のバリア機能が低下し、刺激に対する敏感さが増します。
これまで使っていた化粧品や衣類でさえも、肌がチクチクしたりかゆくなったりすることがあります。また、突然かぶれたり、湿疹ができたりすることもあります。
- ・シワやたるみの増加
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エストロゲンの減少は肌のハリや弾力の低下をもたらし、シワやたるみが増える原因となります。
更年期の肌にはエストロゲンを意識した対策を
痒いと思うけどかきむしったら逆効果やから、お風呂上りは体にも保湿剤塗ってくださいね。
体にも保湿剤塗るの? めんどくさいやん。
お風呂からあがった瞬間から乾燥は始まっているんですよ。だから浴室で保湿剤を塗るのが一番効果的。
慣れるまで面倒かもしれないけど、タオルで体を拭いたついでの行動と習慣付けにしてしまえば楽ですよ。
私もバスタオルと保湿剤をセットにして置いてます。
更年期世代のトラブルが起こりやすい肌には、エストロゲンの減少を意識した対策が必要です。
- 花粉症の時期は低刺激な化粧品を使う
- お風呂はぬるめの温度で
- 年間を通じて日焼け止めを塗る
- 質の良い睡眠を取る
- 食習慣を見直す(脂質・たんぱく質・ミネラル・ビタミン・食物繊維などバランスよく)
意外な病気や症状に関係している更年期症状
今回は花粉の時期に肌のかゆみで悩む更年期女性のお話をお伝えしました。
この女性は単純に花粉症だけのせいではなく、年齢的に女性ホルモンが低下したことも肌トラブルにつながっていたのかもしれません。
これも更年期のせいなの?と驚くような病気と更年期が関係していることがあります。
症状に合わせた診療科を受診してもなかなか改善しない時は、自分の年齢や月経の様子を確認してみて婦人科で相談してみるのもひとつの対策になるかもしれません。
「なんだかいつもと違うな」と感じたら、それはあなたに届けたい身体からのメッセージです。
メッセージをしっかり受け止め、自分をいたわる習慣を日々の生活に取り入れてみてくださいね。