更年期からの「性の悩み」セックスの痛みに効く薬はありますか?
関西のとある薬局。
新人薬剤師が「患者さんから性交痛に効く薬はありますか?と聞かれて……」と私のところに駆け込んできました。
私はすかさず
「あ、それなら私が行ってくるわ。あとは任せて」と立ち上がり、外来カウンターに行ってみると、意外なことに相談主は60代くらいの男性でした。
てっきり若い女性薬剤師をからかっているのかと思いきや、ベテランの私が対応してもやはり真剣に困っておられる様子です。
街中にある薬局の店先にコンドームの自動販売機がおいてあったり、精力増強剤の商品名が書いてあるのぼりが立っていたりと薬局は昔からセクシャルウエルネスに貢献してきました。
実は薬局は性に対して一番身近な相談窓口かもしれません。
確かに正しいセックスの方法なんて、誰からも教わってこなかったし、嗜好性、関係性もあるから深くは聞けない。
でも、女性の場合ホルモンの影響で今までのようにいかないことがあるって事は、同じ女性として伝えておきたいな。
そんな風に考えを巡らせながら、男性にセックスの痛みについてお話をさせていただきました。
人は一生ホルモンに翻弄されて暮らしている
性別や、年齢に関わらず人はホルモンの影響を受けています。
特に女性は思春期、性成熟期、更年期以降とダイナミックに心身の変化を感じます。
更年期以降は女性ホルモンの減少に伴い程度の差はあれ、様々な症状に悩まされます。
ホットフラッシュやイライラ、不安などが一般的ですが、ホルモン由来の症状は、骨粗鬆症、高血圧、しわ・シミ・肌のたるみ、筋力低下、性機能障害など多岐にわたります。
更年期以降の膣の悩み
男性器の挿入時、擦れるような、焼けるような痛みを感じます。またその痛みが数日にわたることもあります。
膣の潤いが少なく、乾燥した状態のまま行為を続けると痛みを感じやすくなります。またデリケートゾーンは神経の末端がたくさんあり、小さな傷でも激しい痛みを感じます。
したがって、性行為だけでなく、下着の擦れ、トイレットペーパーでも簡単に傷がつき、痛みを強く感じやすい場所なのです。
さらに、閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の減少は、乾燥だけでなく、膣壁と膣粘膜が薄くなり、柔軟性も失います。また膣分泌物と自然なうるおいの減少により、膣がかゆくなり、ヒリヒリと炎症を起こしやすくなります。
更年期以降の女性は常に膣に不快感があり、それが生活の質の低下を招いていると、本人だけでなく身近な人も理解することが大切です。
このように、デリケートな状態の更年期以降の女性の膣に、男性器が無理やり通過する性行為は、悲痛でしかありません。
女性の性欲に関係するホルモンは男性ホルモン!?
女性ホルモンであるエストロゲンは先ほどお伝えしたように
- 膣の粘膜の厚さを保つ
- 膣分泌や性的興奮時の潤滑液を出す
という働きでセックスをスムーズに行う手助けをしています。
いっぽう、性欲と性的興奮に関係するのは、主に男性ホルモンであるテストステロンです。実は女性の体にもあり、卵巣と副腎から分泌されます。
女性の性欲回復へのテストステロン補充療法の効果は個人差があるため、医師との十分な相談をふまえて行われます。
女性の場合、セックスの痛みや、パートナーからの性行為の強要がさらなる性欲低下を招くとも言われています。
セックスの痛みをなくす方法は?
セックスの痛みへの対処・治療方法は主にこの3点と言われています。
- ホルモン補充療法
- 潤滑ゼリー
- 適切な性行為
ここで知っていただきたいのが、膣の潤滑液は性的興奮によって分泌されます。
高齢の女性でも、性的興奮があれば、潤いのある膣で男性器を迎えることができます。
この事実から分かることは、セックスの痛みの解決策として大切なのは、互いに楽しみ、性的興奮を得られる性行為を行うことです。
年齢を重ねるにつれ、若い時のようなダイナミックな行為はできません。
これは女性だけでなく男性も同じです。男性も年齢と共に、勃起障害や早漏・射精遅延などがおこります。
来るべき老年期にむけ、お互いにコミュニケーションを取りながら、今の自分たちに合う新しいセックスのカタチをつくりあげていくことが重要です。