人間関係に一番大切なのは「ありがとう」ではなく「理解する」こと<後編>

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〜人間関係では、お互いに相手を理解することがとても重要。それを阻むものは何なのでしょうか。理解を深めるための対話のテクニックと共にご紹介します〜

こんにちは。リレーションシップコンサルタントの此花わかです。

人間関係に一番大切なのは『ありがとう』ではなく『理解する』こと<前編>」では、相手を理解することの大切さと5つのステップについてお話しましたが、<後編>では理解を阻む5つの障壁と、理解を育むテクニックをトピックスにしたいと思います。

目次

相手への理解を阻む5つの障壁

相手を理解し、自分を理解してもらうオープンなコミュニケーションはとても難しいもの。それは、生まれ育った環境、自分の置かれた状況や社会的圧力により、自分を率直に表現することに抵抗を感じてしまうから。

自分の感情を伝えることに慣れている人もいれば、慣れていない人もいるでしょう。

アメリカの心理学者であるハリー・レイス博士や性科学者であるエイヴァ・カデル博士らによると、相手への理解を阻む障壁は大きく分けて5つあるようです。

①「男らしさ」「女らしさ」というジェンダーロール

「こんなことを言ったら男らしく/女らしくない」という圧力。

②「言わなくても分かるはず」という思い込み

付き合いが長い関係に起こりがち。しかし、人の環境、状況、優先順位は日々変わり、私たちは変化し続けます。人との相互理解は自分自身を表現するところから始まります。

③「相手が自分をどう思っているか」を知りたくない恐れ

相手が本当は自分をどう思っているかを意図的に理解しないようにするときも。傷つくのを恐れて、相手を知ろうとしない

④「性格が行動を起こす」という思い込み

相手はこういう性格だろうから、こういう行動を起こすだろうという先入観。家族やパートナー、友人など相手の性格を知っているからこそ、相手の過去に基づいた思い込みを発動してしまい、認知バイアスが生まれます。

「性格が行動を決定すると強く信じられていますが、人は成長し、優先順位が変わり、成熟し、時間の経過とともに異なる振る舞いをするという事実を考慮することが大切です」とレイス博士は説明します。

⑤コミュニケーションの性差

文化が作ってきたジェンダーロールにより、男性は寡黙で強いのがよしとされ、女性はケア要員でいることがよしとされてきました。

そういった性別役割分業のある社会で育つことにより、女性は一般的に男性より感情をオープンに表現する傾向があるとか。

興味深いのは、女性は相手の性別に関係なく、比較的オープンである傾向があるということ。一方、男性は主に女性に対してオープンになる傾向があります。

言い換えれば、男性は他の男性と接するとき、深い感情を表さないそう。それにより、人生の後半になると、男性は親しい友人関係を築くのに支障をきたすそうです。相手の性別も、”理解”に影響する場合もあります。

スピーカー・リスナーテクニック

50年以上、”真の理解”の研究を進めてきたハリー・レイス博士は、”聞く”行為と同時に、”あなたは聞かれている”という感覚を作り出す「スピーカー・リスナー・テクニック」を生み出しました。

① スピーカーは気のすむまで話す

② リスナーはスピーカーの話をさえぎらず、スピーカーの話が終わるまでじっと聞く

③ リスナーはスピーカーの話をまとめて、きちんと話を聞いたかどうか言語化して確認する

④ スピーカーはリスナーの間違いを正す

⑤ リスナーは正された間違いを正しい認識へ言葉で再び確認する

つまり、理解を深める対話とは、自分の意見を伝えるのではなく、相手を”聞く”こと。そして、”あなたをちゃんと理解した”と伝えることなのです。

意見の相違ではなく、「理解されなかった」ことに人は苦痛を覚える

さて、意見の衝突は誰にでも起きます。大学で教鞭をとるレイス博士は、よく生徒に無理難題なお願いをされることが多いとか。でも、そのときに生徒の意見をじっと聞き、「それはできません」とは言わないそう。

「君の意見を尊重するけれども、~の理由でそれに答えられない」などと伝えるようにしているとか。そうすると生徒たちは納得してくれると言います。

こういった「スピーカー・リスナーテクニック」を実践すると、意見の衝突はあっても人間関係を悪化させません

ただし、注意しないといけないのは、「理解する=同意する」ではないこと。

私たちはそれぞれ違う人間で違う環境や状況に生きています。理解するということは、単に相手が伝えたメッセージを理解し、それを”合理的な視点”として尊重することを意味します。私たちは、必ずしも同意する必要はないのです。それを覚えておきましょう。

理解することは非常に難しい時間や労力を必要とし、感情的な努力も必要。自分の嫌なことを聞くことにもなるでしょう。真の理解には、本当の自分を伝える勇気と相手の本当の声に耳を傾ける、2つの勇気が必要です」とハリー・レイス博士も、

コミュニケーションは互いの自己肯定感を高めるためのもの」とエイヴァ・カデル博士は主張します。

”自分の意見を上手に表現する”がコミュニケーションだと思われがちですが、本当は、”相手を聞き、相手を理解して尊重していることを伝える”ものなのでしょう。レイス博士の「スピーカー・リスナーテクニック」を意識的に日常に取り入れていきたいですね。

【参考】Relationships 2.0: What Makes Relationships Thrive – Hidden Brain

Loveology University – Dr. Ava Cadell

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この記事を書いた人

此花わかのアバター 此花わか 【リレーションシップコンサルタント】

ジャーナリスト
リレーションシップコンサルタント

アメリカの性とリレーションシップのコーチングスクールで学ぶ。セックスポジティブな社会を目指す「セクポジ・マガジン」を発信中。FRaU 、Newsweek、Huffpost、SPA!、FRONT ROW、GLITTERなどで執筆。

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