人間関係に一番大切なのは「ありがとう」ではなく、「理解する」こと<前編>

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〜パートナーや家族をはじめ様々な人間関係において「相手から理解される」「相手を理解する」ことはとても重要です。相手を理解するための5つのステップを解説します〜

こんにちは。リレーションシップコンサルタントの此花わかです。

 

よく、パートナーには感謝を示そうと言われます。それは真実に違いないのですが、「ありがとう」と言うよりもさらに大事なことがあると、NY・ロチェスター大学の心理学教授であるハリー・レイス博士は主張します。相手を理解するとはどういうことなのかーー。

 

レイス博士がゲストスピーカーとして登場した大人気のポッドキャスト『Hidden Brain(隠された脳)』の「Relationships 2.0: What Makes Relationships Thrive(人間関係を豊かにするもの)」エピソードをもとに、探っていきたいと思います。

 

目次

自分を理解してもらうために相手に話すこととは?

ハリー・レイス博士はNYのユダヤ人コミュニティに生まれました。両親も祖父母も同じコミュニティ者同士。大学を卒業してすぐに結婚し、子供をもつという人生を歩んで来ました。

それが”当たり前”の幸せだと信じていたレイス博士も、大学卒業後に同じコミュニティ出身のガールフレンドと結婚。ところが、大学院に進んだレイス博士は自分のコミュニティに違和感を覚え始めます。

 

人生に迷い始めたレイス博士は、妻に「自分の人生をどう見ているか」「自分が生まれたコミュニティをどう見ているか」「自分の人生をどうしたいか」を話し始めました。

しかし妻は、レイス博士の話すことにまったく共感を示してくれません。次第にレイス博士は、自分が妻に”理解されないと感じるようになりました。ついには、妻といる時間よりも大学院でいる時間のほうに”本当の自分”を見出すように。

 

とはいえ、レイス博士の妻は博士を批判したわけでもなく、意地悪をしたわけでもありませんでした。レイス博士と妻は相互理解できなかっただけで、表面上の結婚生活はうまくいっていたのです。

結局、1年半後に結婚生活は終わりを告げました。以来、50年以上、”真の理解”が人間関係に及ぼす影響についてレイス博士は研究し続けています。

 

とりわけ、パートナーや家族との関係に悩んでいる人は、まず下記について話し合ってみましょう。

 

・自分の人生をどう見ているか

・自分が生まれたコミュニティ(仕事、家庭、コミュニティ、社会的立ち位置)をどう見ているか

・自分の人生をどうしたいか

 

こういった話を聞いてくれない相手とは、相互理解が欠如していると思ってください。また、自分も相手に同じことを聞いてみましょう。

 

 

なぜ親子は葛藤するのか?

レイス博士は、”真の理解“が必須なのは何もカップルだけでなく、親子、友人、きょうだいにとって必要だと言います。なぜなら、本物の愛情、思いやり、感謝や信頼は”理解“から生まれるからです。

 

博士は、多くの親子の間にも理解の欠如がみられると主張します。

子どもが親に理解されないと感じることは非常によくあること。それは、”私たちが成長する”という事実から来ます。私たちは変化します。多くの場合、私たちは家族から離れて、家族にとって理解できない存在になるのです」

また、理解の欠如は仕事にも影響します。

 

 

突然やる気をなくす「燃え尽き症候群」の根底にあるもの

燃え尽き症候群とは、やる気にあふれていた人が突然やる気を失ってしまう症状。理解の欠如は、燃え尽き症候群の一因にもなると博士は説きます。

 

2010年、世界を驚愕させた事件「ジェットブルー客室乗務員事件」が起きました。ジェットブルー航空で、ベテラン客室乗務員のスティーブン・スレーターは、機内の放送システムで「乗客から虐待を受けたので仕事を辞める」と突然発表。その直後に、ビール2本をがぶ飲みして避難用スライドを使い、飛行機を降りてしまったのです。

 

スレーターが突然キレてしまった理由は、ある乗客にありました。その乗客はシートベルト着用サインの間に頭上にある荷物を取ろうとしていました。スレーターは何度も注意しましたが、乗客は抵抗し、あろうことか、カバンでスレーターの頭を叩いたのです! 頭を叩かれたスレーターは爆発。飛行機を止めてしまったのです。

 

「昔は、仕事で一緒になる相手のほとんどは同じコミュニティの人たちでした。だからお互いを理解するのは簡単なことだったのです。

しかし、今や私たちはモバイル化が進み、より多くの人とつながり、異なる背景・目標・優先順位をもつ人々と交流するようになりました。そのために互いを理解するのが非常に難しくなっているのです」

 

急にやる気がなくなった人、キレてしまう人が周囲にいたら、ひょっとしたらその人は自分が理解されていないと感じているのかもしれません。

 そもそも、私たちにとって“理解されること”がなぜそれほど大切なのでしょう?

 

 

相手を理解する5つのステップ

よく人間は社会的な生き物だと言われますよね。集団に受け入れられる”帰属意識”は、人間の進化の過程で必要とされました。

もし自分が理解されていれば、集団から追い出される心配はありませんが、逆に集団に誤解されているなら、常に自分の安全に目を光らせていなければいけません。これではサバイブが難しいでしょう。

ですから、人間が「理解されたい」と望むのは幸せや安全に影響しているのです。

 

レイス博士は、以下の5つのステップが相手を理解するのに必要だと説明します。

① 相手が何を考え、感じているのかを想像しても、その想像を一旦捨てる

② 相手の言うことを口をはさむことなく、本当に聞く

③ 相手の言っていることを自分の言葉で話して確認するなど、自分が本当に聞いていることを相手に知らせる

④「言わなくても分かるはず」という思い込みは捨てて、自分の感情をきちんと伝える

⑤ 相手の感情をジャッジせずに受け止めて、互いの着地点を提案する

 

私たちの誰もが相手の話を聞いているときに、相手をいつも推し量っています。それ自体は悪くないのです。でも、一旦その推量を捨てないと、先入観で相手を決めつけてしまい、理解することから遠ざかってしまいます。

 

<後編>では、相手への理解を阻む5つの障壁と理解を育むテクニックについてお話したいと思います。

 

 

【参考】Relationships 2.0: What Makes Relationships Thrive – Hidden Brain

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この記事を書いた人

此花わかのアバター 此花わか 【リレーションシップコンサルタント】

ジャーナリスト
リレーションシップコンサルタント

アメリカの性とリレーションシップのコーチングスクールで学ぶ。セックスポジティブな社会を目指す「セクポジ・マガジン」を発信中。FRaU 、Newsweek、Huffpost、SPA!、FRONT ROW、GLITTERなどで執筆。

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