【薬剤師の体験談】月経時の出血の量が気になる女性の話

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【薬剤師の体験談】は私が薬剤師として実際に携わった中で、とくに印象的だった方のエピソードをご紹介し、その実体験にまつわる学びやメッセージをお伝えしているシリーズです。

今回は「月経時の出血の量が気になる」40代後半の女性のお話。更年期と心の葛藤についても考えさせられる経験でした。

月経の頻度や量についても後半にご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

それでは今回の薬剤師の体験談をぜひご覧ください。

目次

毎月きていた「出血」が来ない。まだ更年期は早いはずなのに……。

細面の真面目そうな女性が、3ヶ月分の漢方薬と3日分の2種類の止血剤が記載された処方箋を持参されました。

 

今回で何回目の来局でしょうか。

 

初めて来られた時は、排卵誘発剤が記載された処方箋だったため妊娠を希望されているのかと考えながら、お薬の説明をさせていただきました。

しかし、彼女の答えは私の想像とは違っていたのです。

出血が来ないのです」

 と、彼女はあえて「出血」という言葉を選んでいました。

 

 40代後半に入られたばかりの女性です。

 

出血の量や月経周期の乱れがそろそろ出てくる頃ですが、どうやってお話ししようかしらと頭の中で考えていると彼女はこう付け加えました。

「だって今まで毎月来ていたのに、突然来ないのはおかしいでしょう?

私は更年期にはまだ早い。ストレスが溜まっているから生理周期が乱れているだけです。忙しいし。」

私は「お医者様はどのように話されていましたか?」とお尋ねしました。

すると彼女は「これ飲んだら生理がくるから」と強い語気で話されました……。

 

これが彼女との出会いです

 

生理がこない理由は稀発月経? それとも……

私の勉強不足でその時にお話しできなかったのですが、稀発月経(※1)で排卵が起こらない場合、排卵誘発剤を使って排卵を起こす治療法があります。稀発月経(※1)については後で詳しく説明しますね。

それから2ヶ月経った頃、今度は「出血の量が少ないので」といって漢方薬の処方箋を持参されました。

 

漢方薬をやめると生理が来なくなるようで、漢方薬を欠かさず服用したいとのことでした。

 

それから1年ほど定期的に漢方薬の処方箋を持参されていたのですが、今回は新しく止血剤が処方されています。

止血剤とは出血を止める働きがあります。

 

初めて来られた時は「月経が来ない

それからは 「月経時の出血の量が少ない

1年後には 「月経がおさまらない

 

どういうことだろうと考えながら、私はお薬のカルテを見ながら、ゆっくりとお話しを伺いました。

彼女は笑顔で受け答えをするのですが、こちらから質問していないにもかかわらず時折強い口調で

私は更年期にはまだ早い。ストレスが溜まっているから生理周期が乱れているだけです。忙しいし。」

と強調するのです。

 

正常な月経周期とは?

日本産婦人科学会で、正常な月経周期は25~38日と定義されています。

また周期が24日以内を頻発月経、39日以上3ヶ月未満を稀発月経(※1)と分類しています。

※1:稀発月経は主にホルモンの分泌異常が原因と言われています。また排卵がある場合とない場合があり、排卵があれば妊娠が可能です。

 

稀発月経で排卵がない場合でも、下記①②の場合のように妊娠を希望していない場合は治療を行いません。

①   初潮からまだあまり時間が経っていない中学生・高校生

②   卵巣機能が低下することによって生理周期が乱れることの多い40代以上の更年期の人

 

月経周期が乱れる主な原因

ではなぜ月経周期が乱れるのでしょうか?

①   妊娠

恥ずかしながら私は妊娠していることに気が付かず、同僚に「また生理が来なくってさ。もう3ヶ月過ぎちゃったよ」と話すと「妊娠じゃないの?」と言われ、そこでようやく気が付きました。

②   服用薬の影響

薬の種類によっては無月経の原因になります。医師・薬剤師に相談しましょう。

③   視床下部下垂体系

視床下部や下垂体の腫瘍

・何らかの影響による急激な体重減少。視床下部からのホルモン分泌を停止させ、エストロゲン分泌を低下させます

④   卵巣系の問題

部分的に子宮内膜が剝がれることによる出血(破綻出血)を繰り返す無排卵周期症や早発卵巣不全など。

⑤   多囊胞性卵巣症候群(PCOS)

卵巣の中にある卵胞の成長が遅くなることで排卵されにくくなり、卵巣内に卵胞がたまってしまい、月経周期が徐々に長くなります。

⑥   甲状腺疾患

・甲状腺機能低下症:月経異常が7割程度。1割程度に無月経

・甲状腺機能亢進症:月経異常6〜7割程度

⑦   肥満

内臓肥満による内分泌障害説など,いくつかの因子が相互に関連していると考えられています。

月経時の出血の量について 

続いて出血の量について説明します。

血液の色・粘度は人によって異なりますし、どれが正解かわからないものです。

 

「昼用生理用ナプキンでも下着が汚れてしまうので、昼でも夜用ナプキンを使用する」

そんなことで目安にしている方も多いでしょう。

 

しかしながら、夜用ナプキンでも30分ほどでもれてしまう事がある人は過多月経かもしれません。

 

過多月経の可能性

①   ナプキンやタンポンを1時間ごとに取り換える

②   血の塊が出る

③   貧血がある

のうち1つでも当てはまる場合は過多月経の可能性があります。

過多月経について、今回は取り上げませんが、また別の機会にお話ししたいと思います。

  

今回の女性は、非常に印象的な方です。長年医療現場に従事してきましたが、私が薬剤師としての職能の限界を感じたためです。

なぜならば、多くの女性と話してきましたが、医師ではない私が、更年期であるかどうかの判断をこんなにも難しいのだと身をもって体感したからです。

 

しかし、もし、彼女が3ヶ月後にまた来られた際は、心の奥底に抱え込んだ不安を少しでも取り除くことができればと思います。

 

ストレスを感じるのはそんなに悪いことではない

最後に。

ストレスを受けている」と感じることはとても大切なことです。

 

なぜならば人は一生懸命すぎると、ストレスを受けていることすら感じられず疲れているのが普通と感じるからです。

 

また今まで完璧にすべてをこなしてきた方は、多少無理をしてでもやりきってしまいます。

 

たしかに、若い時は多少無理をしてもリカバリー力があるため、すぐに回復できます。

 

また40代以降の女性は、職場で責任のある業務を任されがちです。さらに私生活でもタスクが増えがちです。

 

すべてを一度にこなそうとせず、タスクを細切れにし、柔軟に対応していきたいものですね。

そのために私が実践していることを参考までにご紹介します。

①   人に任せられる業務範囲を決める

②   優先順位は常にフレキシブル

③   自分の中で期限を決めない

 

もちろん人に迷惑をかけない範囲でね!

今まで頑張ってきたのですもの。

多少遅れてもすぐに取り返すことができるでしょう。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

私の体験談が少しでもあなたのお役に立てたのであれば嬉しいです。

次回の「薬剤師の体験談」もお楽しみに。

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この記事を書いた人

岡下真弓のアバター 岡下真弓 【薬剤師】

フリーランス薬剤師
JAAアロマコーディネーター協会認定講師

化粧品メーカー研究開発や薬剤師の知識を生かし、女性の健康と美容をテーマにした講演活動を行っています。 歳を重ねるにつれ、衰えや失われていくものはあります。また更年期世代は仕事で負う責任が大きくなり、後ろ向きな気持ちになりがちです。私は人の美しさとは、その人の生き方次第で変えることが出来ると多くの患者様から教わりました。

「歳を重ねる事をネガティブに捉えずセクシーに健康に楽しみましょう」

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