パートナーに我慢しない関係を育む。着地点を見つける「共感的コミュニケーション」とは?
こんにちは。ジャーナリストでリレーションシップコンサルタントの此花わかです。
カップルが愛を長続きさせる秘訣はコミュニケーションにあるとよく言われます。それは、自分の「好きなこと・嫌いなこと」を話すことで”自分を知り”、自分の大切にする人たちに”自分を知ってもらう”という役目もあるから。
けれども、日本は厳しい家父長制的社会。「女らしさ」「男らしさ」のジェンダー規範や上下関係に縛られて、自己主張がしづらい文化ですよね。
男女ともに、自分の意見をぐっとこらえて我慢している人が多いのではないでしょうか?
そこで、パートナーと着地点を見つけて、”我慢せず対等な関係”を育むコミュニケーション術を紹介したいと思います。
コミュニケーションが必要な4つのカテゴリー
①身体
エイジズムとルッキズムが激しい日本において、自分の身体にネガティブなボディイメージを抱いている人は男女ともに少なくありません。
だからこそ、パートナーの自己肯定感を高めるために、パートナーの身体について日頃からポジティブな言動をするのが大切。
身体をけなすような言葉は絶対NGです。「笑顔がいいよね!」など、性的なパーツ以外にも身体を褒めるようにしましょう。
②メンタル
「本当によく気が付いたよね!」「賢いなぁ」など、パートナーの能力について感心したら小さなことでもどんどん言葉に出しましょう。
パートナーが自分に自信を持てば持つほど、2人の関係はよくなります。
③感情
「君といるといつも楽しいよ」「あなたといるとリラックスできる」「好きだよ」「愛している」など、パートナーがあなたの感情にどんなふうに響いているのか伝えましょう。
④セクシュアル
「ロマンチックなキスが好き」「抱きしめたいな」など、性的コミュニケーションも大切。アセクシュアルの人でない限り、セックスは人間にとって根源的な感情。
だから恥ずかしがらずにオープンなコミュニケーションをとりましょう。”セクシュアリティ(性のあり方)”は人権です。
子育てをしているカップルや何年もつきあっているカップルは慌ただしい日常で、”カップルだからこそできる”コミュニケーションを忘れてしまいがち。
お互いの自己肯定感・自己価値・自信を高めるために、上記4つのカテゴリーについて意識的にコミュニケーションをとるようにしましょう。これが愛を育むプロセスとなります。
共感的コミュニケーションとは?
コミュニケーションはパートナーを理解し大切にして、パートナーの良さを引き出すために行うもの。
パートナーのニーズや不満を理解して解消するためにパートナーの話を聞くことを、「共感的コミュニケーション」と呼びます。例えばこんな会話です。
Aさん「あなたの実家の集まりに行きたくないんだけど」
Bさん「それは申し訳ないね……。なぜ行きたくないのか教えてくれる?」
Aさん「だって、私が母親失格みたいな話になるから、嫌な気分になるんだよね」
Bさん「そりゃ、そう感じるのは仕方ないよ。僕だって同じことをされたら嫌だな。分かった。僕の家族には止めるように伝えるよ」
このようにお互いに共感し、相手のニーズを満たそうと努めるのが効果的なコミュニケーション。この共感的コミュニケーションが上手くとれないと、ストレスが蓄積していき不幸せな関係に陥ってしまいます。
コミュニケーションにおける3つの約束事
とはいえ、人間は一人ひとり違うのだから、必ず衝突は起こります。
ここで知っておきたいのは、「衝突や葛藤が起こるのは当たり前で、衝突や葛藤から人間は成長する」ということ。
そんな衝突や葛藤を乗り越えるために、先述した共感的コミュニケーションが必須ですが、そのためには3つの約束事があります。
① パートナーの話をさえぎることなく、すべてに耳を傾ける
もっと聞くことにより、パートナーのことをもっと知り、理解できます。
② 自分の言いたいことを言う前に頭のなかで考える
よく考えた言葉を発することで、パートナーもあなたを理解しやすくなります。
③ 言葉を発する前に最適なボディランゲージ、声のトーンやスピードを見つける
自分が「どのようにパートナーに捉えられたいか」をイメージして、メッセージをパートナーに伝えることが大事。
ただし、コミュニケーションはギブ・アンド・テイク。着地点を見つけるためにパートナーのニーズもくみ、フレキシブルに交渉しましょう。
パートナーとの着地点を見つける方法
パートナーに自分の視点を伝えることは必要不可決ですが、一方的に非難すると交渉が進まず、お互いの着地点を見つけられません。
交渉において効果的なのは、パートナーが過去に自分のニーズを満たしてくれた”前例”を使い、パートナーに理解してもらうやり方。
「前に、ゴミ当番を代わりばんこにする約束をしてくれたよね。それすごく助かっている。ありがとう。
ただ、今は家の掃除が私の負担になっていてつらいから、掃除の半分をあなたにも請け負ってもらいたいな。そうれば、私ももっと子供の宿題を見てあげられる」
などと、前にパートナーがしてくれたことに対し、“ポジティブ”なフィードバックをした上で、今度は自分のニーズを伝えます。
ニーズを伝えるときには必ず、「~すれば、~なよい効果がある」と変わるとよい”メリット”を明確にしましょう。
パートナー同士はどうしても遠慮がなくなり、「言わなくても分かってくれる」を期待してしまいますが、パートナーも別の人間です。感情的になりそうなら、同意書を作るのもひとつの手。
パートナーと同意書を作るステップ
① 言い訳をしたりパートナーを批判したりせずに、パートナーの言い分を聞く
② パートナーが話し終わった後に、その言葉を繰り返してパートナーの意思を確認する
③ 納得いくまでパートナーに質問するが、「~なんだよね?」ではなく、「これについてどう思っているの?」と自由に回答させる。自由に回答させることでパートナーは尊重されたと感じるから
④ パートナーに対する率直で正直なニーズをリストアップする
⑤ パートナーにもリストアップしてもらう
⑥ お互いのニーズで一番大切なところを話し合う
⑦ 一番大切なニーズに対してどんな解決法が有効か、また、その解決法が引き起こす”結果”を想像して書き出してみる
⑧ 同意書を書く
⑨ お互い、行動を起こすことにコミットする
⑩ 2週間後にお互いへフィードバックをする
⑪ 問題が解決していないなら、①~⑩を繰り返す。
契約社会ではない日本で、こういう方法はとっつきにくいかもしれませんが、カップルというのは非常にもろい人間関係で成り立っているという現実を知ってください。
自分もパートナーも、とりまく環境も時とともに変わります。
「愛は不変だ」と過剰に神聖視せずに、お互いの着地点を見つける努力が大事。
難しいですが、「何が上手く行っていないのか」をパートナーに非難することなく伝えるには、こういった合理的な方法をとるのも効果的です。
日ごろから小さな交渉をしていく
カップルの関係性を一変するような大きな交渉の前に、日ごろから小さな交渉をすることが望ましいです。
日常の小さなニーズや不満についてつねにパートナーと話し合い、交渉して妥協点を見つけていくことは、お互いのコミュニケーション力を高めるだけではなく、お互いのちょっとした変化を知ることにもなります。
意識的なコミュニケーションはカップルにとって”不自然”な行動のように見えますが、リレーションシップは、いつか終わりのくるトキメキや恋愛感情に任せて放置しておくと育ちません。
深刻な顔をして話し合いをするのではなく、ときおり、素敵なデートをプランニングしてお互いのニーズを確認し合うコミュニケーションをとってみてはいかがでしょうか?