そのもの忘れは更年期のせい?「ブレインフォグ」の原因と対処法

「言いたいことはあるのに、言葉が出てこない」
「文章を読んでいるはずなのに、内容が頭に入ってこない」
そんな経験が増えて、不安になっていませんか。実はその症状、更年期に起こりやすい「ブレインフォグ」かもしれません。
この記事では、更年期に起こるブレインフォグの原因や、日常でできる対処法について解説します。
ブレインフォグとは?主な症状
ブレインフォグとは、その名の通り「頭に霧(フォグ)がかかったように、思考がはっきりしない状態」を指す言葉です。医学的な正式病名ではなく、症状を表す言葉として使われています。
代表的な症状には、次のようなものがあります。
- 人の名前や物の名前がすぐに思い出せない
- 文章を読んでも内容が頭に入りにくい
- 仕事や家事の段取りに時間がかかる
- 集中力が続かず、ミスが増えたように感じる
- 予定や用事をうっかり忘れる
とくに働く世代の方にとっては、仕事のパフォーマンスに直結するため、不安や焦りを感じやすい症状でもあります。
更年期のブレインフォグは「一時的な変化」
ブレインフォグを経験すると、多くの方が「これって認知症では?」と心配します。ですが、まずは安心してください。更年期のもの忘れは、軽度認知障害(MCI)や認知症との関連は低いと考えられています。エストロゲンが大きくゆらぐことで起こる気分の落ち込みや不安に伴って表れやすく、更年期が過ぎてホルモンが安定すれば、落ち着いていく傾向があります1)。
つまり「ちょっともの忘れが増えた」「言葉が出にくい」といった変化は、多くの場合、脳の機能が壊れているわけではなく、ホルモンの変動による一時的なゆらぎと考えられているのです。
ブレインフォグと認知症の違い

更年期のブレインフォグと認知症には、いくつかの違いがあります。
大きな違いは、本人の自覚です。ブレインフォグでは「最近、もの忘れが増えた」「言葉が出にくい」と本人が気づいて悩むことが多い一方、認知症では、もの忘れの自覚が乏しくなる傾向があります。
また、ブレインフォグは日や時間帯によって波があり、「今日は頭がさえている」「夕方になるとぼんやりする」といった変動が見られます。更年期を過ぎてホルモンのゆらぎが落ち着くと、改善が期待できると考えられています。一方、認知症は症状が持続しやすく、多くの場合、月単位・年単位で少しずつ進行します。
日常生活への影響も目安になります。ブレインフォグでは、もの忘れがあっても身のまわりのことは自分でこなせますが、認知症では進行とともに生活に支障が出ることが多いです。
原因も異なります。ブレインフォグは、エストロゲンの低下、睡眠不足、ストレスなどが重なって起こると考えられています。一方、認知症は脳の神経変性や血管障害など、脳そのものの変化が背景にあります。
更年期のブレインフォグは40代後半〜50代前半に多く、ほてりや不眠などの更年期症状を伴いやすいのも特徴です。認知症は65歳以上で起こることが多く、もの忘れに加えて、人格や気分の変化が見られることもあります。
ただし、これらはあくまで一般的な傾向です。気になる症状が続く場合は、自己判断せず、早めに医療機関で相談しましょう。
更年期のブレインフォグは、なぜ起こる?
なぜ更年期にブレインフォグが起こるのでしょうか。主な原因は3つあります。
① エストロゲンの減少と脳への影響
更年期は、女性ホルモン「エストロゲン」がゆらぎながら大きく減る時期です。このエストロゲンは、記憶をつかさどる「海馬」など脳の大切な部分に作用し、気分を安定させる「セロトニン」の働きも助けています。そのため急に減ると、もの忘れや思考のもやつき、集中力の低下が起こりやすくなると考えられています2)。
② 睡眠の質の低下との悪循環
更年期は、ほてりや発汗、不安感などで睡眠が浅くなりやすい時期です。睡眠不足は日中のぼんやり感を強め、「眠れない → ぼんやりする → さらに不安で眠れない」という悪循環に陥りやすくなります。
③ ストレスと自律神経の乱れ
更年期は、子どもの独立や、親の介護、仕事の転機など、人生の大きな出来事が重なりやすい時期でもあります。こうした心理的なストレスは、自律神経のバランスを乱し、脳の働きにも影響すると考えられています。
更年期のブレインフォグ対策

ブレインフォグは「気合いで治す」ものではありません。大切なのは、日々の習慣を、少しずつ整えていくことです。
睡眠の質を整える
就寝・起床の時間をできるだけ一定にし、寝る前のスマホやカフェインを控えることが基本です。厚生労働省の睡眠ガイドでも、6時間以上を目安に自分に合った睡眠をとり、「ぐっすり休めた」という満足感(睡眠休養感)を大切にすることがすすめられています3)。寝室を暗く静かに保つ、寝る前にぬるめの入浴をするなども効果的です。
栄養バランスのとれた食事
脳の働きをサポートするためには、特定の食材に偏らず、栄養バランスを意識した食事が大切です。意識して取り入れたい食材の例として、以下が挙げられます。
- 大豆製品(豆腐・納豆・豆乳):エストロゲンと似た働きを持つとされる大豆イソフラボンを含む
- 青魚(さば・いわしなど):脳の働きをサポートするオメガ3脂肪酸を含む
- 緑黄色野菜・全粒穀物:神経の働きに関わるビタミンB群を含む
3食を規則正しく、主食・主菜・副菜をそろえる意識を持つだけでも、体と脳のコンディションは整いやすくなります。
適度な運動で脳血流アップ
ウォーキングや軽い筋トレなどの有酸素運動は、脳への血流を促し、認知機能の維持に役立ちます。1日およそ8,000歩を目安に体を動かしましょう。余裕があれば、軽い筋トレを取り入れるのもおすすめです。時間がなければ、階段を使う、一駅歩くなど、日常で体を動かす工夫から始めてみましょう4)。

ストレスマネジメント
深呼吸、マインドフルネス、好きな音楽を聴く時間など、自分なりのリラックス法を持ちましょう。「全部こなさなきゃ」という気持ちを少し手放して、頼れるところは周りに頼る勇気も、この時期には必要です。
脳を心地よく使う習慣
新しいことへの挑戦、人との会話、読書など、脳に適度な刺激を与える習慣もブレインフォグ対策に有効と考えられています。ただし「脳トレを頑張らなきゃ」と義務感で取り組むと逆効果になることも。楽しみながら続けられるものを選びましょう。
受診を検討したいサイン
セルフケアを続けても改善が見られない、または次のようなサインが見られる場合は、無理せず医療機関で相談しましょう。
- 仕事や家事に明らかな支障が出ている
- 強い不安感や抑うつ気分が続いている
- もの忘れの頻度や内容が、明らかに以前と違う
- 同じことを何度も聞き返してしまう
- 家族から心配されることが増えた
相談先は、婦人科・更年期外来が第一選択です。気分の落ち込みや不眠が強い場合は、心療内科や精神科を頼るのもよいでしょう。「これくらいで受診していいのかな」と迷う方も多いですが、相談することで原因がはっきりし、対処の幅が広がります。
更年期のブレインフォグと上手に付き合うために
この記事では、更年期に起こりやすい「ブレインフォグ」について、考えられる原因や日常でできる対策についてお伝えしました。
更年期のブレインフォグは、誰にでも起こりうる一時的な変化です。「自分が衰えた」「能力が落ちた」と責める必要はありません。睡眠・食事・運動・ストレスケアといった基本を整えながら、必要に応じて医療機関の力を借りる。そんなふうに、自分の体と上手につき合っていく時期と捉えてみてください。

出典
[1] 日本経済新聞「更年期で記憶力低下 女性ホルモンの『ゆらぎ』が原因」
[2]「Brain fog during menopause(更年期のブレインフォグ)」Stute P, Gynäkologische Endokrinologie, 2023






