「お風呂に入りたくない」のはなぜ?更年期にやさしい対処法

最近、「お風呂に入りたくない」と感じることはありませんか?
以前は疲れていてもシャワーくらいは浴びられたのに、今は体がだるくて動けなかったり、すぐにのぼせるため入浴が億劫に感じたり。
こうした変化に戸惑い、「自分が怠けているだけなのでは…」と自分を責めてしまう人も少なくありません。でもそれは怠けではなく、体と心が変化しているサインです。
この記事では、更年期にお風呂がつらくなる理由と、無理をしないで続けられる入浴の工夫をわかりやすく解説します。
「風呂キャン」って私のこと?お風呂がしんどい50代女性
55歳の美喜子さん(仮名)。最近、なぜかお風呂に入るのがとても億劫になってしまいました。湯船に浸かるどころか、シャワーを浴びるのさえ面倒で、気づけば「今日はもういいか」とやめてしまう日もあるそうです。
そんな自分に対して「だらしない」と悩みを抱えていたとき、ネットで「風呂キャン(=お風呂キャンセル)」という言葉を見かけてハッとしたといいます。——「これ、まさに私だ」と。
どうやら同じように感じている人が少なくないらしいと知って、少しホッとしつつも、「でも、なんでこんなにお風呂がしんどいんだろう」と、原因が気になっている様子です。
更年期に「お風呂に入りたくない」と感じる2つの理由
お風呂がつらくなるのは、単なる気持ちの問題ではありません。更年期のホルモン変動によって、体調や気分が揺らぎやすくなり、結果として入浴が負担に感じられるのです。
理由1|やる気が出ない・何もしたくなくなる
更年期の大きな変化は、女性ホルモン(エストロゲン)が急激に低下すること。エストロゲンは自律神経とも深く関わっており、減少すると次のような症状が出やすくなります。1)
- 体のだるさ、疲労感
- 抑うつ
- 意欲の低下
- 頭が重い
- 腰痛、肩こり など
こうしたやる気が出ない・何もしたくないような状態では、お風呂に入るための動き出しが極端にしんどくなります。入浴は「着替える」「体を洗う」など、小さな作業の連続。以前は当たり前にできていたことが、大仕事のように感じられるのです。
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理由2|ホットフラッシュのほてり・汗でのぼせる
ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり・発汗)は、更年期の代表的な症状です。50代の女性では「顔がほてる」と感じる人は約37%、「汗をかきやすい」と感じる人は約45%と報告されています。2)
ホットフラッシュがあると、入浴はどうしても負担になりがちです。例えば、
- お湯に入っただけで一気に体が熱くなる
- 息苦しさや動悸が出る
- お風呂上がりに汗が止まらない
といった不快感が重なります。熱めのお湯や長風呂は体への負担を大きくし、ゆっくり浸かるはずが逆に疲れてしまうこともあります。そのため、「今日は入るのをやめておこう」と感じてしまうのも自然な反応です。無理に頑張らず、体調に合わせた入浴方法にすることが大切です。
お風呂に入れない時はどうすればいい?
「入らなきゃ」と思うほど気が重くなるもの。 更年期の入浴は、頑張らないケアに切り替えるのがポイントです。
「1分シャワー」で汗だけ流す
しんどい日は、1分だけの超時短シャワーでも十分です。汗のベタつきやにおいは、軽く流すだけでもかなり違います。
- 首・脇・デリケートゾーン・足の付け根など汗がたまりやすい部分を重点的に流す
- 湯温は38〜39℃のぬるめ
- 体を洗わなくても大丈夫
「全部やらなきゃ」と思うほどハードルは上がってしまいます。まずは今日できる最低限だけと自分にゆるくOKを出してあげましょう。短時間のシャワーは体の負担がぐっと軽くなりますし、「入浴しなきゃ」というプレッシャーからも解放されます。完璧を目指さず、できる範囲の清潔ケアを続けましょう。
無理に入らなくてもOK!ボディシートで拭いてさっぱり
どうしても動けない日は、ボディシートで拭くだけでも清潔を保てます。更年期は汗をかきやすいので、こまめに拭くことで不快感も減らせます。
大切なのは、入浴できない自分を責めないこと。体調に合わせて負担の少ないケアを選ぶことで、余計なストレスをかけずに過ごせるようになり、結果的に更年期の体調を整える助けにもなります。
お風呂に入りたくなる【お楽しみ】を作る
更年期のしんどさで体が重い日は、「入らなきゃ」と思うほど気持ちがますます疲れてしまいます。そんなときは、入浴をタスクではなく、ちょっとした楽しみに変える工夫も効果的です。
お気に入りの香りや音楽をプラス
香りや音楽は、自律神経を整える働きやリラックス作用があり、緊張や気持ちの重さをやわらげてくれます。3) ラベンダーやカモミールなどのアロマを数滴たらしたり、ヒーリング系の音楽を流すだけでも、「面倒だな…」という気持ちがふっと軽くなる人は多いです。
さらに、照明を少し落としたり、キャンドルを使ったりすると、入浴が日常の延長ではなく、少し特別な時間として感じられるようになります。ちょっとした演出でも、「少しだけ入ってみようかな」と思えるきっかけになるかもしれません。
お風呂上がりに「ごほうび」
しんどくても「終わったら楽しみがある」と思えると、行動しやすくなることがあります。
- 自分が好きなスキンケア
- 見たかった映画やアニメを流す
- 小さなチョコやフルーツを食べる
- 推しキャラのパジャマに着替える
など、ほんの些細なことでもOKです。こうしたお風呂上がりのごほうびを用意しておくことは、入浴のハードルを下げるだけでなく、気持ちを前向きにする助けにもなります。更年期は自己肯定感が下がりやすい時期だからこそ、自分をねぎらう小さな時間が、心の回復につながります。
「入れない日」があっても大丈夫
この記事では、お風呂に入りたくないときの更年期にやさしい対処法についてお伝えしました。「お風呂がしんどい」「入りたくない」と感じるのは、ホルモン変動による自然な反応であり、決して怠けではありません。
無理に全身浴をしなくても、「1分シャワー」やボディシートでの軽めのケアで十分です。頑張りすぎると、かえって心と体の負担が増えることもあります。こうしたしんどさややる気の低下も、更年期の症状のひとつとして受け止めてよいのです。
「今日は入れなかったけど、それでも大丈夫」と思えるだけで、心の負担はぐっと軽くなります。体も心もやさしくいたわりながら、自分のペースで更年期を過ごしましょう。
参考
- 一般社団法人 日本女性医学学会. よくある女性の病気【更年期女性に認められる症状】.(参照日: 2025‑11‑20)
- 厚生労働省. 「更年期症状・障害に関する意識調査」.P52.(参照日: 2025‑11‑20)
- 精神負荷後回復期における香りや音楽提示が生体に与える影響.(参照日: 2025‑11‑20)






