生理前の「ぎっくり腰のような痛み」は病気のサイン?対処法を解説

「まるでぎっくり腰」生理前の腰痛はなぜ起こる?
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生理にともなう腰痛に悩まされている女性は少なくありません。人によって、生理前になるとぎっくり腰のような強い痛みが起こることもあります。

腰が砕けそうになるほどの痛さに「何かの病気なのでは?」と心配になってしまうかもしれません。

今回は、生理前になぜぎっくり腰のような痛みが起こるのか、痛みをやわらげる対処法についてご紹介します。

目次

毎月歩けないほど右側の腰が激痛「ぎっくり腰?」

40歳の美琴さん(仮名)。ここ最近、生理前になると、まるでぎっくり腰のような強い痛みに襲われるようになりました。

立ち上がるのもつらいほどで、最初は腰を痛めたのかと思ったほど。ところが、生理が始まると自然に痛みが落ち着くため、「これって生理と関係してる?」「何か病気なの?」と毎月憂うつな気持ちで生理前を迎えています。

生理前のぎっくり腰のような痛みは《2つのホルモン》が原因

生理前に起こるぎっくり腰のような痛みは、二つのホルモンの変化が大きく関わっています。

主な原因の一つは、プロスタグランジンというホルモンです。プロスタグランジンには、子宮を収縮させて月経血の排出を促す作用があり、生理前から分泌量が増え始めます。

プロスタグランジンは痛みの原因物質ともいわれていて、過剰に分泌されると生理痛だけでなく生理前の腰痛も引き起こしてしまうのです。また、血管や筋肉を収縮させる働きがあるため、骨盤内の血流が滞りやすく、腰の痛みを強めてしまうことがあります。

腰痛の原因となるもう一つのホルモンは、リラキシンというホルモンです。リラキシンには、生理中に経血をスムーズに排出できるように、骨盤周りの関節や靭帯をゆるめる働きがあります。

リラキシンの作用によって、生理前は骨盤が不安定になることから、腰に大きな負担がかかりやすくなります。そのため、普段は何ともない動作でも腰のゆがみや負担につながり、腰痛が起きやすくなるのです。

強い腰痛は《更年期》も関係している!?

更年期世代の女性に起こる生理前の強い腰痛は、女性ホルモンの変動も関わっています。

40〜50代になると、卵巣機能が低下して、エストロゲンという女性ホルモンの分泌が急激に減っていきます。それにともなって、自律神経のバランスも乱れやすくなります

自律神経の働きの一つは、血流を調整すること。そのため、自律神経のバランスが乱れると、血行不良になり、腰痛が起こりやすくなるのです。

また、加齢により筋力が低下することも、更年期世代で腰痛につながる要因の一つです。筋力が低下すると正しい姿勢を保ちにくくなります。姿勢をなんとか維持しようとすることで、筋肉が過度に緊張してしまい、腰痛の原因につながってしまうのです。

加えて、デスクワークなど座りっぱなしの生活をしていたり、運動不足だったりすると、腰痛を強めてしまう要因になります。

婦人科で相談!子宮・卵巣の病気の可能性も

生理前の腰痛は、ホルモンの変動によるものだけではありません。子宮や卵巣などの婦人科疾患によって、腰痛が起こっている可能性もあります。

たとえば、月経前症候群(PMS)1)や子宮内膜症・子宮筋腫・卵巣腫瘍などがあると、生理痛だけでなく腰痛が起こることが多くあります。子宮筋腫や卵巣腫瘍の場所や大きさによって、腰の右側だけ・左側だけが痛いといった風に、片側だけ腰痛が起こるというケースも少なくありません。

症状には個人差がありますが、次のような場合は念のために婦人科で相談しましょう。

オフ日常生活に支障を来たすほどの強い腰痛

オフ生理以外の日にも腰痛がある

オフ生理のたびに腰痛が悪化する

生理前のぎっくり腰のような痛み【対処法】

腰が砕けそうになるくらい強い痛みがあると、日常生活に支障を来たしてしまいがちです。自身でできる対処法を取り入れることで、腰痛の改善につながるかもしれません。

ストレッチ

生理前の腰の痛みがつらい時は、ストレッチをしてみましょう。骨盤周りの筋肉の緊張がほぐれ、骨盤を正しい位置に戻すことで、腰痛をやわらげてくれます。

また、体を動かすことで血流がよくなり、体が温まるので痛みの緩和に効果的。無理をせず、気持ちいいと感じるペースでゆったりと行うと、リラックス効果も得られるのでホルモンバランスを整えることにも役立ちます。

鎮痛薬(痛み止め)は飲んでもいい?

「鎮痛薬(痛み止め)は体によくない」と思っている人もいるかもしれませんが、腰痛がつらいのであれば、我慢せずに鎮痛薬を飲んでも構いません

ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の鎮痛薬は、痛みの原因物質であるプロスタグランジンの産生を抑えてくれる作用があります。

一般的に、生理前の腰痛が現れる時期などに、鎮痛薬の用法用量を守って飲めば副作用の心配も少ないとされています。腰の痛みがひどくなる前に、鎮痛薬を上手に活用しながら、なるべく快適に過ごしましょう。

鎮痛薬が効かないほど痛みがひどい場合は、早めに医療機関を受診してください。

生理前の砕けそうな腰痛は我慢しないで

生理前のぎっくり腰のような痛みは、月経周期にともなうホルモンの変動が関わっていることをお伝えしました。

毎月訪れる生理。女性にとって生理前の腰痛は仕方ないととらえる人も多いですが、痛みを我慢する必要はありません。生理前の腰痛は、月経周期にともなって体に負担がかかっているというシグナル。そのため、生理前は自身の体を労わり、いつもよりも力を抜いてゆったりと過ごしてもよいかもしれませんね。

今回ご紹介したような対処法を試しても腰痛が改善しなかったり、症状が強くなったりする場合は、遠慮せずに婦人科で相談しましょう。

参考

  1. 日本産科婦人科学会. 月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS). https://www.jsog.or.jp/citizen/5716/
「まるでぎっくり腰」生理前の腰痛はなぜ起こる?

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この記事を書いた人

榎本真美子のアバター 榎本真美子 【看護師・保健師】

看護師・保健師
女性の健康総合アドバイザー
薬膳コーディネーター

都内総合病院の婦人科・乳腺科などに勤務後、女性総合診療のクリニックに従事。女性ホルモンと体・心のつながりについて理解を深め、さまざまな患者さんをサポートする。
その後、家族の転勤に伴い海外生活を経験。
健康管理やセルフケアの大切さを実感し、看護師ライターとして健康に役立つ情報発信に努めている。

このコンテンツは、病気や症状に関する知識を得るためのものであり、特定の治療法や専門家の見解を推奨したり、商品や成分の効果・効能を保証するものではありません。

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