「喧嘩しない=仲がよい」とは限らない。カップルが深い関係にならない理由
こんにちは。リレーションシップコンサルタントの此花わかです。
「喧嘩もしたことがないのに、パートナーから別れを切り出された」「仲よしのはずなのに、結婚へと結びつかない」「仲はよいけどセックスをしない」という悩みをよく聞きます。婚姻やセックスがなくとも、幸せなら問題はありません。
しかし、「仲よし」なはずなのに恋愛関係が前へ進まないのは、そのカップルに「親密さ」が欠如していることが大きな理由だと性科学では考えられています。
今回は、スウェーデンの著名な心理カウンセラーでセックスセラピストでもあるマーリン・ドレヴスタム氏への取材をもとに、愛とパートナーシップの指標である「親密さ」についてお話しましょう。
親密さとは?
「親密さ」の重要性は、WHOが規定する”セクシュアリティ(性のあり方)”にも記されています。
「人間の中心要素は、生涯を通じて、性、ジェンダーアイデンティティと役割、性的指向、エロティシズム、喜び、親密さ、生殖を包含するものである」(※)
実際に、セックスの問題を含むカップル・カウンセリングを行うマーリン・ドレヴスタム氏は、セックスのハウツーではなく“親密さを高める”治療を施しています。
親密な関係、7つの特徴
「親密さ(Intimacy)」を英語でゆっくり読むと「Into Me See」となります。ドレヴスタム氏によると、それは「私の中身を見て」という意味で、「親密な関係」には7つの特徴があります。
① 一緒に過ごす瞬間を共有している
一緒にいる時間が長いという意味ではなく、ともに過ごす瞬間の喜怒哀楽を共有しているかどうか、ということ。
② 距離が近い
フィジカルな距離ではなく、感情の距離。お互いの感情に触れ合っているでしょうか?
③ 安心できる
カップルのどちらかが不安を抱いている関係は、親密なパートナーシップと言えません。
④ 信頼している
一緒にいなくてもパートナーを信頼できるでしょうか?
⑤ 透明な関係性
「パートナーの友だちや家族に会ったことがない」、「パートナーがどのような将来を目指しているのか分からない」、「カップルとしての方向性が見えない」など付き合っているのに2人の関係がどこか不透明であれば親密なリレーションシップとは言えないでしょう。
⑥ 共感しあう
パートナーの感情や経験を想像して思いやることができていますか? お互いに共感しあっていないと親密さが欠けているということ。
⑦ 本質を見せあっている
お互いの本音や弱さを理解しあってはじめて親密な関係になれます。ネガティブな部分だけではなく、自分の考えや将来の夢なども話せて、ポジティブにお互いに影響しあう関係が親密だと言えるでしょう。
3種類の親密さ
マーリン・ドレヴスタム氏によると、カップルの一方が不満を抱えているとき、3種類の親密さのどれかが欠如しているそう。
① 身体的な親密さ
目を見つめ合ったりスキンシップをとったりすると幸せホルモンのオキシトシンが放出されます。
オキシトシンは愛着や信頼を感じ絆を深める作用があります。また、痛みを軽減する、ストレスホルモンのコルチゾールを低下させる、血圧を下げる効果も。
だからスキンシップを求めるのは人間の根源的な欲求と言えるでしょう。
身体的親密には「非性的スキンシップ」と「性的スキンシップ」の2タイプがあり、非性的スキンシップはプライベートゾーン(水着で隠れる部分)以外の髪を触ったり、肩に触れたり、手をつなぐなどのスキンシップをさします。
性的スキンシップは性的行為のこと。
この2タイプのスキンシップのバランスがとれていないと、カップルの片方は”性的モノ化”されているように感じてしまうそう。
特に男性に伝えたいのが、スキンシップには非性的スキンシップも必要だということです。
非性的スキンシップなしに、パートナー女性のプライベートゾーンを自分の”モノ”として触るのはやめましょう。
② 感情的な親密さ
心を開き、感情を素直に表現している関係。
例えば、「実は今日、仕事で嫌なことがあった」「10年後にはどんな自分でいたいか」「義理母に対して不満を抱えている」など、あらゆる感情をオープンにしている親密性のことを差します。
お互いを励まして褒め、優しさと信頼に包まれた関係で、性的な関係でなくとも感情的な親密さを育むことができます。
③ スピリチュアル・知性的な親密さ
宗教的価値観、道徳観、人生観や知性を共有している親密性。
ロマンティックな関係でなくても、スピリチュアルで知性的な親密さを築けます。
これら3種類の親密さのうち、ひとつを深めていくうちに、ほかの種類の親密さも自然と深まっていくことがあるとドレヴスタム氏は言います。
「親密」じゃないのは?
最後に「親密さ」から離れている関係の特徴を紹介します。以下のような行為があれば、カップルは深い部分でコネクトするのが難しいでしょう。
裏切り
「裏切り」の定義は人それぞれなのでパートナーと価値観のすり合わせをしておくのが鉄則。
特に「浮気」において、ほかの人とのデートやLINEのやりとりを浮気と捉える人もいれば、風俗通いを浮気と捉えない人もいます。
秘密
カップルは何でもさらけ出さなければいけない、という意味ではありません。
例えば、過去の恋愛体験や恋人の詳細、パートナー以外の人に対するちょっとした性的妄想や感じる魅力などをいちいちパートナーに知らせたりするのは、思いやりにかける言動です。
逆にパートナーが大切に思っていること、パートナーに影響することに関して秘密をもつことはよくないでしょう。
屈辱
「頭が悪い」「太ってるくせに」「稼ぎが悪い」など、屈辱的な発言をする/されると親密な関係を築けません。
たとえ、パートナーが生活の面倒を見てくれて浮気をしなくとも、屈辱を与えられる/与えるリレーションシップでは深い絆を築くのが難しくなります。
批判
問題を解決するためのポジティブな批判はよいですが、パートナーを常に批判的に見て文句を言う関係性は親密と呼べないでしょう。
支配欲
「働いてほしくない」「友だちと出かけてほしくない」「いつも自分と一緒にいてほしい」「パートナーのPCやスマホをチェックする」「過去の恋愛経験を根掘り葉掘り聞く」など、一見愛情のように思えますが、パートナーの自立を妨ぎ、過剰な嫉妬をするのは“愛”ではなく”依存や支配欲”に突き動かされた言葉。
それぞれに自立した個人でないと対等な愛は育めません。このような支配的な言葉には気をつけましょう。
「いつもパートナーにニコニコして感謝を見せよう」というアドバイスをよく見聞きしますが、それは間違い。
怒りや悲しみといった気持ちはネガティブに見えますが、人間にとって必要不可欠な感情です。悲しみがあるから喜びも感じられるし、怒りがあるから優しさも身にしみます。
こういった人間の根源的な感情をパートナーと共有できないと、パートナーと魂レベルでコネクトできず、表面的な関係にとどまってしまいます。
「恋愛関係がなぜか前に進まない」「付き合っていた頃の愛情がすっかりなくなってしまった」「急に別れを告げられた」と感じる方は、ご自分のパートナーシップに「親密さ」があるかどうかチェックしてみてくださいね。
【取材協力】
マーリン・ドレヴスタム
ストックホルムを拠点に性科学者、作家、セラピスト、講師として多方面に活動。認知行動療法、人間の感情と行動に焦点をあてたリレーションシップセラピーを行う。著書に『Lust & Olust』など。
【参考】