「私ってくさいですか……?」ニオイが気になる女性の話

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「私ってくさいですか……?」唐突に尋ねてきた女性

香水のニオイがきつい、少し疲れた様子の女性が、店内で商品陳列をしていた私に話しかけてきました。

以前勤務していた調剤薬局では、処方箋を受け付けるカウンターとは別に、コスメや市販薬など様々な商品が陳列棚に並べられていました。

「どなたかに言われたのでしょうか?私には感じられませんが」

といったんお答えしたものの、ニオイといっても要因は様々です。

ニオイのご相談は口臭、ホットフラッシュの汗による体臭、デリケートゾーンのニオイ、足のニオイなど、場所も用途も多岐にわたるため、どの商品をおすすめしてよいかわからず、しばらくその女性とお話をしていました。

更年期以降の女性が気になり始める、3つのニオイ

特に更年期以降の女性はホルモンの影響で、大きく分けて以下の3つのニオイが気になり始めます。

1. 口臭

ホルモンバランスの乱れは自律神経のバランスに影響し、唾液の分泌量にも影響を及ぼします。

これが口の乾燥や口臭の原因となるのです。

1日に1〜1.5 リットルも出るといわれる唾液の分泌量は、30代をピークにして減少し始めます。

一方で唾液腺や口腔粘膜にエストロゲン受容体がありますが、エストロゲンの減少が口腔内を乾燥させるのかどうかは不明です。

また、仕事や環境変化のストレスや、薬の影響による唾液の分泌量の減少が理由で口臭が気になる、という人も増えてきています。

2. ホットフラッシュの汗による体臭

一般的に汗はエクリン腺とアポクリン腺と呼ばれる二つの穴から出てきます。

エクリン腺は全身に分布し、主に体温調節のために排出されます。

一方、アポクリン腺はワキの下に多く分布し、毛根近くにあります。

アポクリン腺から出る汗は白く濁って、脂質やタンパク質などニオイの元となる成分を多く含んでいます。

もともとはフェロモンの役割をはたしていたとも言われています。

汗は血液を原料としています。

汗自体にはニオイがありませんが、表皮の常在菌などと触れることにより酸化し、徐々にニオイが発生します。

更年期のホットフラッシュによる汗は、脇や首など上半身に大量にかくため、体臭の原因になりやすいと言われています。

またホットフラッシュの汗にはアンモニアなどが多く含まれ、汗そのものにニオイがあります。

女性にも加齢臭がある?

洗剤のコマーシャルで「パパの枕のニオイが気になる!」というようなセリフがあるように、加齢臭やミドル臭は男性のイメージが強いですよね。

実は女性ホルモンであるエストロゲンには、皮脂の過剰分泌や酸化を抑える働きがあります。

閉経前から徐々にエストロゲンが減少し、相対的に男性ホルモンの働きが活発になり、皮脂の分泌や酸化が促進され、加齢臭の原因になると言われています。

酸化ストレス

通常私たちの身体の中では、活性酸素の産生と抗酸化防御機構のバランスが保たれています。

しかし紫外線、放射線、大気汚染、たばこ、薬剤、酸化された物質の摂取や、過度な運動やストレスが活性酸素の産生を過剰にし、抗酸化防御機構のバランスを崩します。

この崩れた状態を酸化ストレスといいます。

また肉体的、精神的なストレスを受けると活性酸素が発生し、皮脂が酸化して体臭が強くなると言われています。

閉経と酸化ストレスについて

体に必要な栄養素である鉄分は、酸化ストレスを亢進させる働きもあります。

エストロゲンには活性酸素を抑える働き=抗酸化作用と細胞膜安定化作用があります。

閉経後は月経による鉄の喪失が少なくなるため、酸化ストレスが増加すると考えられています。

参照:Ayres S、Abplanalp W・PMID: 9611149

また、年齢と共に酸化ストレスが上昇し、女性のほうが男性より酸化ストレス値が高い事もわかっています。

3・デリケートゾーンのニオイ

エストロゲンは膣内を酸性に保ち、様々な病原菌の増殖を阻止し、子宮や卵管・腹腔内に細菌感染が及ぶのを防ぐ自浄作用があります。

更年期以降の女性はエストロゲンの減少により膣の酸性が保たれず、細菌感染を引き起こしやすくなってしまうのです。

また性行為が原因となり、雑菌が増え、炎症をおこし、デリケートゾーンのニオイの原因となる場合もあります。

ストレスからくるニオイの発生

冒頭の女性のお話しですが、実は彼女は職場で嫌がらせ行為を受けていたそうです。

ストレスによる自律神経の乱れが原因で唾液の分泌が低下し、口腔内も乾燥しやすくなります。

職場での会話も少なくなり、口の中に細菌が増え口臭が発生しやすくなったのかもしれません。

過度の緊張による汗が多くなり、体臭が気になり始めたのかもしれません。

もしくは、それらの臭いをかき消すために付けた香水のにおいがきつくなってしまったのかもしれません。

ストレスは身体の不調として現れることも多い

全国の20代から50代の女性計800名を対象に「職場のコミュニケーションに関する意識調査」を第一三共ヘルスケア株式会社が実施した結果(2018年)、職場でのストレスで上位を占めるのは対人コミュニケーションによるものでした。

全体の34.3%がここ数年で職場のストレスが増加していると感じ、さらに会話不足の人ほどこの傾向が強いそうです。

職場でストレスが重なったり、長期的に続いたり、個人の限界を超えたときに、何らかの健康障害が発生します。

ストレスといえば気分の落ち込みや、やる気の低下などを思い浮かべる人が多いと思いますが、実は最初に身体の不調として出る場合も多いのです。

身体の不調は例えば、頭痛やめまい、冷や汗などがあげられますし、肌荒れや円形脱毛、突発性難聴が起こる人もいます。

性格や行動パターンで言えば、自己評価の低い人や不安の強い人、競争心の強いタイプの人がストレスを受けやすく、強く出現しやすいといわれています。

この状態を放置していると、集中力、思考力が低下し、仕事のパフォーマンスも落ちてしまいます。

リモートワークが増えて、誰とも会わない、話さなくなった人もいることでしょう。

日頃から相談できる相手をみつけておく、趣味や息抜き方法をみつけておくなどを意識して欲しいと思います。

最後に私の体験談を少し

実は、私も緊張すると脇から汗を多くかきます。

講演会など、外出先で慌てないために、お守り代わりに拭き取り式のボディシートをいつも鞄の中に入れています。

私のこだわりにすぎませんが、いつも無臭タイプを購入します。

あらかじめお気に入りアロマオイルをエタノール10mlくらいに一滴だけ垂らし、溶かしておきます。

購入してすぐに開封したボディシートに、エタノールで希釈したアロマオイルを一滴だけしみこませておきます。

外出先で汗が気になった時、気分転換をしたい時に、さっとシートで体を拭き取ります。

香りによる心理的効果もあり、私にとっては欠かせないグッズです。

ただし、ベルガモットのように光毒性(肌についた状態で紫外線にあたると皮膚にダメージを与える成分が含まれている)のあるオイルもあります。

オイルに記載されている注意事項をよく読んでからお試しくださいね。

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この記事を書いた人

岡下真弓のアバター 岡下真弓 【薬剤師】

フリーランス薬剤師
JAAアロマコーディネーター協会認定講師

化粧品メーカー研究開発や薬剤師の知識を生かし、女性の健康と美容をテーマにした講演活動を行っています。 歳を重ねるにつれ、衰えや失われていくものはあります。また更年期世代は仕事で負う責任が大きくなり、後ろ向きな気持ちになりがちです。私は人の美しさとは、その人の生き方次第で変えることが出来ると多くの患者様から教わりました。

「歳を重ねる事をネガティブに捉えずセクシーに健康に楽しみましょう」

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