女性のための鍼灸師が教える!消化器症状編〜食欲不振編〜あなたはどのタイプ?
おなじみ「東洋医学の観点から更年期に向き合うシリーズ」。今回からは消化器症状に関するテーマを3回に分けて、ご紹介していきます。
第1回目のテーマは、『食欲不振』。
更年期の症状として、消化器に関連する問題は多数聞かれます。その中でも『食欲不振』は、ひどい場合は体力や筋力の低下、友人との会食が苦痛になったりと、あらゆる面で影響してきます。
食物は人間の体を構成している源となるため、生きていく上で必要不可欠です。でも、わかっていても食欲がわかない、食べるのが苦痛に感じる……こういった症状が更年期の一つとして現れてきます。
今回もまずは食欲不振の原因を理解し、東洋医学的視点でのセルフケアを学んでいきましょう。
消化器症状編 ~食欲不振~
食欲とは、「食物を摂取したい」という人間の生理的な欲求です。食欲は、脳における様々な要因が影響して起こります。
脳の視床下部というところに、食欲を「増強させる」機能と「減少させる」機能があります。それらは体内にある神経やホルモン、また心理的な要因や視覚、臭覚、味覚、食物に対する記憶など、様々な要素が関連して、増強また減少します。
食欲不振は様々な疾患で起こると言われており、特に①内科疾患、②精神疾患が多いと言われています。
①内科疾患
胃炎、腸炎、肝炎といった内臓の炎症、また感染症等でも食欲不振になると言われています。
②精神疾患
うつ病や神経性食思不振症(拒食症)などが該当します。
更年期症状で現れる体の不調は、女性ホルモンの低下により自律神経が乱れることで起こります。食欲不振の場合は、食事量も少なく、また好みも偏るなどして、摂取する栄養が偏ってしまい、症状を悪化させる原因になることもあります。
更年期となると女性ホルモンの中でもエストロゲンというホルモンが低下していきますが、イソフラボン(大豆製品などに含まれる)は、エストロゲンと同じような働きをすると言われています。そういった必要な栄養素を少しでも摂取できるような、食事を心がけていくことも大切です。
しかし、食欲不振以外に、悪心、嘔吐、下痢や便秘、また急激な体重低下や全身倦怠感がある場合は、①や②または他の疾患以外の可能性もあるため、専門医へ受診することをお勧めします。
東洋医学でいう「食欲不振」とは?
東洋医学でも、食欲不振という考えは存在します。「不欲食」や「不欲飲食」と言われ、消化機能を司どる五臓の中の「脾」のや六腑の中の「胃」の機能が関連しています。
(六腑は、五臓と同様、体の臓器に加えその周りの機能を含めた概念です。五臓については、初回コラムにて)
「胃」は、食べたものを受け入れる場所であり、消化し、体に必要なものと不必要なものを分ける役割をしています。そのため「胃」の機能が低下すると、食べられない、ものが喉を通らない、といった症状になります。
「脾」は、体に必要な気や血を食物から作り、体中に循環させる役割をします。「脾」の機能が低下すると、お腹が空かない、食べてもすぐお腹が張るといった症状になると言われています。
また、それ以外にも五臓の「肝」の影響も大きいと言われています。「肝」は体全体の機能を調節したり、栄養素である血を作ることが働きとなります。「肝」は「脾」と密接に関係しているため、「肝」が原因となって「脾」に影響が出ると食欲減退などの症状が出てきます。
あなたはどのタイプ?
食欲不振という症状に加え、その他の特徴などから、ご自身の体を評価していきましょう!
一つでもチェックが当てはまれば、そのタイプに該当します。タイプはどれか一つというわけではなく、いくつも当てはまる方もいるかもしれません。
①”ストレスが原因”の食欲不振タイプ
□胸や脇のあたりがはる
□ゲップがよく出る
□鬱っぽくなる
□イライラして起こりっぽい
□胸やけがする
②”暴飲暴食が原因” の食欲不振タイプ
□甘いものや脂っこいものが多い食事が多かった
□口が粘つく
□便が緩め
□体が重い(むくみやすい)
□肌が黄色っぽい
③”栄養不足が原因” の食欲不振タイプ
□少し食べるとお腹が張る
□疲労や倦怠感が強い
□息切れしやすい
□空腹感がない
□無気力
①のタイプは、ストレスなどが起因して起こる食欲不振のタイプです。ストレスなど感情のコントロールを司どる五臓の「肝」は、消化機能の「脾」へ影響しやすいと言われています。そのため、過度なストレスがかかると肝から脾へと強い影響が起こり、消化機能が乱れ食欲不振へと発展していきます。
②のタイプは、暴飲暴食、特に甘いものや脂っこいものを多く摂っていた方に見られます。過剰な甘さや油ものは、消化機能を司どる「脾」に影響し食欲不振が起こります。
③のタイプは、飲食の不摂生により、体のエネルギーである気と栄養である血が、体に必要な分作られていません。その上、長時間労働や肉体労働、また慢性的な疾患などにかかり、さらに「気」や「血」が消耗されている状態と言えます。そのため、体全体の機能に影響が出始めています。疲れやすかったり、気力がわかないというのは、全身のエネルギーが足りないことの現れとなります。
ツボ押しでセルフケア!
あなたはどのタイプでしたか?
東洋医学では、出現している症状を一つの病気と断定するのではなく、様々なことを複合して考えていきます。いくつも当てはまったため、自分の体の症状が悪いというわけではないので安心してください。大切なのは、自分の体の症状を理解し適切な処置をしていくことです。
それでは、それぞれのタイプに良いツボをご紹介していきます。
ツボは、1回に5秒間程度2~3回、押しやすい指で痛気持ち良い程度に押しましょう!
目安は、毎日1回。習慣化していくのがベストなので、朝起きたらベットの中で、お風呂を出た後に、など時間を決めて押してみてください。
①のタイプの方
◇太衝(たいしょう)
<位置>
足の親指と人差し指の間を足首側に触っていくと、止まるところ。骨と骨の間。
<効果>
ストレスの解消に良い。眼精疲労や筋肉の疲労にも効果がある。
②のタイプの方
◇豊隆(ほうりゅう)
<位置>
すねの骨の真ん中の位置。すねの骨の少し外側の筋肉の上。
<効果>
むくみの解消。胃もたれや胃痛に効果がある。
③のタイプの方
◇中脘(ちゅうかん)
<位置>
おヘソとみぞおちを線で結んで、2等分した真ん中。
<効果>
胃腸の働き、自律神経を整える。
※出典
矢野忠(2014年)レディース鍼灸 医歯薬出版株式会社
中医学基礎理論
http://www.hal.msn.to/bensho_ronji/ben121.html
※イラスト引用(上から順番に記載)
https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=841879&word=足の甲%2C足の指
https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=807136&word=脚%2C美脚%2Cエステ
https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=1245444&word=下着姿の黒髪女性の全身イラスト