性産業大国の日本人はなぜセックスレスなのか。ゆがんだ性意識の原因とは?

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性産業大国である日本は、セックスレス先進国。その矛盾は日本の性教育やゆがんだ性意識に原因があるようです。TRULY連載でおなじみ、此花さんが日本の性風習の歴史から紐解いて解説します。

こんにちは。リレーションシップコンサルタントの此花わかです。

女性の生理用品をレジで袋に隠し、性教育が多くの学校で実施されていないなど性がタブー視されている日本

一方で、他の先進国と違い、未成年を性的消費する広告規制や性風俗業に対する規制もゆるく、性的同意年齢は13歳(諸外国では15歳~17歳)。その上、世界のポルノコンテンツの6割は日本製だと言われています。

実際に、世界最大のポルノプラットフォームのひとつである「Pornhub」の最も検索されたワードに、”hentai”が1位、”Japanese”が2位にランクイン。(※1)。つまり、hentaiという言葉はもはや英語となり、Japaneseはポルノのいちジャンルになっているほど、日本は世界的な性産業大国になったということ。

円安も関係し、日本に買春ツアーに来る観光客のことも聞きます。世界有数の性産業大国であるのにもかかわらず、日本人の既婚者の過半数はセックスレス。この矛盾を本記事では探っていきたいと思います。

目次

ぶっちぎりセックスレス先進国、日本

日本のセックスレスは世界のメディアでも報じられています。少し古いですが、2005年にイギリスの調査会社Durexが41カ国を対象に行ったリサーチによると、日本人のセックスの頻度は年間45回で最下位

下から2番目のシンガポールの年間73回からも大きく引き離されています。第1位のギリシャは年間に138回と日本人の3倍以上!

もちろん、セックスの頻度が低くても、当事者が幸せならば何の問題もありません。しかし、日本人はセックスの満足度も世界で2番目に低いのです(最下位は中国)。

ちなみに、セックスに満足している人よりも、”満足していない人”のほうが多い国は、41カ国中、なんと日本だけ。セックスに満足している人の割合は世界平均だと44%ですが、日本だとわずか24%です。(※2)

駅前のどこでも簡単にセックスが買える国、日本。それなのに、私たちの性生活はなぜこのように貧しくなったのでしょう?

古代日本は性に大らかだった!

「性と日本人」(講談社文庫―日本人の歴史)の著書である樋口清之氏によると、古代日本人は、性は神が与えてくれた自然の摂理として受け止めていたそう。その名残が暗闇祭り、裸祭りや御田祭だといいます。

神の前で性と接触することで神の威力を高めて、それが人間の生産力と生命力を増す、という思想が根底にあったとか。

興味深いことに、この時代には男尊女卑の価値観もありませんでした。

「性差の日本史」(集英社インターナショナル 性差の日本史展示プロジェクト著)も、古代日本には女性首長も珍しくなく、現代で捉えられるような男女の二元的なジェンダーはなかったと記しています。

律令体制が本格化し、全ての人々を記載する全国的戸籍が作られた7世紀末から男女の制度区分が始まったそう。

律令制国家になるにつれ、それまで母系・男系混合の双系だった日本の”家”は、中世には男系中心の家が確立していきました。そして家父長権が強化されて夫婦の関係が重んじられ性別役割分業が生まれていったのです(※2)。

さらに、「性と日本人」を著した樋口清之氏は、仏教も日本の健康的な性意識を曲げたと主張します。殺生、偸盗、邪淫、妄語(嘘)、飲酒という五戒が、性は卑しく汚れたものだという意識を人々へ刷り込んでいったのだとか。

続き、江戸時代に入り儒教が封建社会の道徳基盤とされて、家を継承するために多くの子を生まなくてはいけなくなりました。そうして生まれたのが、男中心の性風習

女性の身体が商品化されていった

性が卑しいものとされる一方、江戸幕府は江戸、京都、大阪などの遊郭を公認するようになりました。江戸の吉原を頂点に全国の宿場や港町、鉱山町など様々な場所で買売春が行われるようになり、女性の身体が公に商品化されていきました。

加えて、明治時代には西洋の家父長制とキリスト教にもとづく処女信仰も入って来ます。こうして、性を卑しむ仏教、女性を蔑む儒教、女性の身体の商品化、儒教と西洋的価値観が入り混じった家父長制、キリスト教の処女信仰……これらの価値観が複雑に絡み合い、もともと大らかで自然だった古代日本人の性意識はゆがんでしまったのです。

第二次大戦後、公娼制度はGHQにより廃止され、1956年には売春防止法が制定されました。また、風俗営業法により「性風俗関連特集営業」が認められているため、売春から利益をあげる風俗店やスカウトといった“業者”は今も公然と活動しています。端的に言うと、遊郭文化は現代にも連綿と続いているとも考えられるでしょう。

こんなふうにセックスがビジネスにされてしまった現代の日本社会で、自分らしい自然な性のあり方を追求するのは非常に難しいと思いませんか?

とりわけ、日本政府は、人権教育やリレーションシップ教育を盛り込んだ包括的性教育を排除しています。その結果、多くの人々は男性目線のAVからセックスを学んでいます。これは非常に危険。なぜなら、AVは性の喜びに一番大切な”同意や思いやり”をめったに映し出さないからです。

ところが、今から1000年以上前の日本人のほうが、現代人よりも”性的同意”を知っていたという説も。

「性と日本人」によると、日本に現存する最古の医学書「医心方」の第28巻(全30巻)は10世紀後半に書かれたのにも関わらず、非常に健康的で正確な性の教科書だったそう。(※3)

日本最古の性医学書が説くセックスとは?

「医心方」は陰陽の和合が宇宙の原理だという東洋哲学が根底にあり、陰陽として天と地、男と女があると考えています。“天と地の陰陽が合体して初めて万物が所を得、人間も合体し、新しい生命を誕生させる”性の合体も自然に従い、抵抗、矛盾や傷つけあいがあってはいけない

男女は”完全な合意のもと”に同じ気持ちをもつようになったときに、完全な合一ができる。セックスをモノとして考えたり、相手を弄んだりせずに、男女両方が”平等に”喜びを感じないといけないと説いています(※3)。

今で言う、”性的同意”が実は1000年以上前の日本に存在していたとは驚きですよね!

古代日本人がもっていた健康的な性意識は、様々な要因でねじ曲がっていきました。その結果が、セックスレス、痴漢や盗撮天国、未成年の性的消費、、性犯罪の矮小化、性嫌悪、妻だけED……といった形として浮かび上がっているのではないでしょうか?

性はイヤらしい行為なのか、お金で買う娯楽なのか。セックスは相手を支配するものなのか、子供を生むためだけのものなのかーー。

セックスは、本来私たちの健康、幸せや尊厳に結びつく大切な人間のあり方です。一人ひとりが自分らしい性のあり方を実現するために、私たち日本人の性意識がどのように培われてきたのか、何が問題なのかを冷静に考える時が来ていると思います。

【参考】

※1……The 2022 Year in Review-Pornhub

※2……Japan, The Sexless Nation – The Oriental Economist

※3……「性と日本人」(講談社文庫―日本人の歴史) -樋口清之著

※4……「性差の日本史」(集英社インターナショナル)-性差の日本史展示プロジェクト著 

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この記事を書いた人

此花わかのアバター 此花わか 【リレーションシップコンサルタント】

ジャーナリスト
リレーションシップコンサルタント

アメリカの性とリレーションシップのコーチングスクールで学ぶ。セックスポジティブな社会を目指す「セクポジ・マガジン」を発信中。FRaU 、Newsweek、Huffpost、SPA!、FRONT ROW、GLITTERなどで執筆。

このコンテンツは、病気や症状に関する知識を得るためのものであり、特定の治療法や専門家の見解を推奨したり、商品や成分の効果・効能を保証するものではありません。

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