「恋に落ちる」は脳内で起こる。人はどのように愛するパートナーを選んでいるのか?

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なぜ私たちは恋に落ちるのかーー。愛はどこから始まるのかーー。

アセクシャル(性的に他者に惹かれない)、アロマンティック(他者に恋愛感情を抱かない)という性的指向がやっと可視化された現代では、「恋愛しなければいけない」「結婚して子どもを生まなければいけない」という社会規範の呪縛がとけつつあるように感じます。

しかし、セックスや愛はまだたくさんの人々にとって大きな関心の的。今回は、私たちが恋に落ち、パートナーを選ぶメカニズムについてお話します。

 

目次

「恋に落ちる」現象は脳内で起こっている!

恋愛、もしくは失恋中に胸が痛くなることから、人間の恋愛はハート(心)で起きるものと思っている人も多いかと思います。でも実際には、恋愛感情は脳内でプロセスされているのだとか。

 恋愛を飲み物のカクテルに例えると、脳はバーテンダーで身体はグラス。バーテンダーに色々なドリンクを混ぜてもらい、美味しいカクテルを作ってもらいますよね? 脳も同じように働きます。「あの人素敵だな」というシンプルな気持ちに、“ホルモンや化学物質”がミックスされて、突然「恋に落ちる」という興奮状態に陥ります。

ホルモンと化学物質のどのような組み合わせが恋愛感情を引き起こすのかは、個々に異なり予測できません。ホルモンや化学物質は全身へ様々な働きかけをしますが、その中でも恋愛感情に関わる役割としては、以下のものがあります。

 

恋愛感情を引き起こす「ホルモンと化学物質」をカクテルに例えると……

① オキシトシン

ストロベリー・ダイキリのストロベリーのような”甘い”感覚

脳下垂体から分泌されストレスレベルを下げて信頼を高めるので、“親密な絆”の形成を助けます。幸せホルモンとして有名です。

 

② アンドロゲン

ブラッディ・メアリーのタバスコのようなもので、恋愛のピリッとした”スパイス”

アンドロゲンは精巣で作られ、精子形成促進、思春期における外性器の発達や声変わり、筋肉増強、体毛の増加などの作用があります。

 

③ エストロゲン

コスモポリタンのクランベリージュースのような”甘酸っぱい”感覚

エストロゲンは、主に女性の卵巣で作られる性ホルモンで性器や乳房、陰毛の成長、月経周期の調整など、女性の体にとって大きな役割を担っています。

男女の脳でもエストロゲンが分泌されています。これが男性の性欲にどのように関与しているかはまだ解明されていませんが、多くの研究者は、エストロゲンが性欲に重要な役割を果たすと信じています。

 

④ 一酸化窒素

マティーニのオリーブのようなもの。添えるオリーブの種類によってマティーニの味が変わる、恋愛の”トッピング”

この化学物質は、性器が興奮したときに放出され、性器、特にペニスへの血流を増加させます。

 

⑤ フェロモン

マルガリータのグラスの縁にあるライム果汁

ホルモンは体内で作用するのに対して、フェロモンは体外へ分泌されてそれが異性に魅力と感じられるともいわれています。しかし、フェロモンを感知する鋤鼻器官(じょびきかん)が人間は退化しているため、フェロモンが人間にもあるのか、そしてどのように作用するかについては、現在も多くの研究が進められています。

 

⑥ 神経伝達物質

サングリアのさまざまな果物のようなもので、恋愛時に感じる”興奮から落ち込み”までを含む様々な感覚

アドレナリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、セロトニン、フェニルエチルアミン(PEA)は脳内オーガズムを起こすとも言われる神経伝達物質で、”やる気”や”意欲”を刺激します。

恋愛における初期、情熱的な愛とは脳内がアドレナリン、ノルエピネフリン、ドーパミンが溢れています。エピネフリンとノルエピネフリンがアドレナリンの分泌を促し、分泌量が多いと不安に、少ないとうつ状態になります。(※1)

 

パートナー選びと生殖に働きかける3つの脳内システム

恋愛が様々な脳内物質やホルモンから起こることが分かった後は、進化人類学者で著名なヘレン・フィッシャー博士の「パートナー選びと生殖に働きかける3つの脳内システム」をご紹介します。

 

① 性欲、性的衝動

② 恋、ロマンス

③ 愛着(アタッチメント)……長期的なパートナーと結ぶ深い一体感

 

フィッシャー博士によると、愛は上記のどの感情からも始まります

セックスしてから恋に落ちる人もいれば、恋に落ちてからセックスをする人もいます。ある人は何年も前から知っている人と愛着を感じて、状況が変わってから恋に落ちセックスをします。

「性欲」は様々なパートナーを求めて生殖ができるように進化し、「恋」はひとりの相手との生殖行為をするエネルギーに人間が集中できるように進化したとフィッシャー博士は主張します。そして「愛着」は生殖相手とチームになって子どもを育てるために進化したそう。

「性欲、恋、愛着」の3つのうち、どれを大切に感じるかは人によって違うものだとか。

 

つまり、人間の愛情やパートナー選びは「性欲、恋、愛着」の3つの脳内システムが相互関係しており、「愛とセックスは違う」「結婚と愛は切り離すべき」「浮気は男の本能だから仕方がない」などの言説は人間の個性や複雑性をあまりにも無視したものだと言えます。

だからこそ、愛を作る「性欲、恋、愛着」について私たちはパートナーとコミュニケーションをとり、お互いの価値観をすり合わせていく必要があるのではないでしょうか?

 

【参考】

※1……loveology university by Dr. Ava Cadell

※2……Dr.Helen Fisher’s website: https://helenfisher.com/

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この記事を書いた人

此花わかのアバター 此花わか 【リレーションシップコンサルタント】

ジャーナリスト
リレーションシップコンサルタント

アメリカの性とリレーションシップのコーチングスクールで学ぶ。セックスポジティブな社会を目指す「セクポジ・マガジン」を発信中。FRaU 、Newsweek、Huffpost、SPA!、FRONT ROW、GLITTERなどで執筆。

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