眠れないのは“うつ“のせい。そう信じて何年も睡眠薬を服用していた女性の話

記事更新日: 2020/10/07 TRULY編集部

【薬剤師】岡下真弓

「眠れなくて辛い」

うつろな目つきで精神科内科の処方箋を持参された女性。調剤薬局のカウンターに来られた時に私に訴えてきました。

「お辛いのですね」私が返答すると、その女性が話し始めました。

「以前は明るく外交的だったのよ。落ち込んだ人に対していつも励ましてあげていたくらいなの。」

「ところが急に何をしても後ろ向きになり、ベッドに入っても眠れなくなったの。以前はすぐに眠ることができたのに。そのことを友人に相談したら、運動不足と言われてスポーツジムに通い始めたの。

でも何も変わらない。むしろ、何もやる気がおこらず、誰にも会いたくない。いつからこんな私になったのかしら。私の頭の中がおかしくなってしまったのかしら。」

実は閉経前の女性に多くみられる症状

実はこのような症状を訴える方は閉経前の女性に多くみられます。

原因は様々ありますが、ホルモンバランスの乱れによる睡眠の質の低下が考えられます。睡眠薬を服用していても一向に改善しません。その結果、安定剤が追加され、安定剤を処方された自分を思い詰め、さらに悪循環を繰り返す方がおられます。

更年期の女性はホルモンバランスの乱れと些細なことが気になる傾向があるため、眠れないことを恐怖と感じ、不眠症状が慢性化し、精神生理性不眠へと移行することがあります。

特に更年期の初期に「寝つきが悪さ」の症状がみられるため戸惑う方が多いのです。


1ヶ月という短いサイクルでも寝つきが悪くなることも

女性はホルモンの影響をうけ、1か月という短いサイクルの間でも寝つきが悪くなる時期があります。エストロゲンとプロゲステロンのふたつのホルモンバランスが変化が原因でこのような症状を感じるのです。

エストロゲンは卵胞の発育と共に産生され、子宮内膜の増殖に関係します。

プロゲステロンは排卵後から月経までの間の2週間が多く分泌されます。妊娠を維持するホルモンで、受精卵が着床できる状態に子宮内膜を導きます。プロゲステロンが多く分泌されるこの期間に、イライラしたりむくんだり、眠れなかったり、頭痛や腹痛を感じたりする方も多いでしょう。

プロゲステロンの体温上昇作用によりこの期間は、昼夜の最低体温と最高体温の差が小さくなり、夜間の睡眠が浅くなり、日中に眠気を感じると言われています。よってこの期間は、睡眠リズムが乱れやすくなります。


更年期は睡眠の質も悪化しやすい

日本人の平均閉経年齢は50歳と言われており、その前後10年間を更年期と呼ばれています。40歳を過ぎた頃から、卵巣の機能が低下し、それに伴い分泌されるエストロゲン量も減少します。エストロゲンの減少は、ホルモンバランス乱れを招きます。ホットフラッシュットを感じる方は、睡眠の質も悪化しやすいと言われています。

下記のグラフは男女別・年齢別・睡眠時間を表したグラフです。更年期の女性の睡眠時間が最も短いことがわかります。

私は、その女性にホルモンバランスと寝つきが悪くなる関係をお話し、一度婦人科を受診されることをおすすめしました。婦人科では血液検査でホルモンバランスをチェックすることができます。適切な治療を受けることをおすすめました。

その後、その女性は漢方薬治療を始められました。眠れないのはホルモンバランスの乱れが原因とわかると、睡眠に関して深く悩むことがなくなり、自分を責めることがなくなり、その結果、表情もずいぶんと明るくなられました。


中医学でみる更年期の不眠

陰陽のバランスが悪く、気持ちが不安定になりがちです。

寝付きが悪い、イライラして驚きやすい、気持ちが不安定、ほてり、寝汗、口の渇き……など。

陽と陰は、どちらかが強く働きすぎることのないよう、互いを抑えながらバランスをとっています。しかし、慢性病や更年期などで心身が疲労すると、陰を消耗し、陽を抑えられなくなってしまい不眠症状を感じるのです。


不眠症は国民病?!

日本人、特に子供たちや就労者の睡眠時間は世界で最も短いと言われています。

下図は就労者の男女別の睡眠時間を国際比較したグラフです。日本人の睡眠時間が如何に短いか、お分かりいただけると思います。とりわけ女性は家事や育児の負担が大きいため、男性よりもさらに睡眠時間が短く、平日・週末を問わず慢性的な寝不足状態にあると言えます。

慢性的な寝不足の状態は、寝つきが悪い・熟睡感がない・日中眠いなどと感じます。また思うように眠れないことが、体を興奮モードにする、自律神経の一種である交感神経の働きを活発にし、さらに眠れないという悪循環を招きます。

その結果、自律神経の影響を受ける血圧や血糖値のコントロールも難しくなります。


そこで私がおすすめするのが湯船につかること。

そんなことで本当に?と思われるかもしれませんが、秋の夜長ゆっくりとお気に入りの音楽や香りを楽しみながらバスタブにつかってみませんか?

その際、軽く足元から上に少しずつあげるようにマッサージを行って全身の血流を良くしてみましょう。

自律神経の乱れを整えて、自然な眠りを楽しみましょう。



【薬剤師】岡下真弓

フリーランス薬剤師。JAAアロマコーディネーター協会認定講師。化粧品メーカー研究開発や薬剤師の知識を生かし、女性の健康と美容をテーマにした講演活動を行っています。 歳を重ねるにつれ、衰えや失われていくものはあります。また更年期世代は仕事で負う責任が大きくなり、後ろ向きな気持ちになりがちです。私は人の美しさとは、その人の生き方次第で変えることが出来ると多くの患者様から教わりました。「歳を重ねる事をネガティブに捉えずセクシーに健康に楽しみましょう」

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