更年期にパニック障害のような症状?原因と対処法を解説

「突然、胸がドキドキして息苦しくなる」
「どうしようもない不安におそわれる」
40〜50代になると、予期せぬ不安や恐怖感をともなう発作を経験する女性が少なくありません。
「これってパニック障害なの?」と心配になることも多いですが、実は更年期にみられるホルモンバランスの変動が関わっている可能性があります。
今回は、更年期になぜパニック障害のような症状が起こるのか、不安を少しでもやわらげる対処法についてご紹介します。
「更年期障害」と「パニック障害」の違いとは?
何の前触れもなく、動悸や息苦しさが起こるとともに、強い不安や恐怖感をともなう発作を繰り返す「パニック障害」1。一方で「更年期障害」には、不安や動悸・息切れ・めまいなど、パニック障害と似ている症状が多いのが特徴です。見分けがつきにくいこれらの症状ですが、次のような違いがあります。
パニック障害の原因について、くわしくはまだ分かっていませんが、主にストレスや心理的な要因がきっかけで発症すると言われています。
パニック障害は、どの年齢でも発症する可能性があります。そして、パニック発作が再び起きることへの「予期不安」や過去にパニック発作が出た状況を避けて行動する「回避行動」がみられるのが特徴です。
それに対して更年期障害は、エストロゲンという女性ホルモンの急激な減少が主な要因です。エストロゲンの役割の一つは、脳内で幸福感をもたらす「セロトニン」という脳内神経伝達物質の働きを守ること。そのため、40〜50代になると不安やパニック感、抑うつなどの心の症状が現れやすくなります。
また、エストロゲンの減少にともなって自律神経のバランスも乱れやすくなるため、心の不調のほかに、不眠やホットフラッシュ、動悸、息切れ、めまい、疲労感など身体的な更年期症状も生じやすくなります。
子育てや親の介護、仕事でのプレッシャーなど、環境的なストレスが重なりやすい更年期世代。これらの要因が絡み合い、心の不調を悪化させてしまうこともあります。
突然のパニック症状ですぐできる対処法
突然、パニック症状が起きてしまったら、どうしたらよいのかと焦ってしまい、不安をますます強めてしまうことも多くあります。心を少しでも落ち着かせるために、その場でできる対処法をご紹介します。
呼吸を整える|6秒吐いて・4秒吸う
パニック症状に気を取られるあまり、無意識のうちに呼吸が浅くなっている可能性があります。まずは、ゆっくりと深呼吸してみましょう。
深呼吸の時には「6秒吐いて・4秒吸う」などとリズムを決めて行うと効果的です。呼吸に意識を向けることで、次第に呼吸数や心拍数が落ち着き、不安や緊張がやわらいでいくでしょう。
「大丈夫」と自分に言い聞かせる
パニック症状が起きている時は、「症状が治らないんじゃないか」「このままでは死んでしまうのではないか」と不安にばかり意識が向き、悪循環に陥りがちです。
その場で「大丈夫」と自分に言い聞かせてみましょう。繰り返し言い聞かせていると、ポジティブな方向に気持ちが動き、落ち着きを取り戻せるはずです。
五感を使って意識をそらせる
五感を意識的に使うことで、不安から意識を逸らし、心の落ち着きを取り戻すことができます。たとえば、冷たい水に触れる、好きな香りをかぐ、好きな音楽を聞くなどの行動が効果的です。
外出先でパニック発作が起きないか心配な時は、自分が落ち着くアイテムを持っておくことで、安心感が増すでしょう。
おでこや首を冷やす
おでこや首を冷やすのも、パニック発作を落ち着ける効果的な方法です。おでこや首を冷やすことで、温度刺激によって副交感神経の一つである腹側迷走神経を活性化し心身がリラックスします。
また、ヒヤッとした感覚が不安にばかり気を取られていた意識を「今」に戻し、気持ちを落ち着かせてくれます。
更年期のパニック症状を軽くするためのセルフケア
心も体もゆらぎやすい更年期では、ホルモンバランスや自律神経を整えることでパニック症状をやわらげることが期待できます。セルフケアを少しずつ積み重ねることで体調が整いやすくなるため、無理のない範囲で行ってみましょう。
睡眠リズムを整える
睡眠時間が規則正しいリズムになるように工夫しましょう。質のよい睡眠は、ホルモンバランスや自律神経を安定させ、不安や緊張をやわらげてくれます。
就寝前のカフェインやアルコール、スマートフォンを見ることなどは、睡眠の質を悪くしてしまうため控えましょう。部屋を薄暗くしてなるべくリラックスして過ごし、快適な寝室環境を整えることが大切です。
ストレスや疲れを溜めこまない
ストレスや疲れが溜まると、パニック発作を起こしやすくなります。そのため、普段からストレスや疲れを溜め込まないことが大切です。
仕事や家事などで無理をせず、1日のうちにリラックスして過ごす時間を確保しましょう。ウォーキングなどの軽い運動や趣味の時間を設けることは、ストレスの緩和に役立ちます。
カフェイン・アルコールを控える
カフェインを摂り過ぎると、心拍数の上昇や不安を高めやすくなるため、なるべく控えた方がよいでしょう。カフェインはコーヒーだけでなく、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどにも多く含まれるため、摂取量が増えすぎないように注意が必要です。
アルコールも一時的な気分の高揚をもたらすものの、その後、気分が落ち込んだり不安が強まったりすることがあります。パニック症状に不安を抱えている人は、なるべく控えましょう。
どんな時に受診が必要?何科で相談できる?
パニック症状に悩み、つらい思いを抱えている人は少なくありません。「更年期のせいなら仕方ない」などと我慢していると、症状を悪化させてしまう可能性もあります。次のような場合は、一度受診して相談しましょう。
- パニック症状が頻繁に起きる
- 不安や恐怖感が長引いている
- 「外出できない」「仕事や家事が手に付かない」など、日常生活に支障が出ている
パニック症状がある場合、まずは心療内科・精神科で相談しましょう。不安や動悸などのほかにも、更年期症状がある場合は婦人科で相談できます。
専門家に相談しながら原因を確かめ、必要に応じて症状をやわらげるための飲み薬を用いる治療などが、症状を改善する近道になるかもしれません。
【更年期×パニック症状】を経験した女性の体験談
更年期世代にとって、突然の動悸や息苦しさが「パニックなのか」「身体の不調なのか」分からず戸惑うケースは珍しくありません。ここでは、その一例として45歳の女性の体験をご紹介します。
45歳・会社員の絵美さん(仮名)は、ある日職場で突然の動悸と息苦しさに襲われ救急外来へ。検査で異常はなく「ストレスでは」と言われたものの、不安は消えずしばらく過ごしていたそうです。後日、婦人科で更年期によるホルモン変動とパニック症状の関係を説明され、ようやく納得できたと言います。
「更年期の変化が原因だとわかった瞬間、不安感が軽くなりました。」
自分の身に起きていることを理解できただけで、安心感につながったと振り返っています。
「また起きたら」不安を抱えるあなたへ
更年期に生じるパニック障害のような症状は、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの急激な減少が関わっていることをお伝えしました。
不安をはじめとするパニック症状は、なかなか人に打ち明けにくいものです。「また同じ症状が起きたら……」と思うと、ますます不安が高まってしまうかもしれません。
更年期は誰にでも訪れるものです。そのため、心の不調を感じたら、自分一人で解決しようとする必要はありません。つらさを我慢せずに、専門家の力を借りながら心の負担を軽くしていきましょう。
参考
- DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル. 日本精神神経学会(監修), 高橋 三郎・大野 裕・染矢 俊幸・神庭 重信・尾崎 紀夫・三村 將 ・村井 俊哉(翻訳). 医学書院. ↩︎






