更年期と間違えやすい「甲状腺」の病気に注意!

更年期症状と思いこんでいたら「バセドウ病」「橋本病」だった!?
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「ワーッと一気に汗をかく」「顔がほてる」「胸がドキドキして、息が切れる」

40〜50代女性で、このようなつらい症状に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。これらの不調は、更年期症状によるホットフラッシュだと捉えがちですが、実は甲状腺の病気が隠れていることもあります。

更年期障害と甲状腺の病気は症状がよく似ているため、「更年期かと思っていたら甲状腺の病気だった」という場合も少なくありません。

そこで、更年期女性が知っておきたい甲状腺の病気やその症状、更年期症状との見分け方についてご紹介します。

目次

ホットフラッシュじゃなかった!意外な原因は「甲状腺」

49歳の麻希さん(仮名)は、ここ数ヶ月、突然の動悸や発汗に悩まされていました。顔がほてり、胸がドキドキする感覚があり、「更年期のホットフラッシュだろう」と思い込んで様子をみていました。

しかし、次第に症状が強くなり、息切れや手の震えまで感じるように。

さすがに心配になって病院を受診したところ、意外にも「甲状腺の病気が原因」と診断され、驚いたそうです。まさか自分の体調不良が更年期ではなく、別の病気だったとは思わず、「思い込みで放っておかなくてよかった」と胸をなでおろしています。

40代・50代に注意したい【甲状腺の病気】とは?

甲状腺は、のどぼとけの下にある蝶のような形の器官。体全体の新陳代謝を促し、脈拍や体温、自律神経のバランスを調節する甲状腺ホルモンを分泌しています。

通常、甲状腺ホルモンの分泌は多すぎたり少なすぎたりしないようにうまく調節されていますが、甲状腺に異常が起きるとそのバランスが乱れてしまいます。

40〜50代女性で起きる女性ホルモンの変動は、甲状腺の機能に影響してしまうことも少なくありません。そのため、次のような甲状腺の病気は女性に多くみられるのが特徴です。

甲状腺機能が亢進する【バセドウ病】

甲状腺が刺激されて、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されてしまう状態を「甲状腺機能亢進症」といいます。甲状腺ホルモンの分泌が増えることで、新陳代謝が高まる状態です。

代表的な病気として、甲状腺を刺激する自己抗体ができることで甲状腺ホルモンの分泌が多くなりすぎてしまう「バセドウ病」があります。

甲状腺機能が低下する【橋本病】

対して、甲状腺の組織が壊されてしまい、甲状腺ホルモンの分泌が減ってしまう状態を「甲状腺機能低下症」といいます。甲状腺ホルモンの分泌が減ることで、新陳代謝が下がる状態です。

代表的な病気として、甲状腺を障害する自己抗体ができることで甲状腺ホルモンがうまく分泌されなくなる「橋本病」があります。

甲状腺の病気・更年期障害の共通した症状

甲状腺の病気は、甲状腺ホルモンの分泌が高まる場合と下がる場合では症状が異なります。ただし、いずれの甲状腺の病気も更年期障害と似ている症状が多いのが特徴です。

甲状腺ホルモンが多いときの症状(主にバセドウ病)

・疲れやすい

・汗をかきやすい

・のぼせ・ほてり

・動悸・息切れ

・イライラ

・手足のふるえ

・体重が減る

・希少月経(月経の回数が少なくなる)

・無月経

・軟便

甲状腺ホルモンが少ないときの症状(主に橋本病)

・疲れやすい

・冷え

・皮膚が乾燥する

・むくみ(眼・顔・全身)

・体重が増える

・眠気

・気力が出ない

・物忘れが多い

・便秘

・過多月経(月経量が多くなる)

・月経不順

更年期世代の女性にこのような症状があると、本当は甲状腺の病気なのに更年期障害だと勘違いされてしまうことも少なくありません。

症状が似ている理由の一つは、どちらも自律神経のバランスに関係しているため。

甲状腺ホルモン自律神経のバランスを直接調整しているのに対して、更年期障害では女性ホルモンの変動によって間接的に自律神経のバランスが乱れやすくなってしまうのです。

甲状腺の病気は、甲状腺ホルモンの分泌をコントロールするための治療薬などが必要となるケースが少なくありません。適切な治療をせずに放っておくと、甲状腺の機能が悪化してしまうこともあるので注意が必要です。

「甲状腺or更年期」見分ける方法はある?何科で相談?

見分けがつきにくい甲状腺の病気と更年期症状ですが、いくつか違う点もあります。

甲状腺の病気の場合、のどぼとけの下にある甲状腺が腫れることがあります。ただし、甲状腺の腫れが小さく気付かないケースも少なくないため、甲状腺が腫れていないからといって甲状腺の病気がないとは限りません。

甲状腺ホルモンの分泌が過剰に高まる「バセドウ病」などでは、人によって眼が飛び出して見えることがあります。また、新陳代謝が高まることで、動悸だけでなく、脈拍のリズムが乱れる不整脈があらわれるケースもあるのが、更年期症状とは異なる点です。

ただし、甲状腺の病気と更年期症状のいずれの場合も、症状のあらわれ方は人によって大きく異なります。気になる症状があったら我慢せずに、まずは内科(内分泌代謝内科、甲状腺科)で相談しましょう。血液検査や超音波検査などで甲状腺に異常がないか調べることができます。また、月経の回数や量が気になる場合は、婦人科で相談することも可能です。

悪化のおそれもある甲状腺の病気に気をつけましょう

甲状腺の病気と更年期障害は、似ている症状が多く、自覚症状だけでは区別がつきにくいことをお伝えしました。

「なんとなく体調が悪い」などとつらい症状に悩まされていても、我慢してしまう女性が少なくありません。甲状腺の病気は放っておくと悪化してしまう可能性もあります。そのため、医師に相談しながら適切な検査や治療をすることが大切です。

40~50代は体のバランスが変わりやすい時期。気になる症状があれば早めに対処して、更年期を健やかに過ごしましょう。

参考

日本甲状腺学会. 甲状腺疾患診断ガイドライン2024. https://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html (2025年10月28日閲覧)

更年期症状と思いこんでいたら「バセドウ病」「橋本病」だった!?

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この記事を書いた人

榎本真美子のアバター 榎本真美子 【看護師・保健師】

看護師・保健師
女性の健康総合アドバイザー
薬膳コーディネーター

都内総合病院の婦人科・乳腺科などに勤務後、女性総合診療のクリニックに従事。女性ホルモンと体・心のつながりについて理解を深め、さまざまな患者さんをサポートする。
その後、家族の転勤に伴い海外生活を経験。
健康管理やセルフケアの大切さを実感し、看護師ライターとして健康に役立つ情報発信に努めている。

このコンテンツは、病気や症状に関する知識を得るためのものであり、特定の治療法や専門家の見解を推奨したり、商品や成分の効果・効能を保証するものではありません。

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