《40代・50代女性の帯状疱疹》更年期に増える理由は?

更年期世代で気を付けたい「帯状疱疹」。ホルモンバランスの変化や免疫力の低下が影響するとされ、特に50代の女性に多く見られます。
この記事では、帯状疱疹とはどのような病気か、更年期に起こりやすい理由、そして予防のためにできることをわかりやすく解説します。
帯状疱疹とは?水ぼうそうとの違いは?
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(みずぼうそうウイルス)が再活性化することで発症する病気です。このウイルスは、子どもの頃にかかる水ぼうそうの原因でもあります。1
一度水ぼうそうにかかると、ウイルスは体内の神経節に潜伏し、免疫力が低下したタイミングで再び活性化することがあります。そうして再発したウイルスが神経に沿って皮膚に現れることで、帯状に痛みや発疹が生じるのが帯状疱疹です。2
なお、帯状疱疹そのものが他人にうつることはありません。ただし、水ぼうそうにかかったことがない小児に対しては、水ぼうそうとして感染する可能性があります。34
帯状疱疹の初期症状は「皮膚の違和感」
帯状疱疹は、体の左右どちらか片側に症状があらわれることが特徴[1]
初期には皮膚のチクチク、ピリピリといった違和感や軽い痛みから始まり、その後に赤い発疹や水ぶくれが出現します。2)これらは帯状に広がる傾向があり、胸や腹部、背中、顔面などに多く見られます。
時間の経過とともに水ぶくれはかさぶたになり、1〜2週間で治癒に向かうのが一般的です。ただし、顔や頭部に症状が出た場合は、視力や聴力への影響が出る可能性もあるため、特に注意が必要です。[4]
更年期に帯状疱疹が増える理由
帯状疱疹は誰にでも起こりうる疾患ですが、特に更年期の女性で発症が増える背景には、免疫機能の低下やホルモン変化が関係しています。
加齢による免疫力の低下
加齢に伴う免疫力の低下は、帯状疱疹の発症リスクを高める要因の1つです。
加齢に伴って、ウイルスに対する免疫機能のひとつであるT細胞の働きが弱まっていきます。このため、50歳を過ぎると帯状疱疹の発症率が上昇しはじめ、80歳までに3人に1人が発症するといわれています。[1]
日本では高齢化の進展に伴い、60歳以上の発症率が1990年代以降増加傾向にあるという報告もあります。[1]
女性ホルモンの乱れによる不調
女性ホルモンの乱れによる不調も、更年期に帯状疱疹が増える理由の一つです。
更年期には、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少します。このホルモンは免疫や自律神経の働きとも密接に関係しているため、分泌が減ることで全身にさまざまな影響が及びます。
具体的には、不眠やイライラ、気分の落ち込み、慢性的な疲労といった更年期症状が現れやすくなり、それによってストレス耐性や免疫力も低下しやすくなります。これらの要因が重なり、体内に潜伏していたウイルスが活性化しやすくなるのです。[2]
要注意!帯状疱疹が起こす【合併症】のリスク
帯状疱疹そのものは多くの場合、数週間で回復しますが、まれに重い合併症を引き起こすことがあります。特に注意すべきなのが、帯状疱疹後神経痛(PHN)と呼ばれる後遺症です。[1][4]
帯状疱疹後神経痛(PHN)
帯状疱疹後神経痛(PHN)は、皮膚症状が治った後も、神経に沿って慢性的な痛みが残る状態です。この痛みは「焼けるような」「締め付けられるような」と表現されることが多く、触れられただけで強く痛むこともあります。
帯状疱疹後神経痛は50歳以上の患者で多く見られ、約20%の割合で移行するとされています。発症を防ぐためには、帯状疱疹の初期段階で抗ウイルス薬を投与し、炎症を早期に抑えることが重要です。[3]
その他の合併症
帯状疱疹は発症部位によって、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。
特に顔面や頭部に発疹が出た場合は、視覚や聴覚を司る神経にウイルスが影響を及ぼすことがあり、注意が必要です。[3]
目に炎症が起これば角膜炎や結膜炎、ぶどう膜炎を発症し、視力低下や失明のリスクが高まります。耳の場合、難聴や耳鳴り、めまいなどを引き起こすこともあります。
また、ウイルスが運動神経や自律神経に達した場合、腕や脚の麻痺、排尿障害、発熱や倦怠感などの全身症状につながるケースもあります。
こうした合併症は、帯状疱疹そのものよりも深刻な後遺症を残す場合があるため、初期の段階での的確な治療が重要です。[3]
40代・50代女性ができる帯状疱疹の予防法
更年期の女性にとって、帯状疱疹の発症や重症化を防ぐためには、ワクチン接種や生活習慣の見直しが基本的な対策となります。
50歳以上はワクチン接種を検討
帯状疱疹の予防には、帯状疱疹ワクチンの接種が有効です。
現在、日本で承認されているのは「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2種類です。いずれも発症予防や重症化のリスクを下げる効果が確認されており、50歳以上を対象に接種が推奨されています。
特に、生ワクチンは帯状疱疹の発症率を約5割、帯状疱疹後神経痛(PHN)のリスクを約6割低下させたという大規模な研究報告があります。[1]ただし、生ワクチンは免疫が低下している方や妊婦などには使用できないため、接種前に医師とよく相談することが大切です。
自治体によっては接種費用の一部を助成している場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
免疫力を保つための生活習慣を意識
帯状疱疹の予防には、免疫力の低下を防ぐことが欠かせません。日常生活のなかで、バランスの取れた食事や適度な運動、質の良い睡眠を意識することが、ウイルスへの抵抗力を高める基本となります。
また、更年期にはストレスへの耐性が落ちやすくなるため、心のケアも重要です。リラクゼーション法としては、深呼吸や筋弛緩法、イメージ療法などが知られており、自律神経を整える効果が期待されます。
さらに、太極拳を取り入れた研究では、帯状疱疹ワクチンへの免疫反応が高まったという結果も報告されており、軽い運動のひとつとして有効性が注目されています。5
帯状疱疹かも?と思ったらすぐ受診
帯状疱疹は、発症初期の対応によって経過が大きく左右されます。特に、神経に沿って皮膚の違和感や痛みを感じたり、帯状に赤い発疹が現れたりした場合は、早期の治療が求められます。
発症から72時間以内に抗ウイルス薬による治療を開始すれば、症状の軽減だけでなく、神経痛などの後遺症リスクも抑えられるとされているため、症状に気づいたら、迷わず皮膚科または内科を受診し、必要な検査と治療を受けることが大切です。
参考文献