40代・50代の【食べるメンタルケア】

40代を過ぎた頃から、「ふとしたことでイライラする」「理由もなく気分が沈む」、そんなココロの揺れに戸惑いを感じることはありませんか?
もちろん、気持ちの浮き沈みは誰にでも起こる自然なことです。でも、だからこそ日々の過ごし方、とくに「食べ方」を見直すことで、ココロが整うかもしれません。
今回は、更年期世代の女性が気をつけたい“メンタルに効く栄養素”と、その上手な取り入れ方について解説していきます。食べることでココロをいたわる「食べるメンタルケア」を今日から始めてみませんか?
更年期の「ココロの揺れ」はなぜ起こる?
更年期に多くの女性が経験する気分の落ち込みやイライラ、不安感。それは気のせいでも性格の問題でもなく、カラダの内側で起きている「ホルモンの変化」が大きく関係しています。
女性ホルモンのひとつであるエストロゲンは、卵巣機能の低下により分泌が減少していきます。このエストロゲンは、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンとも密接に関わっており、ココロの安定や前向きな気持ちを保つうえで重要な役割を果たしています。
そのため、エストロゲンの減少によってこれらの神経伝達物質のバランスが乱れ、感情のコントロールが難しくなったり、気分が沈みやすくなったりするのです。

メンタルに効く!おすすめ栄養素
ココロの揺れをできるだけ穏やかにしたいと思っている方に、ここではメンタルの安定につながるおすすめの栄養素と取り入れ方のコツを紹介します。
1.【ビタミンB群】でストレスに強くなる
ビタミンB群は「ココロのビタミン」とも呼ばれ、脳や神経の働きをサポートする重要な栄養素です。とくにビタミンB1は神経伝達のサポート、ビタミンB6は感情を安定させるセロトニンの合成に関与し、ビタミンB12は脳神経の健康維持に欠かせません。
これらが不足すると、疲れやすくなったり、イライラ・不安感が強くなることもあります。
更年期のストレスを和らげるためには、日常的にビタミンB群をバランスよく摂ることが大切です。
【多く含まれる食品】
玄米、豚肉、大豆製品、卵、海苔、レバー、緑黄色野菜 など
【取り入れ方のコツ】
主食(玄米)+主菜(たんぱく質)+副菜(野菜)+汁物で構成した「一汁三菜」スタイルのバランスの良い食事を心掛けましょう!
2.【マグネシウム】【鉄】で落ち込みを防ぐ
マグネシウムは神経の興奮を抑える働きがあり、ココロの安定にひと役買っています。さらに、鉄は脳への酸素供給を支え、セロトニンなどの神経伝達物質の合成にも関わっています。
更年期の女性は、食事量の減少や吸収力の低下などでこれらのミネラルが不足しがちです。慢性的に不足すると、抑うつ傾向や倦怠感を招くことがあると言われています。
【多く含まれる食品】
- マグネシウム:海藻類、ナッツ類(アーモンド・くるみ)、豆腐、雑穀、バナナ など
- 鉄:赤身肉、レバー、あさり、ひじき、ほうれん草、納豆 など
【取り入れ方のコツ】
鉄はヘム鉄(動物性)と非ヘム鉄(植物性)があり、両方をバランスよく摂取することが大切。また、非ヘム鉄の吸収率を高めるために、ビタミンC(果物・野菜)と一緒に摂るのがポイントです。
3.【トリプトファン】で気持ちを安定させる
トリプトファンは、幸せホルモン「セロトニン」の原料となるアミノ酸です。ココロの安定やリラックス感を得るために欠かせない栄養素です。体内で合成できないため、食事からの摂取が必要となります。
更年期には、ホルモンの変動によりセロトニンの分泌が乱れやすくなりますが、トリプトファンをしっかり摂ることで、その材料をしっかり補うことができます。
【多く含まれる食品】
乳製品(チーズ・ヨーグルト)、豆製品(納豆・豆腐)、卵、ナッツ、バナナ、赤身肉、魚 など
【取り入れ方のコツ】
朝食にたんぱく質源(ヨーグルト+バナナ、卵+納豆ご飯など)を組み合わせると、日中のセロトニン生成がスムーズに進みます。
毎日の食事で無理なく《メンタルケア》
ココロとカラダをいたわる栄養素を知っていても、忙しい毎日の中で意識するのはなかなか難しいものです。そこで、日常の食シーン別に、無理なく続けられる「食べるメンタルケア」の実践アイデアをご紹介します。
シーン1|朝食で手軽にプラスワン
1日の気分を左右する朝食は、メンタルケアの起点にもなります。トリプトファンを含むたんぱく質と、脳のエネルギー源である糖質をバランスよく摂るのが理想的です。
【おすすめの組み合わせ】
- 納豆ご飯+味噌汁+卵焼き
- 全粒粉パン+ゆで卵+バナナ+ヨーグルト
- オートミール+豆乳+ナッツ+ドライフルーツ
どれも短時間で準備でき、ビタミンB群やマグネシウムも一緒に補える優秀メニューです。いつもの朝食に“プラス1品”する感覚で続けてみましょう。
シーン2|コンビニランチの選び方を工夫
外出先や職場でのコンビニランチは、つい炭水化物中心になりがちですが、選び方次第で栄養バランスを整えることができます。
【おすすめの組み合わせ例】
- 雑穀おにぎり+サラダチキン+海藻サラダ+ゆで卵
- サンドイッチ(卵やツナ)+ミニサラダ+無糖ヨーグルト
- おやつにチーズや豆腐バー、ナッツ類
鉄やマグネシウムを含む海藻・大豆製品、ビタミンB群を含む卵・魚介類などを選ぶことで、ココロとカラダにやさしいランチになります。
シーン3|外食でのメニューはどう選ぶ?
外食では「食べたいもの」を楽しみつつ、ココロの栄養も意識した選び方がポイントです。揚げ物や精製された糖質だけに偏らず、たんぱく質や野菜がしっかり摂れるメニューを選びましょう。
【おすすめの外食メニュー】
- 定食スタイル(焼き魚、肉野菜炒め、豆腐ハンバーグなど)
- 和食ベースの小鉢がついたセット
- 具だくさんのフォーやスープカレー、冷しゃぶサラダうどん
鉄を意識したレバー料理や、トリプトファンを含む鶏肉・大豆料理がある店ならチャンス。迷ったときは「色の濃い料理(緑黄色野菜・赤身肉など)」を選ぶと、栄養価も高くなります。
ココロにやさしい「食生活」で、更年期をしなやかに乗り越える
更年期のココロの揺らぎや不調は、誰にでも起こる自然な変化です。でも、その波に振り回されるのではなく、やさしく向き合う工夫を重ねることで、日々の心地よさは大きく変わっていきます。
ビタミンB群、マグネシウム、鉄分、トリプトファンといった栄養素は、ココロと脳を支える大切な味方。こうした“メンタルを整える栄養”を、毎日の食事に少しずつ取り入れていくことが、自分を大切にする第一歩です。
特別なことをしなくても大丈夫。朝に果物を足す、昼に海藻サラダを選ぶ、夕食を一汁三菜にしてみる、そんなちょっとした工夫が、確実にココロとカラダを整えてくれます。
食べることは、毎日のセルフケアであり、自分へのエールでもあります。栄養の力を味方に、「私らしいペース」で、更年期をしなやかに、穏やかに乗り越えていきましょう。
出典
- 一般社団法人健康な食事・食環境コンソーシアム.「健康な食事・食環境」認証制度」
https://smartmeal.jp/ - 厚生労働省
「食事バランスガイド」について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html