【かかとの痛み】と【更年期】の関係とは?

「朝起きてから歩き出すと、かかとに痛みが走る」
「立ち上がるときに、かかとや足裏がズキズキ痛む」
40〜50代でかかとの痛みを抱える女性が少なくありません。更年期でみられるかかとの痛みは、女性ホルモンの変動が影響している場合もあります。
今回は、かかとの痛みと更年期の関係や、痛みをやわらげる対処法についてご紹介します。
歩くと急に「かかとの後ろが痛い」
朝の空気がまだひんやりと残る中、陽子さん(52歳・仮名)はスニーカーを履き、ゆっくりと歩き出しました。長年続けてきたウォーキングは、朝のルーティンです。
しかし最近、左足の踵の後ろに刺すような痛みを感じるようになりました。特に歩き始めの一歩目がつらく、時間が経てば少しは和らぐが、違和感は消えません。まるで足の裏に張り詰めた糸があるような感覚。今日も数分で歩みを止め、彼女は踵をさすりながら思いました。
「これって、ただの疲れじゃないのかも……」
更年期【かかとが痛い】原因は病気?
更年期女性に多くみられるかかとの痛みは、朝に強く、動いているうちに徐々に軽減しますが、夕方になって歩行量が増えると再び痛みが増してくるのが特徴です。
体の土台であるかかとに痛みが起こると、動作に支障が出てしまうだけでなく、病気ではないかと心配になってしまう人も少なくありません。一見、関係がないように思えますが、更年期にかかとが痛む要因の一つは、女性ホルモンが変動することによるものです。
原因はエストロゲン低下
40~50代になると、卵巣機能の低下によって、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌が急激に減っていきます。
エストロゲンの働きの一つは、関節や腱の周りにある滑膜という組織や関節の柔軟性を維持すること。そのため、更年期にエストロゲンが少なくなると、足の骨格を支えてきた靭帯や腱、筋肉が緩むようになります。すると、土踏まずを形成している足のアーチがくずれ、足裏やかかとなどの大きく歪みが生じた部分に痛みや変形が生じやすくなるのです。


40代・50代に多い《足底筋膜炎》
40代・50代女性で多くみられるかかとのトラブルの一つに「足底筋膜炎(足底腱膜炎)」があります。
足底筋膜とは、かかとから足の指の付け根まで伸びている筋肉の膜のこと。その周辺が炎症を起こし、痛みなどの症状が出る状態を「足底筋膜炎」といいます。
足底筋膜炎は、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌が減ることのほかにも、足に衝撃がかかるスポーツや靴の問題などによって起こることもあります。
かかとの痛み放置するとどうなる?
かかとの痛みは、どこで相談したらよいか分からず、我慢してしまう人も少なくありません。
生活に支障がない程度の痛みであれば、しばらく様子をみても問題ないでしょう。しかし、強い痛みを抱えた状態で歩き続けると、症状が悪化してしまい、治りづらくなってしまう可能性があります。かかとの痛みが何日も続いていたり、歩くのに支障が出るほど強く痛んだりする場合は、早めに受診しましょう。
かかとの痛み対策|3つのセルフケア
かかとの痛みを少しでもやわらげるためには、足の筋肉の柔軟性を保ったり、足への負担を軽くしたりする工夫が大切です。ご自身でできるケア方法をご紹介しますので、ぜひ取り入れてみてください。
1.ストレッチ
まずは、足底筋膜が硬くならないように、柔軟性を保つストレッチがおすすめです。

① イスや床に座った状態で、足のつま先を前にピンと伸ばし、足の甲を伸ばします。
② 次に、かかとを前に押し出すようにして、足裏をじんわりと伸ばします。
③ ①〜②の動きを10回1セットで1日3セット以上行うとよいでしょう。
2.足の運動
かかとの痛みをやわらげるためには、歪んでしまった足裏を正しい位置に戻すことも大切です。足の運動は、弱まった筋肉を鍛えられるだけでなく、血行をよくして痛みの緩和にも役立ちます。
たとえば、タオルを足の指でつかんだり離したりする「タオル掴み」や「足指でグー・チョキ・パー」をする動きが効果的です。10回1セットで、1日2~3セット行ってみましょう。
3.正しい靴選び
靴のサイズや素材などが合っていないと、足の歪みやかかとの痛みを悪化させてしまうかもしれません。ヒールやサンダルなどは、足に負担がかかってしまうため、なるべく避けた方が望ましいです。
足を安定させるためには、しっかりした靴底で硬すぎずクッション性の高い靴を選ぶようにしましょう。足のサイズに合った靴を選ぶことも大切で、つま先に1cmほどの余裕があることを確認しましょう。また、土踏まずをサポートしてくれるインソールを使うと、痛みの緩和に役立ちます。
適切な靴やインソールの選び方に迷う場合は、医師や専門家に相談するようにしましょう。
漢方薬でかかとの痛みをやわらげる
漢方薬は種類によって、血行をよくしたり筋肉の緊張や痛みをじんわりとやわらげたりする作用があります。
たとえば、比較的体力があり、足底筋膜炎のほかに、上半身はのぼせるのに足は冷えを感じる「冷えのぼせ」や肩こりなどがある場合は桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)が痛みの緩和に効果的です。足腰が弱くて疲れやすく、むくみなどがある場合は牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)がよく用いられます。
ただし、漢方薬は体質に合うものを服用することで効果を期待できます。飲み始めるときには、医師や薬剤師に相談しながら自分に合う漢方薬を選びましょう。
かかとの痛みは何科で相談?どんな治療法?
かかとにつらい痛みがある場合、まずは整形外科で相談しましょう。
足裏の腱やかかとの骨まわりの状態などを検査したうえで、「痛みを軽減させる治療」と「足の裏への負荷を減らす治療」を行います。
具体的には、痛みの状態に合わせて薬物療法やインソールを用いた装具療法、リハビリなどを行うことが一般的です。痛みが強い場合は、ステロイド注射や対外衝撃波療法を用いながら症状をやわらげていきます11)。
かかとの痛み以外に、ホットフラッシュや全身の疲れやすさ、不眠、イライラなどの更年期症状・障害がある場合は、婦人科でも相談してみましょう。
更年期の「かかとの痛み」我慢しないで対策を
更年期女性に多くみられるかかとの痛みは、エストロゲンという女性ホルモンの分泌が減ることによって、足の腱や筋肉が緩むことが影響していることをお伝えしました。
40代・50代女性でかかとの痛みが生じている場合は、足だけの問題ではなく、年齢とともに体が変わってきたサインかもしれません。
痛みを我慢してしまうと、行動範囲や生活の質が低下してしまいがちです。健康な体づくりは足元から。かかとの痛みに気付いたら、無理せず早めに対処しましょう。