【薬剤師の体験談】目の疲れに隠された悩みに気づいた女性の話

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〜 今回の薬剤師の体験談は、目の疲れが取れない女性の話。目の疲れの原因は目そのものの疾患だけでなく更年期症状が原因だったり、身体の健康に問題があり目に負担がかかっていることも 〜

みなさんこんにちは。薬剤師の岡下真弓です。【薬剤師の体験談】シリーズは私がこれまで患者さんと接してきた経験の中でとくに印象的だった方のエピソードをご紹介し、その体験から得た学びやメッセージをみなさんにお届けしている連載です。

がんばりやさんで真面目な女性の目の疲れの原因はなんなのでしょうか。そして私がどのようにアドバイスをしたのか、ぜひ参考にしてみてくださいね。

目次

40代半ばの女性の悩みは「目の疲れ」だけ?

「薬剤師さんに相談したい」

と店内に入ってきた、スラックスに白いシャツ、首からセキュリティーカードをぶら下げ、いかにも昼休み中である雰囲気の、40代半ばのスラリとした女性。

  

目の疲れに良い目薬ありますか?」

「目の疲れといっても、ピントが合わない、パソコンの見過ぎによるドライアイなど原因は様々で、それによっておススメが違ってきますが?」と言っていくつか提示しました。

すると「高いですね。それならドラッグストアで購入するので今日は結構です。」

 

調剤薬局に置いている市販薬は、大手ドラッグストアと比較して割高なため、私も「そうですよね」としか答えませんでした。

通常はこれで店を出ていきますが、女性はさらに視線を店の奥に移動させ、漢方薬が陳列されている棚をじっと見ていました。

そこで「何か気になるものはありますか?よろしければ気になる症状をお伺いしますよ」と話しかけてみました。

 

仕事が遅いのは目の疲れのせいかと思って……

たまたま視線をそこに移しただけの人なら、ここで店を出ます。しかし、彼女は漢方薬の方に体の向きを変えました。

 「きっと、もっと他の何かを彼女は言いたいはず……なんだろう」と思考を巡らせた末、「目が疲れているということは、今お仕事がお忙しいのですか?」とやんわり伺ってみました。

すると彼女は「なんか最近おかしいんですよね。イライラが激しく、家族にもあたってしまいます。更年期かなと思って病院を受診したら、漢方薬を処方してもらいました。でも服用したら、下痢しちゃって」

「もしかしてこれを処方されました?」漢方薬は市販薬でも処方薬でも、名前が同じものが多く、私はある商品の箱を手にして、彼女に聞いてみました

「そうです そうです」イライラだけ主張すると、おそらく第一選択肢として選ばれる漢方です。

しかし見るからに責任感が強く目をしっかり見て話す彼女は、真面目で頑張り屋……その漢方薬ではないような気がしました。

差し出した薬が当たっていたから私を信じてくれたのかどうかわかりませんが、彼女はその後、色々話してくださいました。

今まであたり前にできていたことができないのです。作業時間が遅い人ってサボっているって思っていたら、自分も同じくらいのペースになっちゃって……。

だから集中して作業してますが一向に改善しません。だから目の疲れが原因かなって思います。だってこんなの自分じゃないですもの」

怒っているのでもなく、嘆いているのでもなく、なぜこんなことになったのだろう?理由を知りたい。そのように受け取りました。

 

そもそもなぜ目は疲れるの?

現代社会ではパソコンやスマホなど、目を使う作業が増えました。また、在宅ワークの普及により、オンライン会議や商談も増え、より一層目を酷使しています。

このような生活を続けていると、目だけでなく全身に症状がおよび、休息や睡眠をとっても十分に回復しない状態になりかねません。

さらにたかが目の疲労と思ってこのまま放置していると、ピントを調節する毛様体筋に負担がかかってしまいます。

毛様体筋は自律神経によって支配されているため、疲れを放置していると自律神経のバランスが乱れ、全身に不快な症状を招く原因となります。

目を酷使する生活要因

1. 老眼(目の筋肉に疲労が溜まる)

2. 度の合わないメガネやコンタクトレンズの使用(毛様体筋に負担がかかる)

3. 作業環境

光の刺激(照明やパソコン画面などの光のちらつき)

エアコンの風(涙を蒸発させ乾燥させる)

紫外線、騒音など

 

さらに注意していただきたいのは、身体の健康に問題がある場合も、目に負担がかかっているということです。

疲れを放置している

・夜勤や夜更かしなど生活リズムの乱れ

精神的ストレス(まばたきや涙の量の減少)

全身の病気(脳神経疾患、高血圧、低血圧、糖尿病、月経異常など)

 

更年期症状によって粘膜が乾燥している可能性も 

さて彼女に私はどのように接したのか、話を続けましょう。

「仕事が忙しいと目だけではなく、体にも負担がかかり、自律神経のバランスが乱れます。この状態を放置していると、女性ホルモンのバランスも乱れ、プレ更年期の症状が出始めることもあります。

更年期の症状は、イライラだけではなく、記憶力の低下や粘膜の乾燥もあります。

今回は目の疲労か、体の疲労か、ホルモンバランスの乱れか、現状では判断つきかねますが、お仕事がおできになる方ほど、更年期の症状は受け入れられないものです。」と説明しました。

 

「そうなんです。自慢じゃないですけど、私優秀で、最近リーダーにも抜擢されました。そしたら急に仕事ができなくなって。もどかしいです」

彼女は更年期によるイライラよりも、真面目すぎる性格から、自分の現状を受け入れられず、その戸惑いとプレッシャーからのイライラではないかと私は感じました。

 

そのことを踏まえて「目の疲れの原因であるドライアイは、加齢と共に加速し、さらに女性は男性より発症しやすいため、保湿効果のある目薬はこまめにさしておきましょう」と説明しました。

参照:A Okoń 1, P Jurowski, R Goś

Klin Oczna

. 2001;103(4-6):177-81.

頑張るだけでなく、リラックスして気を緩ませることも大切

「他に何かできることはありますか?私頑張りたいので」本当に真面目な方です。

 

サプリメント、漢方薬、リラックスできる香り、一日の終わりはしっかり湯船に浸かって大きく深呼吸することなど、張り詰めた「氣」を1日のどこかで弛ませる習慣を取り入れるように提案しました。

 

賢い彼女は、リラックスできる方法をきっと自分で見つけられるでしょう。

きっと今頃は、笑顔でお仕事されていると私は信じています。

薬剤師岡下さんの過去記事はこちらから見られます!

薬剤師の体験談シリーズ

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この記事を書いた人

岡下真弓のアバター 岡下真弓 【薬剤師】

フリーランス薬剤師
JAAアロマコーディネーター協会認定講師

化粧品メーカー研究開発や薬剤師の知識を生かし、女性の健康と美容をテーマにした講演活動を行っています。 歳を重ねるにつれ、衰えや失われていくものはあります。また更年期世代は仕事で負う責任が大きくなり、後ろ向きな気持ちになりがちです。私は人の美しさとは、その人の生き方次第で変えることが出来ると多くの患者様から教わりました。

「歳を重ねる事をネガティブに捉えずセクシーに健康に楽しみましょう」

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