【鍼灸師】淺田麻希
「東洋医学の観点から更年期に向き合うシリーズ」、今回のテーマは、『腰痛』です!
『腰痛』というと、更年期世代に限らず多くの方が経験する症状です。
前回のコラム(運動器症状編 ~肩こり~)でもご紹介した、厚生労働省の令和元年国民生活調査「性別にみた有訴者(病気やけがなどで自覚症状のある者)率」においても、肩こりについで、女性の2位、男性では1位となっています。
腰痛は、人類が二足歩行を行っていく上での宿命とも言われている愁訴です。そして、同時にQOL(生活の質)を脅かす症状でもあります。
また、更年期症状は多岐にわたる中で、腰痛で悩む方も多く存在しています。ホルモンバランスによる腰痛以外にも、原因を理解し、東洋医学的視点でのセルフケアを学んでいきましょう。
腰痛をきたす疾患は数多く存在します。また、腰だけでなくお尻や足に痛みが出る疾患も存在します。
腰には、大きく5つの骨があり、それらを腰椎(ようつい)と呼びます。腰椎からは、お尻や足の方に向かって多くの神経が走行しています。
そのため、腰椎のどの部分が問題となるかにより、障害される神経が変わりますし、痛みが出る部位も変わってきます。
そして、それらの骨や神経を支えている筋肉もまた沢山存在しています。
このように、腰痛と一言で言っても沢山の組織が存在しているため、様々な原因や疾患が考えられるのです。
今回は、下記の4つをご紹介します。
①腰椎などの骨由来の腰痛
②筋肉由来の腰痛
③外傷による腰痛
④その他(内臓性や心因性)の腰痛
①腰椎などの骨由来の腰痛には、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎分離症などがあげられます。これらは、痛みだけでなく痺れなどをきたすこともある疾患です。
②筋肉由来の腰痛は、姿勢や仕事の環境、また①であげたような疾患の痛みをカバーするための、筋肉疲労などが引き金となって起こる腰痛です。
③外傷による腰痛は、交通事故や転倒などによる、圧迫骨折、腰部捻挫などがあげられます。50代以降の女性の場合、骨粗しょう症などが起因して、転倒時に圧迫骨折といったことも多くあります。
④その他(内臓性や心因性)の腰痛は、子宮内膜症や子宮筋腫また腎臓の疾患など、内臓が原因となって起こるものもあります。
また、心因性腰痛では、人間関係のストレスや、仕事における重圧などが起因して、検査などでは悪い部分は発見できないのが特徴です。
更年期症状の腰痛の場合、日常生活での過労などが原因となった症状主体の病態が多いと言われています。
しかし、中には上記の疾患のような場合もみられます。また、まれに内臓疾患が原因の場合も考えられるため、ひどい腰痛が続くようであれば、専門医を受診することをお勧めします。
腰は、「腎の腑」と言われています。腎は、人の成長・発育・生殖を司る五臓のうちの一つの臓です。
腑とは、「臓」と合わせて、古代の解剖学知識や長期にわたる人体の観察、および医療実践を通じて形成された、現代医学でいう所の臓器やその周りの機能のことです。中でも「腑」は、飲食物の消化、吸収、排泄を行う器官と言われています。
(「腎」など五臓については、初回コラムにて)
腰痛の大部分は、この腎の機能との関係が深いということから、腎に関する症状として、腰痛以外にも成長・発育・生殖といった腎機能によって保たれている部分に変化が起きると言われています。
腰痛という症状に加え、その他の特徴などから、ご自身の体を評価していきましょう!
一つでもチェックが当てはまれば、そのタイプに該当します。タイプはどれか一つというわけではなく、いくつか当てはまる方もいるかもしれません。
□寒くなると腰痛が出現する
□患部を温めると楽になる
□寒がりである
□浮腫みやすい
□四肢に冷えがある
□腰の痛みは鈍痛である
□膝の脱力感がある
□腰痛は仕事など作業をしていると痛み、休むと楽になる
□イライラしたり不安になることがある
□頻尿または下痢気味である
□腰痛は刺すような痛みである
□腰痛は夜間に痛むことが多い
□皮膚がカサつきやすい
□唇、爪の色が青紫色っぽい
□出血すると血が止まりにくい
①のタイプは、寒い時期、また湿気の多い梅雨時期に発生します。東洋医学では、寒や湿を外邪(がいじゃ)と言って、外から体を害する作用と考えています。それらが、体に侵入し、体のエネルギーである気、また栄養である血の流れを阻害することで、腰痛が発生します。
②のタイプは、先天的に虚弱体質、栄養が取れていない、慢性的な疾患があり消耗が激しい、長時間労働による過労などにより、成長や生命エネルギーを司る腎の機能が低下している状態です。腎に関するツボは、腰を通っており腰痛が現れることがあります。
③のタイプは、体の栄養となる血の流れが悪いことから、臓腑の機能を障害したり様々な機能失調が出現している状態です。その一つとして、腰痛が現れ、多くは刺すような鋭い痛みになるのが特徴です。
あなたはどのタイプでしたか?
東洋医学では、出現している症状を一つの病気と断定するのではなく、様々なことを複合して考えていきます。
いくつも当てはまったため、自分の体の症状が悪いというわけではないので安心してください。大切なのは、自分の体の症状を理解し適切な処置をしていくことです。
それでは、それぞれのタイプに良いツボをご紹介していきます。
ツボは、1回に5秒間程度2~3回、押しやすい指で痛気持ち良い程度に押しましょう!
目安は、毎日1回。習慣化していくのがベストなので、朝起きたらベットの中で、お風呂を出た後に、など時間を決めて押してみてください。
<位置>
外くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ。(両足共に同じ位置)
<効果>
腰痛の改善。頭痛や目の症状の改善も期待できる。
<位置>
背中にある。ウエストの細い部分の高さで、背骨から指二本分外側。
<効果>
腰痛の改善。老化防止や免疫力のアップに効果がある。
<位置>
内くるぶしから指4本分(5~6cm)上がったところ。スネの骨のすぐ後ろ。(両足共に同じ位置)
<効果>
生理痛などの婦人科系疾患に良い。消化器症状を調整する効果がある。
※出典
2019年国民生活基礎調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/04.pdf
矢野忠(2014年)レディース鍼灸 医歯薬出版株式会社
中医学基礎理論
※イラスト引用(上から順番に記載)
https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=807136&word=脚%2C美脚%2Cエステ
https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=1245444&word=下着姿の黒髪女性の全身イラスト
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【鍼灸師】淺田麻希
「かかりつけ鍼灸師 for woman」代表として、女性特有の自律神経やホルモンバランスによる不調に特化して施術。自身も国内航空会社にてCA時代に、自律神経失調性の様々な体の不調を経験。その時出会った鍼灸にて、改善したことをきっかけに、家庭で社会で活躍する女性を健康面で支えると決意。施術だけでなく、お灸セルフ講座や、東洋医学的視点での体の不調などを学べるセミナーを開催している。linktr.ee/ShinQ_for_woman
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