更年期の性交痛に市販薬は使える?潤滑剤・保湿剤の選び方と注意点

更年期に入ってから、性交時の痛みに悩む方は少なくありません。
「ドラッグストアで買える市販薬で何とかしたい」と考えて検索される方も多いのですが、実は「更年期の性交痛そのものに直接効く市販薬」は、日本ではほとんど見当たりません。
この記事では、市販で手に入る現実的な選択肢、その上手な選び方、市販で対処できる範囲と、婦人科に相談したほうがいい目安をお伝えします。
更年期の性交痛に「直接効く市販薬」は基本ありません
日本のドラッグストアで処方箋なしに買える「市販薬(OTC医薬品)」のうち、「性交痛」を直接の効能として承認されているものは、現状ありません。
「婦人更年期障害」などの効能でエストロゲンを含む外用薬(指定第2類医薬品)が一部市販されていますが、これらは性交痛を主目的とした薬ではなく、ホルモン剤のため自己判断での使用には慎重さが求められます。
性交痛の治療としては、婦人科で処方される「エストリオール腟錠」などの局所エストロゲン製剤が代表的で、これらは医師の処方が前提になります。1
そのため、市販で対処したい場合の選択肢は、医薬品ではなく「腟用保湿剤」や「潤滑剤」といった、痛みの直接的な原因である乾燥や摩擦を物理的に和らげるアイテムが中心になります。
性交痛は「市販薬で治す」のではなく、「市販品で痛みを軽くしながら、必要に応じて婦人科へつなぐ」という考え方が、現実的で安全な向き合い方です。
更年期に性交痛が起きやすいのはなぜ?
更年期の性交痛の背景には、女性ホルモン(エストロゲン)の減少があります。
エストロゲンは、腟や外陰部の粘膜に厚みと弾力、自然な潤いを与える働きを担っているホルモンです。閉経の前後で分泌が減ると、粘膜が薄く乾きやすくなり、性交時のわずかな摩擦でも炎症が起き、痛みを感じやすくなります。こうした粘膜の変化は「萎縮性腟炎」と呼ばれることもあります。
このような腟・外陰・尿路の症状をまとめて「GSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)」と呼びます。2014年に北米閉経学会と国際女性性機能学会が提唱した名称で、性交痛はGSMの代表的な症状のひとつです。2
日本性機能学会の女性性機能委員会と小林製薬が2019年に行った共同調査では、40歳以上79歳以下の女性のうち11.6%にGSMの症状がみられたと報告されています。3
決して珍しい症状ではないことがわかります。

【性交痛】市販で手に入る現実的な選択肢
ドラッグストアや通販で手に入るのは、大きく分けて2種類です。「腟用保湿剤」は日常的に粘膜の乾燥を整えるためのもの、「潤滑剤」は性交時の摩擦を一時的に和らげるもので、それぞれ役割が違います。
腟用保湿剤
腟用保湿剤は、日常的に腟や外陰部の潤いを保つことを目的にしたアイテムです。入浴後や就寝前などに継続的に使うことで、乾燥そのものを和らげていきます。
海外の主要な学会のガイドラインでも、軽度から中等度のGSMに対する第一選択のひとつとして位置づけられています。4
ひとくちに「保湿剤」といっても、商品によって使える範囲(外陰部のみ/腟入口まで/腟内まで)が異なります。日本国内で一般に流通しているものは、外陰部までの使用を想定したものが中心です。
選ぶときのポイントは、
- 使える範囲(外陰部/腟入口/腟内)が商品の説明書きに明確に記載されていること
- 無香料・低刺激の表示があること
- 成分表示と用途が明示されていること
の3点です。
「ボディローション」「ラブローション」と書かれた一般用ローションのなかには、デリケートゾーンに向かない成分が入っているものもあるため、「デリケートゾーン用」と明記された商品を選ぶようにしましょう。
潤滑剤
潤滑剤は、性交の場面に合わせて使うアイテムで、ベース成分によって大きく3種類に分かれます。
- 水ベース:成分のほとんどが水と保湿成分。肌なじみがよく、ベタつきが少なく、洗い流しやすいタイプです。コンドームの素材を問わず安心して使えるため、初めての方や使い分けに迷う方に向いています。一方、乾きやすい傾向があるため、適宜、足し直しが必要です。
- シリコンベース:乾きにくく、しっとり感が長く続きます。性交痛が強めの方や、潤いが続いてほしい方に向きます。ラテックス製のコンドームとは基本的に併用できますが、商品によっては併用を推奨していない場合もあるため、購入時に説明書きの確認をしてください。
- オイルベース:とろみがあり長時間使えますが、ラテックス素材のコンドームとは併用できません(劣化させてしまうため)。
医療機器として登録されている商品や、産婦人科でも採用されている商品など、品質基準がはっきり示されているものから選ぶと安心です。
そのほかのドラッグストア商品
外陰部の表面の乾燥や軽いこすれには、ワセリンなど刺激の少ない保湿剤が一時しのぎとして役立つことがあります。ただし、ワセリンは粘膜の中に塗るためのものではなく、性交痛の原因そのもの(粘膜の萎縮や乾燥)を治療するアイテムでもありません。あくまで補助的な使い方として捉えてください。
なお、外用の女性ホルモン含有OTC医薬品(第1類医薬品)も一部存在しますが、自己判断で使い始めると体に合わない・別の病気のサインを見落とすなどのリスクもあるため、かかりつけの婦人科や薬剤師に相談してから使うのが安心です。
市販薬で様子見できる?それとも婦人科受診?

市販品で様子を見てよいのは、次のような方です。
- 痛みが軽く、性交時に違和感がある程度
- 市販の潤滑剤を使うと痛みがほとんど気にならない
- 出血や強い痛み、日常生活への影響はない
一方、次のようなサインがある方は、婦人科への相談をおすすめします。
- 市販の保湿剤や潤滑剤を試しても改善が乏しい
- 性交時に出血する、または強い痛みがある
- 性交を避けるようになっている、心理的につらい
- 頻尿や繰り返す膀胱炎を伴う
- 外陰部のかゆみ・かぶれ・違和感が長引く
【更年期の性交痛】婦人科で相談できる治療
婦人科では、症状の強さや既往歴に応じて次のような治療を相談できます。
局所エストロゲン療法
腟内に直接エストロゲン製剤(腟錠)を入れる治療です。日本の保険診療では「エストリオール腟錠」が腟炎の病名で適用されています。5
粘膜そのものに働きかける治療で、根本にある乾燥や萎縮の改善が期待できますが、効果の感じ方には個人差があります。
ホルモン補充療法(HRT)
全身の更年期症状を含めて整える治療で、性交痛の改善にも用いられることがあります。適応や向き不向きは医師との相談のうえで判断する治療です。
そのほか、機器を用いた治療など、自費の選択肢もあります。
日常生活で気をつけたい5つのこと

治療や市販品と並行して、毎日の暮らしで取り入れたい工夫が5つあります。どれも「性交痛を治す」ための方法ではなく、粘膜まわりの環境を整え、市販品や治療の効果を引き出しやすくする土台づくりです。
- 体を冷やさず、骨盤まわりの血流を保つ
- きつい下着や通気性の悪い素材の長時間着用を避ける
- 洗いすぎ・こすりすぎを控え、ぬるま湯で短時間で済ませる
- ストレスや睡眠不足が続かないよう生活リズムを整える
- 深い呼吸とともに、骨盤まわりの筋肉を意識的にゆるめる時間をつくる
特に5つ目の「骨盤まわりの筋肉をゆるめる」は、見落とされがちですが大切なポイントです。性交痛を経験すると、無意識に体に力が入り、骨盤底の筋肉が緊張し続けてしまうことがあります。
保湿剤・潤滑剤に骨盤底筋群のリラクゼーションを組み合わせると、性交痛が和らぎやすくなります。6
お風呂上がりや就寝前など、リラックスできる時間に深呼吸と一緒に取り入れてみてください。
市販薬を上手に使い、つらいときは婦人科へ
更年期の性交痛に「直接効く市販薬」は、現状ほとんどありません。実用的な選択肢は腟用保湿剤と潤滑剤の2つで、これらは痛みの原因である乾燥や摩擦を物理的に和らげる役割を担います。
一方で、症状の根本にある粘膜の変化に働きかけられるのは、婦人科で処方される治療です。市販品を上手に取り入れながら、改善が乏しい・痛みが強い・出血があるなどのサインがある場合は、早めに婦人科で相談しましょう。

参考文献
- 日本産婦人科医会「13.相談されないと対応しない性交痛のケア」/https://www.jaog.or.jp/lecture/13-相談されないと対応しない性交痛のケア/ (2026/05/08閲覧) ↩︎
- Portman DJ, Gass MLS. Genitourinary syndrome of menopause. Menopause. 2014;21(10):1063-1068./https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25179577/ (2026/05/08閲覧) ↩︎
- 小林製薬ニュースリリース「日本初報告!40歳以上女性の10人に1人が発症!?〜閉経関連泌尿生殖器症候群(GSM)とは〜」2021年11月22日/https://www.kobayashi.co.jp/corporate/news/2021/211122_01/ (2026/05/08閲覧) ↩︎
- The 2020 Genitourinary Syndrome of Menopause Position Statement of The North American Menopause Society(NAMS)/https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32852449/ (2026/05/08閲覧) ↩︎
- 日本産婦人科医会「13.相談されないと対応しない性交痛のケア」/https://www.jaog.or.jp/lecture/13-相談されないと対応しない性交痛のケア/ (2026/05/08閲覧) ↩︎
- 日本産婦人科医会「13.相談されないと対応しない性交痛のケア」/https://www.jaog.or.jp/lecture/13-相談されないと対応しない性交痛のケア/ (2026/05/08閲覧) ↩︎






