【更年期女性のいびき】は病気のサイン?原因・治し方を解説

「更年期に入ってから急にいびきをかくようになった」
「家族にいびきを指摘され、治す方法はあるのか」
という悩みを抱える女性は多いのではないでしょうか。
女性のいびきは年齢を重ねるにつれて増える傾向にありますが、女性ホルモンの減少が関係している可能性があります。「単なる加齢の変化」と捉えがちないびきの裏には、放置すると高血圧や心不全のリスクを高める睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れていることもあります。
この記事では、更年期女性のいびきの原因や、今すぐ始められるセルフケア、医療機関での治療法など詳しく解説します。
急にいびきをかくようになった50代女性
50代の恵美子さん(仮名)。これまで自分はいびきをかかないと思っていました。
ところが最近、夫から「最近いびきがひどいよ」と指摘され、驚いています。自分では気づかないことだけに、「疲れ?それとも何か病気のサイン?」と不安に。
朝起きてもスッキリせず、日中に眠気を感じることも増えてきて、生活に支障が出はじめています。年齢のせいなのか、原因が分からず、もやもやした気持ちを抱えています。
更年期女性に《いびき》が増える理由
50代以降、更年期には不眠症や睡眠時無呼吸にかかりやすくなります。12女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの低下により気道粘膜や筋の緊張が弱まり、気道の狭窄や呼吸障害が起こりやすくなることが理由と言われています。
また、体重増加(とくに首回り)や内臓脂肪の増加により気道が圧迫され、さらに加齢に伴う筋力低下により舌根が沈下しやすくなることも、気道閉塞やいびきの原因になります。
「ただのいびき」と「睡眠時無呼吸症候群」見分けるポイント
いびきが気になる場合、注意したいのは睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れていないかどうかです。
例えば、「睡眠中に呼吸が止まっている」「いびきが大きい」と家族から指摘された場合や、日中に強い眠気やだるさ、集中力の低下を感じる場合は要注意です。[2]
さらに、高血圧や糖尿病、心疾患の治療中の方は、SASのリスクが高まるため特に気をつける必要があります。こうした症状がある場合は、早めの受診を検討しましょう。
大病につながる?いびきによる健康リスク
いびきは単なる睡眠中の音と思われがちですが、実は体のさまざまな健康リスクと深く関係しています。とくに更年期以降は、いびきを放置することで生活習慣病や心血管疾患につながる可能性も高まります。
ここからは、いびきが引き起こす具体的な健康リスクについて詳しく解説します。
生活習慣病リスクが上昇する
いびきをかくと、体内の酸素が不足しやすくなり、血圧が上昇したり、動脈硬化が進みやすくなることが知られています。特に睡眠時無呼吸症候群(SAS)を伴う場合は、高血圧や心不全などの生活習慣病リスクが高まります。3
また、いびきを長期間放置することで、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患や脳血管疾患の発症リスクが増加するため、早めの対策が大切です。4
生活の質が低下する
いびきが続くと、夜間に十分な酸素が取り込めず、睡眠の質が低下しやすくなります。その結果、日中の強い眠気やだるさ、集中力の低下などを感じることが増え、日常生活の質(QOL)が大きく損なわれてしまいます。
こうした状態が続くと、仕事や家事への意欲低下や事故リスクの増加にもつながる可能性もあるため注意が必要です。
更年期のいびき【3つの対策】
更年期のいびきは、生活の見直しや日常のちょっとした工夫で予防や改善が期待できます。ここでは、自宅でできる3つの具体的な対策をご紹介します。
無理のない範囲で日々の生活に取り入れて、快適な睡眠と健康の維持を目指しましょう。
1.口&舌のトレ-ニング
口や舌の筋肉を鍛えることで、気道がふさがりにくくなり、いびきの予防や改善に効果が期待できます。
舌を上あごに押し付ける舌筋エクササイズや、口輪筋を意識したトレーニング、口や舌を大きく動かす「あいうべ体操」などを毎日続けることで、睡眠中の気道閉塞を軽減できるでしょう。
【舌筋強化エクササイズ】
MFT(Myo Functional Therapy)は「口腔筋機能療法」とも呼ばれ、舌や口まわりの筋肉を鍛えるトレーニングです。舌や口唇の正しい位置を覚え、口腔周囲筋のバランスを整えます。1日2~3セットを目安に毎日続けましょう。
- 舌全体を上あごにしっかり押し付けるように上げる
- その状態を3秒間キープする
- 3秒経ったら、舌を「ポン」と音が鳴るように下ろす
- これを10回繰り返す
【口輪筋のトレーニング】
口の周りや舌の筋力を鍛える体操です。舌をしっかり伸ばしてゆっくり回しましょう。1日3セットを目安に続けてみましょう。
- 口を自然に閉じた状態で、舌を歯の表面に沿わせながら、ゆっくりと大きく5回まわす
- 終わったら逆方向にも同じように5回まわす
【あいうべ体操】
口の周りや舌の筋力を鍛える体操です。大きく口を動かして、1日3セットを目安に行いましょう。
- あー:口を上下に大きく開く
- いー:歯を見せるように口を横に大きく広げる
- うー:口をできるだけ尖らせる
- べー:舌を口の外に大きく出す
- 1~4を10回くり返す
2.寝る時の工夫
いびき対策には、寝るときの環境や姿勢の見直しも大切です。枕の高さが合わないと気道が圧迫されやすいため、自分に合った枕を選びましょう。
また、寝室の湿度や温度を快適に保ち、乾燥を防ぐこともポイントです。さらに、仰向けよりも横向きで寝ると、気道が確保されやすくなります。[3]
3.生活習慣の改善
日常生活の中でも、いびきの予防・改善につながるポイントがあります。
肥満を防ぐことや禁煙は、気道の負担を減らします[3]。鼻呼吸を意識し、鼻づまりがある場合は耳鼻科を受診するのも有効です。
また、就寝前のアルコール摂取は筋肉を弛緩させていびきを悪化させるため、控えるよう心がけましょう。
対策しても治らない・危険ないびきは病院受診
セルフケアや生活改善をしてもいびきが改善しない場合や、「呼吸が止まる」「強い眠気が続く」といった症状がある場合は、早めに病院を受診しましょう。
マウスピースやCPAPなど専門的治療
受診先としては、睡眠外来や呼吸器内科、耳鼻咽喉科が適しています。
専門的な検査を行い、状態に合わせて、鼻から機械で圧力をかけた空気を送り気道を広げるCPAP(シーパップ)療法や、顎の位置を調整することで気道を広く保つマウスピース治療が選択されます。[3]また、ホルモン補充療法(HRT)の検討や、レーザー治療、軟口蓋の手術などが適応になるケースもあるでしょう。
いびきに効果のある漢方は?
いびきや睡眠の質改善をサポートする方法として、漢方薬を取り入れるケースもあります。とくに「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」は、更年期の体調不良や睡眠の悩みに使われることがあり、いびきや喉の違和感がある場合に処方されることもあります。
ただし、漢方は体質や症状によって選び方が異なるため、必ず医師や薬剤師に相談したうえで使用することが大切です。
更年期のいびきはセルフケアで予防・改善
更年期のいびきは、ホルモンバランスの変化や体型・筋力の変化が背景にあることが多いため、日常生活の見直しやセルフケアがとても重要です。
セルフケアだけで不安な場合や、症状が強い場合は無理をせず、医療機関で専門的なサポートを受けるようにしましょう。
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