40代から要注意【更年期の筋力低下】原因と予防法

急に筋力が落ちた 将来の「寝たきり」リスクに⁉
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40代を過ぎたころから、「前より疲れやすくなった」「階段がきつい」と感じることはありませんか。

更年期は女性ホルモンの減少や加齢の影響で、筋肉量が落ちやすい時期です。筋力低下が進むと、将来の転倒・骨折リスクや生活の質(QOL)の低下につながることもあります。しかし、日々の生活習慣を見直し、運動や食事を工夫すれば予防は可能です。

本記事では、更年期に筋力が低下する理由と、今日から始められる具体的な対策を、栄養・運動・生活習慣の3つの視点から解説します。

目次

更年期に「筋力低下」が起こりやすい理由

ここでは、更年期世代が筋力低下を招きやすい3つの主な理由について解説します。

加齢による筋肉量減少(サルコペニア)

筋肉量は20〜30歳代をピークに、加齢とともに少しずつ減少していきます。特に更年期にあたる50歳以降はそのスピードが加速し、日常生活に必要な筋力も低下しやすくなります。

この加齢による筋肉量減少サルコペニアと呼ばれ、活動量の減少や栄養不足が重なるとさらに進行します。筋肉は使わないと萎縮しやすく、体を動かす習慣がないと数年単位で確実に筋力が落ちてしまうのです。12

更年期のホルモン変動と基礎代謝の低下

更年期になると、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが急激に減少します。エストロゲンは骨や血管だけでなく、筋肉の合成や維持にも関わっているため、その低下は筋力低下を促します。3

また、成長ホルモンの分泌量も加齢とともに減少し、筋肉の合成や修復が遅れやすくなります。これらの変化によって基礎代謝も下がり、体全体のエネルギー消費が低下するため、筋肉が付きにくくなるのです。

生活習慣の影響

長時間のデスクワークや座りっぱなしの生活は、下半身の筋肉を中心に急速な筋力低下を招く要因の1つです。更年期特有の不調で活動量が減ることも、筋力低下の一因です。

さらに、バランスの悪い食事や過度なダイエットは栄養不足を招き、筋肉量減少に拍車をかけます。

運動不足が続けば筋肉は萎縮し、食事でたんぱく質をはじめとした栄養を十分に摂っていない場合は筋肉の合成も進まず、生活習慣の影響により筋力が低下しやすくなるのです。4

筋力低下がもたらす20年後の健康リスク

更年期の筋力低下を放置すると、将来的にサルコペニア(加齢による筋肉量の減少)だけでなく、ロコモティブシンドローム(運動器の障害で移動機能が低下した状態)やフレイル(加齢により心身の活力が衰えた虚弱状態)へ進行するおそれがあります。[2][4]5

これらは歩行速度の低下やバランス能力の衰えを招き、転倒や骨折のリスクを高めます。特に大腿骨頸部骨折は、寝たきりや要介護状態へ移行するきっかけとなることも少なくありません。

筋力を維持することは、将来の介護予防や自立した生活の維持につながる重要な備えです。今から対策を始めることで、20年先の健康と生活の質を守れる可能性が高まります。

今日から始める!筋力UPの運動習慣

更年期の筋力低下は、日々の運動習慣を取り入れることで予防や改善が期待できます。[4]ここでは、更年期世代におすすめの運動方法を具体的に紹介します。

自宅でできる筋トレで筋肉を鍛える

筋力低下の予防には、下半身や体幹を中心とした筋トレが効果的で、特にスクワットや片脚立ち、プランクがおすすめです。[2]

  • スクワット

足を肩幅に開き、背筋を伸ばしたままゆっくり腰を下ろして立ち上がる動きを10回1セットから

  • 片脚立ち

片足を少し浮かせて30秒間バランスを取り、左右交互に行う6

  • プランク

両肘とつま先で体を支え、頭からかかとまで一直線を意識して20〜30秒キープ

重い器具や道具は必要なく、週2〜3回続けることで、着実に筋力を維持・向上できるでしょう。

有酸素運動を取り入れる

有酸素運動は、心肺機能を高め代謝を改善し、持久力を養います。おすすめはウォーキング水中ウォーキングです。

ウォーキングは背筋を伸ばし、腕を振ってやや息が弾む速さを目安に行います。また、水中ウォーキングは関節に優しく、筋力強化と脂肪燃焼を同時に期待できます。

1回30分以上、週2回程度を目安に、無理のない範囲で続けましょう。

ヨガ・ストレッチで柔軟性向上

ヨガストレッチは、姿勢を保つ筋肉を強化し、関節の可動域を維持します。自律神経を整える作用があり、ストレス軽減や睡眠改善にも効果的です。

また、体への負担が少ないため、更年期世代でも無理なく続けられる低負荷運動として推奨されます。

更年期の筋力低下を予防するセルフケア

運動習慣と並行して、日々の生活の中で取り入れられるセルフケアも重要です。ここでは、更年期世代が無理なく続けられるセルフケアのポイントを紹介します。

《たんぱく質》を意識した食事

たんぱく質不足はサルコペニアの危険因子となり、更年期の筋力低下を加速させます。[4]体重1kgあたり1.0〜1.2gを目安に、肉・魚・卵・大豆製品などからバランスよく摂取しましょう。[2]

具体的には、鶏むね肉や赤身牛肉、サバや鮭などの魚、卵、納豆や豆腐などにたんぱく質が豊富に含まれています。

また、筋力増加や骨の健康維持にはビタミンD(鮭・さんま・きのこ類)、骨格維持にはカルシウム(牛乳・ヨーグルト・小魚)も欠かせません。偏りを避け、十分な水分補給も心がけましょう。

質の良い睡眠を意識する

良質な睡眠は、更年期の筋力維持に不可欠です。睡眠中は成長ホルモンの分泌が最も活発になり、筋肉の修復や合成が進みます

一方、慢性的なストレスはコルチゾールを増加させ、筋分解を促進する恐れがあります。寝る前のスマホやカフェインは避け、ぬるめの入浴や軽いストレッチ、読書などで心を落ち着ける時間を設けましょう。

就寝前にリラックスできる習慣や趣味の時間を持つことで、深く安定した睡眠を得やすくなります。

社会との関わりをもつ

仕事や家庭環境の変化、オンライン化の影響で外出機会が減り、人との交流が少なくなりがちです。なるべく積極的に人と関わる活動に参加するのも有効です。[4]

例えば、ボランティアや習いごと、趣味のサークルなどに参加することで活動量を増やせます。こうした活動は、長期的に口腔機能や認知機能の低下予防にもつながります。人とのつながりは、体と心の衰えを防ぐ重要な生活習慣です。

定期的な健康チェックを取り入れる

更年期世代は筋力や骨の変化が進みやすいため、定期的な健康チェックが重要です。

骨密度測定や体組成測定で筋量の変化を確認し、握力や歩行速度によるサルコペニアの簡易チェックも行いましょう。ふくらはぎの筋肉減少がわかる指わっかテストも目安になります。7

1.膝を直角にしたときに、足裏が地面につく高さの椅子に座る

2.両手の親指と人差し指で「指わっか」を作る

3.利き足でないふくらはぎの最も太い部分を輪っかで囲む

指の輪っかでふくらはぎを囲める場合は、筋肉量が減少している可能性があります。

未来の自分のために筋力低下対策は40代からスタート!

更年期の筋力低下を防ぐには、食事・運動・生活リズムをバランスよく整えることが基本です。小さな習慣の積み重ねが筋力維持に直結し、将来の健康を守ります。

40代から筋力低下対策に取り組むことで、十分に効果は期待できるでしょう。

参照元

  1. 公益財団法人長寿科学振興財団健康長寿ネット|サルコペニアとは ↩︎
  2. 日本生活習慣病予防協会|ロコモティブシンドローム/サルコペニア/フレイル ↩︎
  3. 熊本大学|骨格筋の発育と再生メカニズムに性差ありーエストロゲン受容体βの機能的重要性を解明ー ↩︎
  4. 厚生労働省|健康長寿に向けて必要な取り組みとは?100歳まで元気、そのカギを握るのはフレイル予防だ ↩︎
  5. ロコモチャレンジ!推進協議会|ロコモを知ろう ロコモとは? ↩︎
  6. ロコモチャレンジ!推進協議会|ロコトレ ↩︎
  7. 西東京市Web|やってみよう!指輪っかテスト ↩︎
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この記事を書いた人

髙橋マキのアバター 髙橋マキ 【看護師】

・認定フェムテックシニアエキスパート(日本フェムテック協会認定資格1級)
・化粧品検定2級

看護師歴28年
都内の総合病院を中心に、循環器内科・ICU・CCUなどで勤務。切迫流産のため120日間の入院生活を経験。
育児・引越しを機に、キャリアチェンジを行う。ライフステージの変化に伴い、女性には多くの健康課題があることを痛感。
多くの女性の課題解決につながるよう、情報発信を行なっている。

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