【飲む・貼る・塗る】タイプ別ホルモン補充療法【更年期の治療体験談】
更年期症状や更年期障害に対して、代表的な治療法のひとつが「ホルモン補充療法(HRT)」です。
取り入れてみたい気持ちはあっても、どのような治療法なのか詳しく知らないと、なんとなく不安を感じる人もいるのではないでしょうか?
ホルモン補充療法には飲み薬以外にも貼り薬やジェルといったさまざまなタイプがあり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。
今回はホルモン補充療法の種類についてと経験者の声をご紹介したいと思います。自分に合ったタイプを選ぶ参考にしてみてください。
気になる治療法《ホルモン補充療法(HRT)》の実際
ホルモン補充療法とは?効果が出るまでどれくらい?
ホルモン補充療法(HRT)は、更年期で低下した女性ホルモン(エストロゲン)を体の外から補う治療法です。薬を開始して3〜4日程度で効果が現れはじめ、肩こりやのぼせ・発汗などの不調を軽減します。
ホルモン補充療法には2つの投与方法があります。子宮体がんや卵巣がんを予防するために、エストロゲン製剤と黄体ホルモン製剤の2つを併用するのが一般的です。これまでに子宮を摘出する手術を受けられた人は、エストロゲン製剤のみを使用します。
また気になる費用面ですが、更年期症状・障害の治療に対するホルモン補充療法は健康保険が適用されるため、自由診療のように大きな費用負担の心配はありません。
ホルモン補充療法を止めるタイミングは、現時点で決められた年齢や期間はありません1)。つまり、副作用もなく薬を継続したいと希望すれば、閉経後もずっと使い続けることもできるのです。
ホルモン補充療法の副作用は?
ホルモン補充療法の使いはじめは、次のような副作用が生じることがあります。
・不正出血
・乳房の張りや痛み
・胃のムカつきや吐き気
ただし、薬に体が慣れて1〜3ヶ月以内に治まることがほとんどで、薬の量や種類を調整することでも対処できます。
そのほかに注意すべき副作用として血栓症があります。脳卒中や心筋梗塞などにかかったことがある人は使用できない場合もあります。また、喫煙や肥満などがある人は、血栓症のリスクが高いため注意が必要です。
ホルモン補充療法の貼り薬などによって太るのではないかと心配する人もいますが、薬の作用で太ることはありません。むしろホルモンバランスが整い、代謝がよくなったという人もいるようです。
医師や薬剤師と相談しながら適切に使用すれば、副作用を心配しすぎる必要はありません。
飲み薬?貼り薬?塗り薬?バリエーションごとのメリット・デメリット
ホルモン補充療法では、人工的に作ったエストロゲンが含まれた薬を使います。エストロゲンが含まれた薬には、主に飲み薬・貼り薬・ジェル状の塗り薬の3つの種類があります。
飲み薬「確認しやすくシンプル!ただし肝臓への負担あり」
飲み薬は豊富な種類があるため、自分に合う薬を選択することができます。また、毎日服用するため確認しやすいのがメリットです。
薬の成分は、腸管から吸収された後に肝臓を通ります。そのため、肝臓へ負担をかけてしまうデメリットも。気になる症状があるときは、医師や薬剤師へご相談ください。
貼り薬「週2~3回の交換でOK!かぶれが気になる人も」
貼り薬は、小さなパッチ状の薬を下腹部または臀部(お尻)に貼るタイプ。パッチの交換は週2〜3回程度でOK。エストロゲンと黄体ホルモンが両方入っている薬もあります。
貼り薬の成分は、皮膚から吸収されて胃腸や肝臓を通らずに直接血管に入ります。そのため、胃腸や肝臓に負担をかけにくいのがメリットです。
ただし、パッチを貼り続けることで、皮膚のかぶれやかゆみが生じることも。もともと皮膚が弱い人は、貼る場所を少しずつ変えるなどの工夫が必要です。
塗り薬「1日1回塗るだけで楽だけど飲み薬も必要」
塗り薬は、ジェル状の薬を大腿部や下腹部、肩などに塗るタイプ。1日1回皮膚に塗るだけなので、使用方法が簡単。貼り薬と同様に、薬の成分が皮膚から吸収されるため、胃腸症状や肝臓への影響が比較的少ない薬です。
ただし、塗り薬はエストロゲン製剤しかないため、一般的に黄体ホルモンの飲み薬を併用する必要があります。
【体験談】私が選んだホルモン補充療法
実際にホルモン補充療法を受けた女性の体験談を紹介します。自分に合った方法を選ぶ際の参考にしてみてください。
ケース1 髪の毛や肌の調子も良くなった(61歳・女性の場合)
ホットフラッシュや肩凝り、不眠、コレステロール値の上昇といった更年期障害の症状が出たことをきっかけに病院へ行くようになったというこちらの女性。3年前から現在に至るまで、ホルモン補充療法を続けているところだと言います。
その前は、投薬や麻酔治療、不眠外来への通院、鍼治療など、さまざまな治療法を試したものの、あまり改善が見られなかったため、ホルモン補充療法に切り替えたのだとか。
ジェルタイプを使用しているそうで、ホルモン補充療法を始めてから、一番つらかったホットフラッシュと不眠が改善されただけでなく、髪の毛や肌の調子も良くなったと教えてくれました。
ケース2 きっかけは不定愁訴が強くなって(57歳・女性の場合)
こちらの女性が治療を始めるようになったのは、イライラや精神的な落ち込み、発汗など不定愁訴と思われる症状が強くなってきたから。飲み薬からスタートして、現在は貼り薬を使用して管理が楽になったと言います。
治療は2年目に入っており、ホルモン補充療法を始めてから症状が改善されて楽になっているそうで、効果を実感していると話してくれました。
ケース3 安心感を得ることができる(58歳・女性の場合)
イライラや頭痛、耳鳴り、疲労感、ふらつき、やる気が起きないといったさまざまな症状に見舞われたことでホルモン補充療法を始めたというこちらの女性。1か月ほど前から治療を始めたばかりで、肌が弱いため飲み薬から始めているそうです。
はっきりとした効果はこれからのようですが、治療をきっかけに食生活を見直してみたり、運動を始めたりと、前向きに更年期と向き合っている様子です。
自分に合ったホルモン補充療法を見つけましょう
更年期症状・更年期障害へのホルモン補充療法として、飲み薬・貼り薬・ジェル状の塗り薬の3つの種類があること、そしてそれぞれのメリット・デメリットをお伝えしました。
更年期症状を一人で抱えこむ必要はありません。まずは婦人科を受診し医師とよく相談して、ホルモン補充療法を適切に用いることで、つらい症状を和らげられます。
自分にあうタイプの薬を見つけて、更年期を穏やかに乗り越えましょう。
参考文献
1)日本産科婦人科学会・日本女性医学学会『ホルモン補充療法ガイドライン2017年版』