女性のための鍼灸師が教える!消化器症状編〜吐き気・嘔吐〜あなたはどのタイプ?
好評連載中「東洋医学の観点から更年期に向き合うシリーズ」は前回より、消化器症状がテーマ。
今回は『吐き気・嘔吐』についてのお話しです。
『吐き気・嘔吐』は、皆さんおそらくご経験があるのではないでしょうか。辛い症状であることは想像に難くないはずです。
そして実はこの症状、更年期の症状としても存在しています。もちろん人により個人差はありますので、日常生活に支障をきたすほどの方から、比較的軽い方まで症状は色々です。
今回もまずは吐き気や嘔吐の原因を理解し、東洋医学的視点でのセルフケアを学んでいきましょう。
消化器症状編 ~吐き気・嘔吐~
吐き気とは、喉から胸にかけての異常な感覚があり、今にも嘔吐しそうな不快感のことを言います。
嘔吐は、胃の中にあるものが口から出ることを言い、嘔吐の前に吐き気があることが多いので、医学的には密接に関係していると言われています。
また、吐き気がある時は、食欲不振、冷汗、めまいや顔面蒼白といった症状を共にすることが多くあります。
これらの症状の一番の原因となるのは、食事です。衛生上問題があるもの、消化に悪いものなどを食べることによって起こります。しかし、症状が長引く場合などは、これ以外にも原因が考えられます。
食事以外での原因は、大きく①中枢性と②抹消性の2つに分けられます。
①中枢性
脳にある嘔吐中枢が刺激されることによって起こります。
疾患としては、脳梗塞、くも膜下出血などの脳に関する疾患、バセドウ病、アジソン病などの代謝異常、薬物が関連したもの、またストレスや不快な記憶を思い出した時など、心因性によるものがあります。
②抹消性
食道炎や胃潰瘍などの消化器の疾患、狭心症や心筋梗塞などの心疾患、尿管結石などの腎臓や泌尿器の疾患、そして、卵巣や子宮にまつわる婦人科系の疾患などが原因となります。
吐き気・嘔吐は様々な要因が絡んでいますが、症状が起こった時には以下の4つのポイントを把握しておくことが大切です。
- 何が原因で起こっているのか(特に食事との関連)
- いつ頃から吐き気や嘔吐が起こっているのか(発症した時期)
- 1日に何回ほど起こるか
- 嘔吐してしまった内容の詳細
また、吐き気や嘔吐に伴って起こる症状として、倦怠感や腹痛、頭痛などがあるかどうかということもポイントとなります。これらを把握しておくことで、原因が疾患によるものなのかなどということを判断することができます。
辛い症状だと思いますが、まずは自分の状態を細かく理解しておくことが大切なのです。
東洋医学でいう「吐き気・嘔吐」とは?
東洋医学でも、吐き気・嘔吐という考えは存在します。吐き気はあるが吐かない場合は「嘔」。実際に吐き出してしまう場合には「吐」と分けて考えられています。
前回コラムでも紹介していますが、「胃」は、食べたものを受け入れる場所であり、消化し、体に必要なものと不必要なものを分ける役割をしています。
そのため、「胃」の機能が低下すると、食べ物を受け入れられなくなったり、食べた物を消化し次の臓へ送るという本来の役割ができずに逆流してしまう状態となります。
吐き気や嘔吐は「胃」への影響から、症状が発生します。
あなたはどのタイプ?
吐き気・嘔吐という症状に加え、その他の特徴などから、ご自身の体を評価していきましょう!
一つでもチェックが当てはまれば、そのタイプに該当します。タイプはどれか一つというわけではなく、いくつも当てはまる方もいるかもしれません。
①”疲れ過ぎ” による吐き気・嘔吐タイプ
□食欲減退気味である
□冷たいものを食べると腹痛や下痢を起こしやすい
□温めると楽になる
□お腹に水が溜まっている感じがする
□吐いたものが水っぽい
②”暴飲暴食” による吐き気・嘔吐タイプ
□お腹が張りやすい
□倦怠感がある
□手足が重く感じる
□顔や足が腫れぼったく感じる
□脂っこいものや冷たいものをよく食べる
③”ストレス”による吐き気・嘔吐タイプ
□胸や脇のあたりが張る
□ゲップがよく出る
□鬱っぽくなる
□イライラしたり怒りっぽいところがある
□胸やけをよくする
①のタイプ
元々消化器が弱い、慢性的な疾患がある、疲労などが酷く消化器が弱っている方などにみられる症状です。
胃のエネルギーである気が足りず、胃の機能が適切に働かなくなります。そのため、胃につかえた感じがある、食欲がわかない、少ししか食べられない状態となります。
②のタイプ
飲酒、甘いもの、脂っこいもの、また生ものなどを多くとることによってみられる症状です。
気血水は体にとって必要な要素ですが、そのうちの水は、暴飲暴食などにより体に停滞してしまいます。
停滞している水のことを痰湿と呼びます。痰湿は、胃に溜まると機能を滞らせ、吐き気や嘔吐以外にも、お腹の辺りが張る、胃がつかえると言った症状があらわれます。
③のタイプ
ストレスなどが起因して起こる吐き気・嘔吐のタイプです。
ストレスなど感情のコントロールを司どる五臓の「肝」は、体の様々な活動を調節しています。その影響が「胃」に起こると、食べ物を胃に保っておくことができず、上逆と言って逆流する現象が起こります。
ツボ押しでセルフケア!
あなたはどのタイプでしたか?
東洋医学では、出現している症状を一つの病気と断定するのではなく、様々なことを複合して考えていきます。
いくつも当てはまったため、自分の体の症状が悪いというわけではないので安心してください。大切なのは、自分の体の症状を理解し適切な処置をしていくことです。
それでは、それぞれのタイプに良いツボをご紹介していきます。
ツボは、1回に5秒間程度2~3回、押しやすい指で痛気持ち良い程度に押しましょう!
目安は、毎日1回。習慣化していくのがベストなので、朝起きたらベットの中で、お風呂を出た後に、など時間を決めて押してみてください。
①のタイプの方
◇太白(たいはく)
<位置>
足の内側。親指の付け根の骨の下。
<効果>
胃腸の働きを助ける。冷えやむくみへの効果もある。
②のタイプの方
◇下脘(げかん)
<位置>
おヘソから上に親指二本分上がったところ。
<効果>
消化器症状に効く。胃痛や胃潰瘍などにも効果がある。
③のタイプの方
◇太衝(たいしょう)
<位置>
足の親指と人差し指の間を足首側に触っていくと、止まるところ。骨と骨の間。
<効果>
ストレスの解消に良い。眼精疲労や筋肉の疲労にも効果がある。
※出典
矢野忠(2014年)レディース鍼灸 医歯薬出版株式会社
中医学基礎理論
http://www.hal.msn.to/bensho_ronji/ben121.html
※イラスト引用(上から順番に記載)
https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=841879&word=足の甲%2C足の指
https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=1245444&word=下着姿の黒髪女性の全身イラスト